「自分の国に帰れ」。これは新宿のバンクスポットで人種差別主義の警察官から投げかけられた言葉だ。初めはムカついたが、オレはヤツらの外国人嫌悪をあざ笑ってやった。しかし、つい先月、オレは現実として日本からの強制退去に直面することとなった。
オレは毎年、ビザを更新する厳しい試練を乗り越えなければならないのだが、今年は職が不安定だったため難航を極めた。数週間の余裕を持って事前に申請したにも関わらず、時間だけが無駄に流れてビザの期限が切れてしまったのだ。入国管理の担当者によると、ビザが失効しても2ヵ月間は日本に滞在できるとのことだった。しかし、この僅かな時間もビザの発給の報せが届くことなく駆け足で過ぎていった。日本に滞在できる時間が残り数日となったとき、オレは現実として荷物をまとめて本当にこの国を追い出されるかもしれないと実感した……さあ、どうする!? 急激に気分が悪くなり、パニックに陥った。どこへ行けばいいのだ? 何をすればいいのだ? 中国で英会話講師? オーストラリアで木こり? カナダで舞台美術? 母国のパン工場に舞い戻り? いやいやいやいや…無理無理無理無理!! 退去は仕方ないかもしれないが、どこかのオフィスの会ったこともない人間がオレの運命を握り、家や仕事、そして4年間もともにした仲間と離れなければならないのはクレイジーだ。
結局のところ、オレは自分の人生をコントロールできないようだ。強制退去に直面したオレが感じたことを以下に述べてみる。
1. なぜ日本政府はオレを必要としないのだ? 2020年に東京オリンピックを控え、3言語を自由に操る白人男性は重宝するはずだろう! しかもスケートボードが公式種目になれば、瀬尻 稜のスピリチャルガイドの職に就くことができるかもしれないではないか!
2. オレは社会に貢献することができる男であり、日本社会が抱えるさまざまな問題を解決することができる。高齢化? 少子化? まあ、聞いてくれ。オレには生まれつき、過剰なまでの精子を生産することができるにも関わらず、いまだにその能力を十分に発揮できていない。パラサイトシングルや引きこもりにオレの精子を提供し、人口増加に尽力することができる。また、他人種のDNAを注入することで、経済の発展にも繋がるかもしれない。日本人とオレのようなオランウータンとのハーフの子ども、つまり毛深いスケートボード戦士が生まれてくることを想像してみるがいい。オレらに不可能などない! 万歳!
3. オレは人間が摂取できる制限を遥かに超える量のキリンビールとファミマのチキンを消費している。これは無償の愛であり、自分の身体と精神の健康を省みることなく莫大な額の消費税を支払い、キリンとファミマの株価を劇的に上昇させているのである。まだ彼らから何の礼も届いていないが…。
そして、強制退去4日前にようやくビザが発給された。あと1年、日本に滞在することができる。確かにビザが発給されたのだ。人生のいかなることも当たり前だと思ってはならないと再確認した瞬間だった。日本にいられる時間が数週間まで迫ったとき、オレは限られた時間を最大限に活用しようと決心した。しかし、これは普段から心がけておくべきことだ。おそらくこれを読んでいる諸君はビザの心配なんてないだろうが、誰でも突然、命を落としてしまう可能性があるのだ。肩の毛を剃るときに足を滑らせカミソリで喉をかき切ってしまったり、大好きなプレミアムチキンの骨を喉に詰まらせてしまったり、道を渡ろうとしたところに飛行機が墜落してきたり。だから、一生懸命働いて、今日スケートをして、今夜酒を飲んで、たくさんたくさん性行為をして愛し合おうではないか。だって、それが最後になってしまうかもしれないのだから。
愛をこめて
ローレンス
Laurence Keefe
@laurencekeefe
エンゲル係数高すぎスネークスタイルで、世界の秘境をスケボー片手に渡り歩くザ・トラベラー。合言葉は「旅の恥はかき捨て」。ローレンス流、地球の歩き方。