SLIDER 場外乱闘・番外編 アドベンチャーライフ!

 今春、引越して17年住み慣れた街を離れて新しい土地へと生活の場を移した。つねに千葉の外房の海でサーフィンをしていた僕は毎週末海へ通い、いろいろな人との海での交流があった。よって僕にとって慣れ親しんだエリアが千葉の海だった。
 今回移り住んだ街の近くにある海は湘南エリアで、正直波の上がる頻度や波のある確率が千葉の海に比べて断然少ない。千葉は365日の中でもドフラットな日は3~4日くらいだろうか。必ずどこかで波が割れてサーフィンができる。湘南は相模湾という湾に面しているのでウネリが届きにくいのである。そんな湘南エリアもひとたびタイフーンスウェルが届くとその眠っていた地形が目を覚まし、どこよりも美しいブレイクを形成する。今年の夏感じたのは、湘南エリアのサーファーは歓喜して集中的にサーフィンをするということ。普段波が無い分、みんな目いっぱい早起きしたり、会社を休んだり、半休にしたり、営業先を湘南エリアにしたりとあらゆる手を使って湘南の海へパドルアウトしていく。同様に千葉の海もBig Hitしているのだが、千葉エリアは比較的波に恵まれている分、コンディションが上向くのを待つことができる余裕がある。しかし湘南エリアのサーファーは「湘南マジック」というジンクスがあるとおり、強いオフショアが吹くと瞬く間に波がみるみるサイズダウンしてしまうので「波を待つ」のではなく、「波に合わせる」動きを取るのがいい波に乗れるコツでもあった。
 そんな中、この間の台風18号や19号が全国各地に猛威を振るった。よって僕らが入った海も、普段は割れないアウターリーフやビーチがサイズの大きいコンディションになり、体力的にも精神的にもタフな状況になった。僕はプロが乗るような特段大きな波に乗るような腕前はないけど、小さい波よりはある程度サイズのある波が好きだし、人によっては「なんでそんなにキツイ時に入るの?」と言われるくらい、入るポイントが違ったりする。おそらくそこで今日は波大きいから「サーフィンやーめた!」と自分に言い聞かせて入らなければそれはそれで時間が普通に過ぎていくのだが、やっぱり、波のある時に入らないというのはなんだか負けたような気分で嫌なものだ。たまにアウトに出て、「やべぇ、思ったより波がデカい…入らなきゃよかった…」なんて日もありつつ、最後無事に岸に辿りついた時に振り返ると自分の中でもちょっとした達成感があるのも正直な気持ちだ。日常では味わえない経験をわざわざ行い、また日常に戻る。一歩間違えたら怪我やもっと大きな事故に繋がるのもサーフィンであり、その危険性もよくわかるからなおさら怖い。
 それは普通では味わえない刺激であり、悦びであり、何歳になっても自分の生きる指針というか精神的支柱になっている。ひとつのチャレンジだと思った新天地での夏のウネリでの新しいポイント、新しい出会いは僕にとってアドベンチャーだった。