侵略者、支配者、君臨者。2つのスピーカーの間でLからRへと広がる空間は実に壮大だ。だが、そんな空間でも自らの内包する信念を表出し、固有の世界を創りあげることができる表現者がいる。そう、”THRIVE” と “KEITA YANO” だ。彼らを形容するためには、一体どのような言葉がふさわしいというのだろう?
A1.A2は、全国のアンダーグラウンド・サウンドが交差する結節点として機能する北関東のクラブ “SOUND A BASE NEST”が輩出した音の伝導者 “THRIVE”が繰り出す、狂気と深淵のサウンドスケープ。その質感はまるでぬかるんだコールタール。冷たく鈍く、気が遠くなるほどの深度に潜む。それは禍々しいほど重厚であり荘厳。その美しいまでの異常さは、聴く者を自らの世界へと誘いこんで離さない。
対するB1.B2は無軌道集団 “UNMEIKYOUDOUTAI” を主宰する南方の実力者 “KEITA YANO”によって音で綴られた退廃世界の抄録集。繊細に響く電子音、絶え間ない緊張感のパーカッション、侵食する微かなノイズ、敷き詰められた音の断片が織り成す世界は、まるで古いSF映画に登場する未来都市のような綺羅びやかさと寂寥感を併せもっている。
33 1/3 rpmで回転する、直径約30cm48mm、重量約130gの円状ポリ塩化ビニール。そこに収められているのは映像素子だ。それは針を落とすと自動的に視覚野にインストールされる。聴覚情報に連動して投影される映像は一人ひとり違った像を結ぶはずだ。貴方には一体何が視えている?