2015年の初め頃、突然ヨニー・クルーズからIstagramにダイレクトメッセージが届いた。内容は「ヒロキ、東京に行くから一緒に滑ろうぜ!」というもの。
『StaticIV』でパートを残し、精力的に活躍をしているヨニーとは一緒にスケートしたいと思っていたところだった。「誰と来るんだ?」と聞いたところ、思いがけない答えが返ってきた。な、なんとお騒がせクルーのGX1000のメンバーとともにジャパンツアーをするというのだ。面子は、Habitatのアレックス・デイヴィスとブライアン・デラトーレ、Chocolateのスティービー・ペレズ、Quasiのジェイク・ジョンソンとフィルマーのライアン・ガーシェル。言わずと知れた豪華ご一行での来日だった。
ヨニーが「ヒロキの映像がほしい」と言ってくれたため今回は参加することとなったのだが、自分が何もできなそうなタイミングや用事のあるときはなるべく参加しないようにした。飽くまでも、このクルーはミッション(仕事)を遂行するために来日しているからだ。人数が多くなると動きも鈍るうえに、キックアウトの可能性も増える。東京のストリート事情を考えると、なるべく邪魔にならないようにするための選択だった。
この面子での撮影はまさにカオスそのもの。車で移動の時は運転中に「止まってくれ! いいスポットがあった」といきなり言い出してなかなか目的のスポットに到着しない。速攻でキックアウトされるスポットでもとりあえずテールを叩き、みんな攻めまくる。ヨニーがふざけて警備員の帽子を盗んで警察のお世話になるなど、毎日のように何かしらのトラブルが起きていた。しかしながら、流石は一流どころ。撮影になったときの集中力はとてつもなく、まずはできそうなトリックを確実に収めてから難易度の高いトリックをメイクするまでトライし続ける。あっという間にライアンのVX1000に映像が記録されていく。
ヨニーのメイク率、アレックスの絶品スイッチトリック、いとも簡単にメイクするスティービーのハンドレール、ジェイクの見たことのないトリック、そしてデラトーレの猛アタックに驚き、心を打たれた。そんな面子の中で1カットでも映像を残すには、自分からできそうなことを探し、前に出て行かなければならない。撮ってもらうタイミングを掴まなくてはならないのだ。クルーの撮影を優先しながらも、ずっと何かできることがないかと考えていた。
あるとき、ジェイクがやり始めたスポットの側にウォーターギャップがあるのを知ってた僕は、彼の撮影終了後にライアンに声をかけそのスポットに連れて行った。彼は快く承諾して撮影が始まった。すぐにキックアウトされるスポットなだけに、自分の得意トリックであるFsフリップを選んだ。これは2、3トライでメイクすることができてまた次の撮影場所に移動した。
このクルーは撮影に対するモチベーションが高く、いつもスケートを楽しんでいたし、気のいいヤツばかりだったため、一緒に動くのがとても楽しかった。毎日一緒にいたわけではないけど、彼らからとてもいい影響を受け、僕にとっていい経験になったと思う。先日Thrasherで公開されたツアービデオに、自分も友情出演できて嬉しく思う。
ちなみに、自分が知るだけでも今回のツアービデオで使用されなかったフッテージがいくつもあるので、おそらく別のタイミングで目にすることになるかと思う。今はそれを楽しみに待っているところだ。
Hiroki Muraoka
@hirokimuraoka
現在もっとも乗れている日本人スケーターのひとり。スケートのスキルに加え、ペインターとしても非凡な才能を持つ。