37歳でもまだまだ若い者には負けないと本気で思ってるオレ。いや本当はすべてわかっている、負けている。余裕でぶちのめされている。相手にもされてない。必死に相手にされるように頑張るオレがいる。必死に必死にしがみついていかないと、無敵なヤングたちに遊んでもらえなくなる。
そうなったらオレはまったくスケートが楽しくなくなる。今言ったヤングとは(池田)コウタや謝花(明徳)や、もうヤングではないが(豊岡)コウセイとか…。ヤツらは一緒に滑ると、必ずオレのトリックに被せ、さらにその上を行き、ニタっと笑う。そのくせ、特にコウセイはオレがハンマー決めると「よかったっすよ今の!」とイラっとした顔で言ってくる。謝花も、オレのハンマー後に自分が決められないと、一見笑ってるが、笑ってない顔になる。そんなところが好きで「ヤツらにその顔をさせれなくなったら、そう感じたら…オレは終了」と思っています。
でも、彼らのお陰で、毎年毎年なんとか乗り切れる。年末に1年を振り返り、新年を迎えるにあたり毎年まず先に思うことは「去年以上にオレはやってやったぜ」と思えるように新しい年を頑張ろうと。「まだ体は動くんだ! イメージできるんだ!! ゾクッとして~んだ」って思う。彼らにいたぶられるが、たまには刺し違えてやる。そんでニタ~ッと笑ってやろう…。そうさせてくれる力の源に感謝しつつ今年も頑張ろう。
さて、上に書いた若いライダーたちと絡む現場は、コンテスト、撮影、デモと大きく3つに分けられる。その中だとオレはデモが一番大好きだ(その中じゃなかったら、ツアーがNo. 1ですけど…)。一般のお客さんに向けたデモも、スケートイベントのデモも多くの声援をもらって、身体から力が漲ってくる。同じ技を何度も失敗したら練習と一緒なので、3回やってメイクできなかったら違う技に変更するが、デモのストーリーを最後のハンマートリックに繋げたいので、そう展開していけるように組み立てる。
ラストトリックは文字通り最後の〆なので、そうやすやすとメイクさせてくれない。なので何度もチャレンジする。見てる側は、事故並みの転倒をしてもすぐ立ち上がりメイクにもってくプロセスを見てる訳で、フェイクじゃない本気を感じ、最後には同化するぐらいの勢いでシンクロしてくれる。
まだまだ日本のシーンはグラスルーツムーブメント(草の根活動)ではあるが、街おこしのイベントやクラブイベント、豪華スポンサーがサポートするイベントなどで生のデモを見たオーディエンスは、必ず歓声と拍手をくれる。
メイクするか、身体が持たなくなって終わるかのどっちかだけど、メイクした時の喜びは他の何ものにもかえられない。大げさではなく、お金では買えない。正直なところ、見てる人がどうこうの余裕はまったくなくなる時もある。
だからこそ、本気でデモしている時だけが、一番自分に素直になってる。人生で一番まっすぐに自分と向き合ってる時かもしれない。「自分が素直になれる時はデモの時だけ」と思うとゾッとするが、至福の時間を過ごすためにアタックし続けようと思う。
滑り手はさまざまな思いをもってデモに挑戦している。多くの良き答えがある中に、ライダーはデモにあたり、スケートに対する世間一般の認識レベルを良くしたいと思う気持ちで滑ることもある。こう思ってるライダーは相当達観していますが、実際にこう話す同志は結構います。
「東北のスケーターが伝えたいことを滑って伝えるのがオレの仕事だから、本気で伝えるよ! 豪ちゃん」と発したのは、AirJam2012で並みいるアーティストらに引けを取らない力を発揮しオーディエンスを魅了していた丸山晋太郎だ。気迫にやる気、姿勢、根性、メンタル、まだまだ若手に負けない、いやそれ以前に勝てる若手はいるのかと思わせるほどの鬼気迫る滑りをしていた。震えるほどかっこ良かった。2日間の開催で述べ5万人以上を動員したAirJam2012は、東北ライダーによって、この年に日本で一番スケートを一般のオーディエンスに認識させたイベントだったに違いない。
一般のオーディエンスがスケートのデモを見た。素直な喜びと驚き、遊び、スポーツとしてのスケートの進歩が少なくともその場に居た人たちに伝わったと自分が感じられたら、デモ冥利に尽きるよね。アメリカのような規模のデモが何年後かに日本で開催されることも、大きな夢のひとつとしてみんなで意識していきたいな。
最後にこれが言いたかった。そしてオレたちは仲間であるが、ライバルでもあるのでデモ中でも戦っています。今年もアントニオ豊岡やジャハーーーーナとの対戦が待っています。池田の神を下界に引き降ろすのも、奇跡のハンマー3連とかださないと無理。天上界からMADPOPでやられるんだ。
とにもかくにも、オレ、今年も10発もらうが、1発かましたる。
Go Ueda
@goueda13mind
プロスケーター、MC、ディストリビューター、そして生粋の江戸っ子。経験値と熱量と、そして壁に張り付く頻度の高さはlikeスカイツリー。スケート界屈指のオピニオンリーダーが語る、ひとつ上の男とは。