原宿のど真ん中にスケートショップ現る!? そんな都市伝説的な噂を耳にしたのは、寒さの厳しい昨年の暮れのこと。社交ダンススクールでのレッスンを終えた帰りの山手線内で、確かに耳にしたのだ。スケートボードを抱えた20代中盤と思える3人組が乗車率90%強の電車内でヒソヒソと言葉を交わしている。青島が好んで着ているモスグリーンのモッズコートを着込んだオレが警戒されるはずもない。しかもiPhone買うともれなくついてくるイヤホンを耳に装着はしているが、音は切ってある。リーダー格らしいスケーターが神妙な面持ちで仲間にこう話す。「おぃおぃ、知ってるか、原宿に超ヤバいスケートショップがオープンするらしいぜ」。すると少しネプチューンのホリケン似のスケーターが「実はオレもその噂聞いたぜ。BEAMS T HARAJUKU店内に期間限定のポップアップショップとして出店されるみたいだ」。3人組は周りを警戒しながらさらに話を続ける。オレはできるだけ平静を装い、中吊り広告を見ているフリをしながら彼らの話に耳を傾け、横目で彼らを観察する。
一番手前の男は、EvisenのロゴデッキにIndy 139、しかもテールはスケート痕でグラフィックが完全に消えているも、ノーズの方は新品に近い。「で、出来る…」。そして手前の男が核心に迫る。「どうやら日本の大物アーティストがフィーチャーされてるみたいだぜ。7STARS DESIGN、平野太呂、竹内俊太郎、田口 悟、村岡洋樹、山口幸士らが一点モノのデッキを計60枚デザインして販売するんだって」。
な、なに!? そのメンツならスケートカルチャーに疎いオレですら知っている。しかも一点モノのデッキを60枚! 鼻息が荒くなったオレに反応したのか、経理が得意そうな女が目で威嚇してくる。リーダー格が「さらに厳選されたブランドともコラボTを販売するって」。それからしばらく沈黙が続き、池袋に電車が止まりかけるとスケーター3人組は我先へと出口の方へ流れていく。そして最後に青いニット帽の男が「しかもなんかVHSMAGとかいう最近調子こいたメディアが…」。プシュー、ドカドカドカ、池袋~、池袋~。Oops…。
--KE
メソッドエアーを決めているのは、HombreNino / T19の江川くん。'80年代原宿ホコ天にて。