つい先日のこと。バイクのライディング中に少々怖い思いをした。とある幹線道路を走行中に、なんと前のクルマが突然の急ブレーキ!! そう、身体が“ゾクッ”とする危機一髪の状況が何の前触れもなく訪れたわけだ。
そもそも自分が乗るバイクは50年以上も前の車体のため、その制動力は現代車に比べれば明らかにプア。まぁすぐには止まれないというわけだ。ゆえにこんなこともあろうかと、つねにいつでも止まれるくらいの車間距離を保って走っているつもりだったが、この時ばかりはどうしたって対処のしようがなかった。とにかく前のクルマはタイヤを“キッキィー”なんて鳴らすほどの急ブレーキをしたのだから……。
この状況下、まずスマートに一大事をクリアすることはできなさそうだ。ゆえに被害を最小限に抑えることが先決。こうして脳裏には修理代のことがよぎり、自分にはふたつの選択肢が生まれた。このまま前のクルマに突っ込むか、それとも右側にスペースに滑り込み転倒するか? そして自分は後者を選んだ。もしかしたら、そのままクルマに突っ込んでいた方が修理代としては安く済んでいたのかもしれないが、その後に警察を呼んで事故対応なんて面倒なことを考えると、後者をセレクトして自損事故で済ませた方が気も楽だったのだ。
こうして、転倒は起きた……。ガシャーン!! 道行く歩道の女性のキャーという悲鳴が聞こえる。そんなに騒がなくていいよ。大丈夫だから。自分は最善の選択をして、誰にも迷惑を掛けてなんていないのだから。とにかくよく聞く話だけれど、こういう時ってすごーく時間の流れがゆっくりで、意外にも冷静でいられるんだよなぁ。
両足でエンジンまわりを守りながら、頭は打たないようにしっかりと受け身をとってと……。結局バイクはヘッドライトが割れたことと、ブレーキレバーが曲がっただけで事なきを得た。修理代1万円。我ながら最悪の状況下で最高の転倒パフォーマンスをしたように思う。そう、怪我なんてひとつもしなかったのだから。
で、こんな最近の出来事を友人に話すと「バイクは死ぬこともあるし危ないからやめなよー」なんて親切にも言ってくれる。けれど当の本人にすれば、やめる気なんてさらさらないんだよなぁ。そもそも“死”なんて、いつどんな理由でやってくるかわからないものじゃないか。明日、突然、奇人に刺されるかもしれない。もしかしたらいきなり心臓発作にだってなるかもしれない。だから“死”の危機を理由に、好きなことを制限するのは納得がいかないのだ。
そもそも自分は身体を張ってスリルを味わうことこそ、人生の楽しみだと思っている。バイクだったらこれ以上スピード出したらやばいなぁとか、スケートだったらこの高さは危険でしょとか、サーフィンだったらこの波にチャージしたら確実に巻かれるなとか。とにかくスリルある状況でこそアドレナリンが出まくって、最高の心地よさを与えてくれると思うんだよなぁ。いやもちろん考え方は人それぞれだけれど、自分はそういう人なんだなぁと改めて思った限り。まぁでも、そんなThrill Junkieが世界中でよく死んでもいるんだよなぁ。そういえば最近、どっかの国でも高層ビルに自力で登るっていう変人が、あっけなく何十メートルも落下していたな。あの人、生きているのかなぁ……。