前回の奇妙なコラムには多くの反響を頂きました。その中には、マンションの上からジャムが落ちてくるスポットがあるそうです。路面がベトベトになってスケーターだけでなく近所の人にも迷惑が掛かってしまいますね。世の中にはいろんな話があります。
さて、今回はフィルミングの話に話題を戻して「自分が撮影した映像」を振り返ってみたいと思います。久しぶりにというか、まったく忘れていた映像が最近公開されました。森田(貴宏)くんのFeatureパートに使われていたサイラス(・バクスターニール)の映像です。川口のスケートパークで撮影したものですが、本当に1時間以内ですべての撮影を撮り終えた気がします(正確には雨が降ってきて撮影を終了せざるを得なかった)。
サイラスは自分のトリックについてのビジョンをしっかり持っているスケーターなので、何も言わなくてもひたすらトライし続けます。それこそバンク to バンクの真ん中にいれば、次から次へとトリックをメイクします。楽と言えばそうかもしれませんが、メイクが早いので映像を確認する時間がありません。それに、真っ黒な雲が頭上に覆い被さっていたので、いつもよりも焦っていたのは確かです。
自分の映像を後から見直してみると「良く撮れている」というよりは「なんでもう少し上手く撮れなかったのか」という気持ちの方が強く、これは良くも悪くも日本人らしい考えなような気がします。「サイラスの映像が沢山撮れたからオッケー」というよりは「もっと彼の力強い滑りを表現したかった」という気持ちの方が強いのです。それに、僕のよくある失敗は手ぶれです。トリックの最中にカメラを動かすことが多いので、揺れが逆に目障りです。確かに迫力あるいわゆるFESNらしい映像といえばそうかもしれませんが、個人的には「見づらい=伝わりずらい」ととられてもおかしくありません。
結局のところ「見る側にどう伝わるか」というのが大事なところではないのか。
僕の場合、それらは編集する側に助けてもらっていることが多いのですが、僕の撮影スキルの欠如によってボツになった映像は沢山あります。良い悪いの分別、精査をきっぱりとしてくれる先輩が近くにいたというのは、僕にとって大きなプラス要素だったと思います。
例えば魚眼レンズを使っていればオッケーとか、フレームの中に入っていればいいとか、よく海外の映像でこのアングルで撮影していたとか、そんな感じで初めは撮影していました。けれど、そこから次のステージいくためには、もう少し違う何かが必要な気がします。
それが具体的に何かと言うと、一概に言うことは難しいかもしれませんが、必ずあります。魚眼を使っていればそのレンズの特製を活かした撮影方法や、ロングレンズであれば引きの映像で表現できる理由ある映像。レッジの長さを出したい、ディスタンスの幅を出したい、背景の抜けがいい(もちろんこれは撮影される側にもあると思います)。
それらの一定の条件を超えた後にあるオリジナリティ。これがとても重要でいて難しい…。誰も思いもつかなかったことを考える必要がある。それはリンゴが落ちるのを見て、万有引力の法則を発見したニュートンのように…。
もちろん自分には、とてもそんなことはできそうにないので、とりあえずジャムが落ちてくるようなスポットに出かけるようにしていました。
Takuya Nakajima
2002年よりFESNの専属フィルマーとして活動後、現在は都内の医療機関にて理学療法士として勤める傍ら、某デジタル系会社に勤務するMr.魚眼レンズ。