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 ここ何年かは達成できていませんが、18歳の時から3年くらい前まで「年…
──第14回:かわいい自分には旅をさせよ

2014.10.14

 ここ何年かは達成できていませんが、18歳の時から3年くらい前まで「年に一度は海外に行くぞ」という漠然とした目標を持ち、ほぼ毎年達成していました。目標を達成していたというか、勝手にそうなっちゃっていた感の方が正直強いんですが、気かつけば「ああ、今年も行っていたな」という状態でした。結婚して子供ができてからは家族旅行という形になり、旅先でスケートするのはなんとか1日、いや数時間という限られたものになっています。家族で旅行に行くのはもちろんそれはそれで楽しいんですが、やはりスケートボードを持って何が起きるか分からないような旅にもたまには出かけたいなぁと思います。

 しかしよく考えてみれば、10年近く毎年1回以上海外に行っていた割には、行ったことがある国、街が少ないような気がします。アメリカには2年間住んでいたことがあるにも関わらず、ほとんど西海岸をウロチョロしていて、ニューヨークやフィラデルフィアなどの東のメッカには一度も行ったことがありません。ヨーロッパにも7回ほど行きましたが、その7回すべてバルセロナに固執してしまって、他はどこにも行ったことがない……。東南アジアでメジャーなのはやはりタイとかですが、なぜかフィリピンの首都マニラに行ってしまいました。まあそれはどうでもいいとして、ほとんどの旅はスケートボードを持って滑る目的で友達と行くのですが、数多くの旅の中で、2回(多分)だけあった「ひとり旅」というのが意外とおもろかったなぁ……と。ひとり旅というのは、ミラクルに遭遇する率が格段に上がるのです。

 10数年前の秋頃、僕は2年間のLA生活を終え日本に帰ろうとしていました。しかしそのまま帰るんでは面白くないと思い、どっかに寄って帰ろうと決意しました。当時どのビデオを見ていても出てくるのはバルセロナばかり。アメリカにいるスペイン人に聞いても「スポット天国だし、キックアウトないし、女の子かわいいし、ビール安いし、アメリカより全然いいよ」と言っていました。おいおいお前はじゃあなんでアメリカで滑っているんだ? と突っ込みたくなりましたが、そこはやはりアメリカンドリームを狙っていたのでしょう。そんなこんなで行き先はほぼ一瞬でバルセロナに決定。チケットをゲットした足でそのままコーヒーでも飲もうかとコーヒー屋さんに行くと、何度かスケートスポットで遭遇したことのあるスケーターが偶然座っていたのです。当時LAにはスペインからエンリケ・ロレンゾをはじめヘスース・フェルナンデス、ダニエル・レブロンといったスペイン勢がシェアして住んでいてスポットで一緒になることが多く、その輪の中にいたふたりだったので、すぐにスペイン人だなと分かりました。

 とりあえず話しかけようと思い「やあ」とか言いながらちょっと話していると、なんでも明日にはもう地元のバルセロナに帰るという。僕のバッグの中にはさっき取ったばかりのバルセロナ行きのチケットがあったので「僕もバルセロナ行くんだ」というとふたり組のひとりが「誰と行くんだ? ひとりか?」と聞いて来たので「ひとりだよ」と答えると「んじゃメールアドレス教えるから来るとき連絡してくれたらウチに泊まっていいよ」というわけです。1ミラクルゲットしました。いやポイントで言うとすでに95ミラクルぐらいはゲットしてしまったのではないか!? 宿を探す手間がなくなったし、面白くなること保証されちゃってるじゃん! みたいな気分でお礼を言ってから別れ、ちょっと考えました。もしかしたら社交辞令的なやつかな? まあいいや、とりあえず連絡してみようと思い、出発前に連絡すると普通に返事が返ってきて、さらに空港にまで迎えに来てくれました。リアルに95ミラクルゲットです。

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 僕を泊めてくれた友達はチーチョという愛称で、街を歩いているとあっちこっちからチーチョと呼ばれているような人気者。おかげで僕はすぐにチーチョの周りの友達と仲良くなり、僕ひとりだったため「今夜はここ、明日はこっち」と、もう僕を泊めるのが流行っているかの如くチーチョの友達の家を渡り歩いていました。そんなおかしな動きをしまくっていたせいで「最近変な日本人がいるぞ」って噂になり、しまいには知らないヤツに「お前がジマか?」とか聞かれる始末。宿には困らないし有名になるし、普通にスケートの写真撮ってもらって向こうのUNOって雑誌に出てしまったり、ミラクルポイントは満点を超えて溜まる一方でした。これがふたりとか3人旅だとなかなかそうは行かなかったかもしれません。逆で考えても、いつも滑っているところにひとり旅の外国人がいて仲良くなったら「まあ今夜だけなら泊めてあげてもいいかな」みたいな気持ちにもなりやすいでしょう。海外で友達を作りたいと思ったら、ひとりで行くのが一番いいのかもしれませんね。

 と思ってつらつら書いていたのですが、いろいろ思い返してみると、やはりみんなでいったツアーや、仲のいい人とタイマンで行った旅行、作品にまでなった大掛かりな旅、すべて楽しかったなぁ。一緒に旅を経験し、あり得ないことが起きたり無茶苦茶したり、一緒にカルチャーショックを受けたり、一緒にいすぎてケンカしちゃったり、夜遊びしたり、朝まで語り合ったり、同じスポットで技をメイクして上げ合ったり……仲間と思い出を共有できるのも最高ですね。その仲間との絆は深まり、いつ会ってもその旅についての思い出は色褪せること無く、大いに思い出話で盛り上がることができます。これも一生の宝でしょう。「ひとり旅のススメ」なんていうタイトルにしようかと思っていましたが、ちがうちがう、変更だ!

 いやあ、旅ってやっぱり最高ですね……。あれ? なんか軽~い安易な感じの〆になってない? まあいいか。旅に行きたいな。

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Daisuke Miyajima
@jimabien

M×M×Mの敏腕スタッフにして自称映像作家のジマこと宮島大介。伝家の宝刀Fs 180フリップをなくした今、どこへ向かっていけばいいのか迷走中。本能の閃きをたよりに書き綴る出口なしコラム。

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