「1番好きな飲み物は何?」と聞かれたら僕は間違いなくビールと答えます。2番目が水、3番目は多分コーヒーです。ビールもコーヒーも相当な時間と労力をかけてもすべて飲みきれないほどの種類があるというのが好きです。珍しい銘柄や新しく出たものを見かけるとついつい買ってしまいます。最近では、近所の西友のイギリスビール直輸入フェアで「Gentleman James」という500mlの瓶に入った298円のビールが気に入っています。
特にビールは味もさることながら、やっぱり酔えるのも好きです。酒にまつわるイタイ思い出は過去に自慢できる程の回数ありますが、中でも衝撃だったのは、渋谷で飲んでいたのに起きたら特急電車「あずさ」に乗って山梨県は甲府の駅にいたこともありました。
「おい! キミ! 乗車券も特急券も持っていないんじゃないかっ」と怒鳴られながら車掌さんに起こされた(怒られた)のは内緒です。なぜ「あずさ」に乗り込んでしまったのかは一生かけても解くことのできない謎となってしまいました。良く覚えているのは、電車を降りた瞬間空気が美味しすぎて一瞬にして東京じゃない、と悟ったことです。
「ホントもう酒はいいや~」って思って水をひたすら飲んでいるのはやらかした当日の午前中のみ。その日の夜にはまた「迎え酒だ」とかアホなことを言いながらビールを片手にしているのです。そういった酒にまつわるエピソードも含め大好き(中毒?)なのです。
今住んでいる家に引っ越して来たばっかりの頃、家の近くに街の酒屋さん的なお店を発見しました。駅からほど近い家への帰り道にあるので、なにか珍しいビールはないかなと思いふらっと入ってみたのです。店内は薄暗くワインを中心においているお店のようでした。いい雰囲気。ビールコーナーを探すと店内一番奥の冷蔵庫。レジの前を通り過ぎ、店主の顔をちらりと見ると、白髪に白髭まん丸眼鏡、お腹はぷっくり出ていて新聞を読んでいる。新聞を読みながら顔は動かさず目だけを僕の方に向け「いらっしゃい」と一言投げ、また目を新聞に落とす…。そんなに愛想は無いけれど、ジブリ作品に出てきそうな、温かみのあるおじさんでした。おじさんを横目に奥のビールコーナーへ行き冷蔵庫内を物色していると、ある事に気づいた。
ビールの缶が逆さまになっている。冷蔵庫のすべてのビール缶が…。
僕はすぐさま頭の中でその逆さまの意味を探ってみたがまったく分かりません。しかし入った瞬間から感じるそのお店の雰囲気からして、何かしらのこだわりで逆さまにしているに違いない。とりあえず見たことの無いベルギー産のビールを購入し、帰り道でグビグビ飲みながら、逆さまの意味を考えました。「ビールの美味い成分が下に落ちて沈殿する」。「逆さまなので、飲むときは一口目にすご〜く濃い味が楽しめる」とか「飲む直前でひっくり返すことにより中で何か反応が起きて、切れ味が増す…」などいろんな可能性考えていたのですが最終的に諦め、まあきっとその方が美味しくなるんだろうと言うところに落ち着いていた。
それからは家の冷蔵庫のビールはすべて逆さま、自分でいろいろ考えた憶測はもう頭からはすっかり消えて、その方が美味しいという自分で勝手に決めた結果のみが頭に残っていました。実際に逆さまになっているビールを飲むというのは、肉を焼く前に料理酒に浸けるとかのひと手間かけている感じが気分を高揚させ、ビールはそりゃおいしく感じられました。
その後何回かその酒屋には足を運び、僕もいつもスケボーを持っていたりするので向こうも僕のことを認識してくれるようになりました。「こんにちは〜」とかくらいは言葉を交わすようになったので、僕はそう言えばと思い、冷蔵庫にあるすべてのビール缶が逆さまになっている理由を聞き出してみようと思い、声をかけました。話が少し長引く事も覚悟の上でした。
「あの~、冷蔵庫にあるビールの缶逆さまなのってなんでなんですか?」
「あぁ、結局さ、飲み口にホコリが溜まるでしょ、だからだよ」
「 なっッ!。。。。。。。。。。そぉなんすねぇ……」
結構焦ったのは言うまでもないです。家の冷蔵庫に逆さまに入っているビールちゃんたちごめん。キミたち逆さまになっているけどそれ味には完全に意味ありませんからー! これを機にプラシーボ効果についてちょっと勉強しようかな。
分からないことは無駄に考えていないで聞くべしという話でした。
Daisuke Miyajima
@jimabien
M×M×Mの敏腕スタッフにして自称映像作家のジマこと宮島大介。伝家の宝刀Fs 180フリップをなくした今、どこへ向かっていけばいいのか迷走中。本能の閃きをたよりに書き綴る出口なしコラム。