フィルマーを目指しているスケーターは、是非、読んでみて下さい。 先日、…
──WILDSIDE YOHJI YAMAMOTO x OSAKA DAGGERS
フィルマーを目指しているスケーターは、是非、読んでみて下さい。
先日、当VHSMAGのNEWSのコーナーでも紹介いただいていましたが、OSAKA DAGGERSの新たなショートムービーがドロップされました。
WILDSIDE YOHJI YAMAMOTO x OSAKA DAGGERS です。
(大阪発のOSAKA DAGGERSのスケートボード映像作品群は世界で高評価を受けています)
まず、若いスケーターにはなじみがない人が多いかもしれないので軽く説明を。
日本を代表するハイブランドの一つに YOHJI YAMAMOTO があります。
SUPREMEともコラボしていたり、adidasとのコラボライン、Y-3 などは比較的カジュアルなので、それらアイテムを見れば「知ってる!」となる人もいるかもしれません。
また北野武監督作品の映画に衣装提供していたりもします。
で、その YOHJI YAMAMOTO の新たなプロジェクトの一つに WILDSIDE YOHJI YAMAMOTO があり、ショップ兼ブランドとなります。
今回、そのデッキを使用し、OSAKA DAGGERS が映像制作を務めました。
で、そもそも何故この様な話になったのかを説明します。
以前から面識のあったヨウジさん側の今回の担当者さんから「最近、色々なブランドさんがスケートボードをプロモーション要素に使っているけど、本当にスケートボードをちゃんと理解している人が制作に携わらないと、本当に格好良い物にならないですよね!」と。
確かにオリンピックやコロナの流れからのスケートボードバブルで、色々な企業がスケートボードをプロモーション要素にして映像制作していたりしますが、拘りなく遊びの延長レベルで単にスケートボードをやっているに過ぎないスケーターに仕事を依頼してしまい、本当に玉石混交で明らかにお金儲けだけを目的にしている事が透けて見える質の低いプロモーション映像なども散見するように思います。
そんな中、今回の様な提案を頂け、「流石は世界に名の通る YOHJI YAMAMOTO だな!」と共感し、今回の制作に至りました。
女性出演者 ユマ 。
男性出演者 シンゴ 。
映像監督 ハマジ 。
総監督 チョッパー こと俺が務めました。
一見すると、ありがちなショートクリップに見えるかもしれません。
ですが、抽象芸術のレビューかの様に、しっかりと読み解くと随所に多様な要素が隠されています。
ですので、スケートフィルマーを目指している人には、是非、その様な視点でチェックしてもらえると、何倍も興味深く見てもらえるかと思います。
まず、通常時はユーモアや創造性を推しているOSAKA DAGGERSの映像ですが、今回はハイブランドさんとのコラボという事もあり、かなりいつもとはテイストを変えている所がまずは興味深い所かと思います。
特に今回の見どころの重要部分ですが、様々な海外のハイブランドがスケートボードに絡めてストリート感あるプロモーション映像を創っていたりする中、今回は日本発信であるが為に特にコンプライアンスも厳しい中での制作となっています。
なので、今回は弁護士の友人にも軽く相談したりしながらと、通常のスケートビデオ制作では無いような手順を踏んで制作を進めています。
皆さん、ご存じの通り、アメリカなどと違い、日本の都市部ではプッシュで移動しているだけで、警察官に注意されてしまいます。
その前提条件で、且つアーバンな感じも表現しなくてはいけないテーマの基、学校、会社へ通う人達の往来の多い大阪の都会の真ん中で、極力、通行人が映らず、且つ交通法規で引っ掛からない様に撮影している難しさが今回の作品の最も興味深い所かと思います。
「では早朝の皆の通勤、通学時間前に撮ればいいんじゃないの?」と思う人も多いかと思います。
それがそう単純な話でもない事を説明します。
まず、今回は結果としてモノクロ映像が多くを占めているので気が付きにくいかもしれませんが、撮影段階ではクライアントとの調整、兼ね合いも含め、モノクロ編集になる事は確定していませんでした。
となると経験のあるフィルマーなら気が付くと思いますが、カラーで制作を進めるとなった場合に、早朝に限定された映像ばかりだとその雰囲気が出てしまいます。
また仮に早朝撮影をしようとしても、日が昇り、景色も落ち着き、撮影を開始しても、人の往来が増えだすまでには1時間程度あるかどうかといった所かと思います。
「では撮影時間に縛られ難い深夜に撮影して雰囲気を統一したら?」と思うかもしれません。
ここで思い出して下さい、今回はあくまでもアパレルブランドのプロモーション撮影です。
夜の撮影となると、肝心のアパレルがちゃんと良く見える様に動きのあるスケーターを被写体に光量調整をするのは至難の業です。
勿論、ハリウッド映画などの様に潤沢な予算があればそれも可能なのかもしれませんが、限られた予算内で制作しないといけません。
また、スケートボードの撮影を知らない人からすると「そんなの、人がいない数秒の隙にサッと撮れるんじゃないの?」と考えるでしょう。
が、実はそんなに簡単ではありません。
勿論、単純に板に乗って滑っている絵面を撮るだけならそんなに難しくないかもしれません。
ですが、ある程度の難易度の高い技を撮ろうと考えると、そうもいきません。
スケートボードの映像で世界レベルを目指す人達であれば、時には必要な5秒の尺の為に、何百回、何千回と同じ技に挑戦し、何十時間も時間を費やす事もあります。
勿論、その様な高難度の事をやっている時点で、最終的に達成できるかどうかも分からないリスクも高いです。
なので、そもそもスケーター視点で見た時に、難易度の高い技の映像が無い、板に乗って滑っているだけの映像では全く評価対象になりません。
要は0点評価という事です。
ですが、逆に今回の様に、スケートボードを知らない人も見る前提で技の映像ばかり見せられても、その様な人達からするとあくびが出てしまいます。
その様な相反する要素も条件になっています。
また、日常のプライベート撮影と違い、限られた納期や、出演者、関係スタッフのスケジュール調整、諸々、含め、「どれだけ数打っても時間がかかってもいいから絶対にメイクする!!」とは根本からして違います。
それら多様な条件下、基本的にはトリックにフォーカスしてしまうと、洋服視点でのお客さんが見てつまらない物になるのを踏まえ、シンプルにプッシュやクルージングで魅せる疾走感もそれなりに考えています。
ですが、スケーター視点から見るとつまらなく感じがちなプッシュですが、特に男性キャストのシンゴがスタンスをスイッチに変えた後の自然なプッシュ等は、スケーターでも目の肥えた上級者でないと気が付きにくい様なスケーター視点を意識した仕掛けもあります。
また、回し技のラインに加え、スピンなどは一般的なストリートスケーターでは簡単にこなせない部分をシンゴが一人でこなしている所にも、目の肥えた人にしか気づき難い仕掛けが隠されています。
更に言うと、終盤男女2人で坂を下っているクルージングのカットですが、単に女性キャストを追い抜いているという簡単な動きではありません。
この辺りもある程度のスケートスキルがある人で無いと気が付きにくい部分ですが、半ば並走に近いスピードから男性キャストのシンゴが急加速のポンピングで女性キャストのユマをスピーディーに追い抜いています。
ここも、スケートスキルがかなり高い人でないとマネの出来ない見所の一つです。
次に女性キャストの面白さです。
今回、出演してくれている彼女はスケート歴約10年のユマです。
昨今の女性スケーターの活躍は目覚ましいのは良い事だと思いますが、やはりまだ女性スケーター進出の歴史も浅いためか、技ばかりに走り、本質的に板に乗れていない人が多いのが実情かと俺は感じています。
そんな中、今回出演しているユマは、ある程度ちゃんと板にも乗れた上で、敢えて板に乗れているかどうかとは無関係とも言えるトリッキーな技で魅せるという相反した要素も盛り込んでいます。
何かというと明確な証拠は無いですが、インスタ等のソーシャルメディアを見ている限り、彼女は俺が発明し世界的にも話題になったチョッパーフリップを女性としては恐らく世界初で完璧にメイクしたであろうスケーターです。
今回、そのチョッパーフリップを器物損壊で問題にならず、また万一撮影中に注意されても臨機応変に容易に運べるように限界まで重量を軽くしたDIYの自作レールを使用して撮影しています。
更に都会の真ん中を感じさせるべく背景の車道にはそれなりの交通量があるに関わらず、コンプラ問題がクリアになるであろう歩道部分は工事の為に通行止めで行き止まりになっている人の来ない場所を見つけ撮影しています。
本来スケーターが容姿でスケートボーディングの評価対象になるのはナンセンスな部分がある事も重々理解しています。
ですが、今回のキャストのちゃんとしたスケートスキルを大前提に、男女両キャスト共に美男美女だというキャスティングも他ではマネの出来ない強みの一つで今回の映像の品質を押し上げているかと思います。
次に、OSAKA DAGGERSの撮影監督であるハマジに関しては、今回記事の下部リンクにもある日本のスケーターとしては初でべリックスにて紹介された俺のビデオパートや、引き続き世界的に話題になった大阪アメリカ村は三角公園のOSAKA DAGGERSのビデオパートを手掛けたり、また LIFE+α という映像作品は世界的なトッププロの一人であるChris Haslamのインタビューでもお気に入りの映像作品として名を挙げられる、日本のスケートフィルマーとしては世界に通用する数少ない一人です。
その他、今回の作品、随所に色々な裏話があります。
なので、一見シンプルな映像ですが、実は色々な見所がある所を知った上で見ると面白いかと思います。
スケートフィルマーで頑張りたい人は、今回の記事、是非、参考にしてみて下さい。
また、参考になったと思う人は、是非、ソーシャルメディアでのシェアや、週末のスケート後の酒の席での問題提起など、情報拡散のご協力よろしくお願いします。
実は、たったそれだけの事に見えるかもしれませんんが、その小さなアクションが積み重なる事により、日本のスケートシーンの真の進歩に繋がるのです。
WILDSIDE YOHJI YAMAMOTO の店舗では大きなモニターで今回の映像が流れているので、近隣を通った人は是非お店で見てみて下さい。
自身のスケート映像制作に何かの新たなヒントが見つかるかもしれません。
OSAKA DAGGERSのインスタグラム
OSAKA DAGGERSの通販ページ
OSAKA DAGGERS web site
CNN interview
https://edition.cnn.com/style/article/japan-skateboarding-osaka-rebels-hnk-dst-intl/index.html
↓ IOC公式 OSAKA DAGGERS & HAROSHI オリンピック プロモーション映像
オリンピックPV出演への俺の考え
PART1 PART2 PART3 PART4
↓ THE BERRICSにて俺とOSAKA DAGGERSがフューチャーされた動画等!! ↓
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