ヨーロッパ特集の取材を終え、無事にSLIDER Vol. 11が発売されました。自分にとって初のヨーロッパとなった今回の現地取材は、新たな発見でいっぱいでした。ヨーロッパはシーンやインダストリーが熟成されたアメリカとはやはり違う。シーンが発展途上という点においては、どこか日本と通ずるところがありました。とはいっても、日本と比べれば遥かに大きなシーンを持っていますが。
日本と同じく、ヨーロッパではプロスケーターがスケートだけで生計を立てることはまだ稀なことです。それでもヨーロッパ諸国で自国のカンパニーを立ち上げ、それぞれのシーンの活性に務めています。Blueprint、Cliché、PalaceやPolarといった欧州ブランドは海を越えて世界的に認知されましたが、それ以外にも世界的な認知を獲得できていないブランドがまだまだあります。フランスはリヨンのAntiz、イタリアのDumb、ドイツのRadio、その他にもスイスやスウェーデンといった国々にも、スケートの本場であるアメリカに追従しないブランドが存在しています。これらのブランドは現在の日本のドメスブランドと状況はさほど変わりません。
なにもアメリカを追うことが悪いということではなく、アメリカの影響を受けながら独自の何かを構築することで自国のシーンの活性化につながるのだと思います。スケートをしている以上、アメリカの影響を受けないことなどあり得ないこと。Palaceは例外かもしれませんが、世界的に注目を集めるBlueprint、Cliché、Polarにはかつてアメリカで勝負したスケーターが絡んでいます。Blueprintには’90年代に411VMのRookieセクションに取り上げられたポール・シャイア、ClichéにはNew Deal『1281』に登場したジェレミー・ダクラン、PolarにはMad Circleの一員として活躍したポンタス・アルヴ。自国とアメリカの両サイドを知るスケーターがブランドを仕切っています。
VHSMAGのコラムで上田 豪も熱弁していましたが、やはりせっかくスケートという共通言語を持つスケーターなのだから、一度は海外に出ていろんな経験を積んだほうがいいと思う今日この頃です。別に日本のシーンを活性化させるという目的でなくても、そういう動きが自然とシーンの活性化につながっていくと思います。ヨーロッパ諸国は陸続きということで、ここではスケーター同士の国際交流が根付いています。だからこそ’90年代は日本とさほど差のなかったヨーロッパのシーンが大きく飛躍したのでしょう。
思い起こせば岡田 晋、米坂淳之介、中島壮一朗が凱旋帰国してから日本のシーンは大きく変わったように思います。今日も池田幸太や弟子がヨーロッパのブランドにフックアップされ、森田貴宏はフランスのMagentaからゲストボードがリリースされました。このような動きが今後もさらに増えてほしいと思います。狭い日本だけで完結してしまうのはもったいないと思いませんか?
というわけで、今回のSLIDERの特集記事はヨーロッパのスケートシーン。祖国を離れてアメリカで活動するスケーター、祖国でシーンを盛り上げようとするスケーター。そして上に挙げた、ヨーロッパに認められた3名の日本人スケーター。本号のヨーロッパ特集を通して、海外とのつながりの重要性が伝われば、と思います。