Film_Jima, TK
Edit_TK
Photo_Anthony Acosta
Special thanks_MxMxM Skateboards, Converse Skateboarding, FTC
[JAPANESE / ENGLISH]
VHSMAG(以下V): まずスケートを始めた頃の話から聞かせて。
砂川元気(以下G): まず同級生の兄ちゃんがスケーターで『ing… Vol. 2』のビデオを持ってて…。それでその同級生が「沖縄のスケートビデオがあるんだけど、住んでる団地の下が映ってるから観ない?」みたいになって。そいつがとんでもなく嘘つきだったんで信じてなかったんですけど、実際に観たら本当で。それで興味が湧いてスケートを始めました。たしか中1だったと思います。
V: 当時の沖縄のシーンはどんな感じだったの?
G: 宜野湾市っていう場所が地元なんですけど、とりあえずパークは知ってる限り近くに全然なくて。オレらは仲間同士で団地の裏の広場で滑ってました。友達の親が団地の自治会の人だったんで、夕方6時まではそこで滑らせてくれたんですよ。あとは隣のエリアにガススタの廃墟で滑ってる人らがいたり、その隣にはきな粉棒たちがいたり。
V: 沖縄のスケーターは基本的にみんな顔見知りというかタイトなコミュニティなの?
G: 最初のうちはみんな自分たちのローカルスポットで滑ってたんで、大会で会うときに挨拶するくらいでした。みんな人見知りというのと、自分の地元から出ないでスケーターが多かったんで。だから顔見知りではあるけど、挨拶だけみたいな。
V: 今ではいろんな沖縄のスケーターが地元を離れて活動してるよね。きな粉棒、長堂くん、宮城 豪もそうだよね。彼らとの出会いは?
G: 豪さん、きな粉棒、(長堂)良明も全員、高校生のときです。良明は(伊波)繁太が『Eighty-Seven』ってビデオを撮ってて、そのときにパートを作ろうって誘われたのがきっかけで話すようになりました。きな粉棒も『ing… Vol. 6』でパートを撮ることになったときに会う機会が増えて話すようになりました。
V: じゃあ、ふたりともビデオプロジェクトがきっかけで仲良くなったんだね。
G: そうですね。ちなみに豪さんはオレらが高校のときに滑ってた宜野湾市役所でスクールをやってたんです。そこの先生で豪さんもいて。
V: ドラボン、先生やってたんだ。なんか意外。
G: あー…でもほぼ…。やってたかって言ったら…まあ、そこにいたって感じの…(笑)。そこからちょこちょこ話すようになりました。
V: 当時影響を受けたスケーターは? というのも、元気くんは確実にメインストリームな感じのスタイルじゃないでしょ。どういう経緯で今のスタイルに至ったか知りたいのよね。
G: 最初は『ing… Vol. 2』で(友利)晃太郎さんって人がちょこちょこグラブ系の技をしてて。初めはそれで「なんだこの技!」みたいな。まずその人に憧れたというか、そこがスタートでした。その次がジェイソン・アダムス。Black Labelの『Label Kills』のパートでウォーリーからのボードスライドとかスラッピーとかを初めて観ました。それでさらに「これはなんだ!」みたいになって。そこからはクリス・ハスラムとかダニー・ゴンザレスとかを観たり。
V: 基本的に普通はイヤなんだ?
G: まあ、そうでしょうね。でも高校のときは一瞬、普通に憧れたことはありました。
V: そんな時期あったんだ(笑)。
G: まあ、なんだろう…。変な技ももちろん好きですけど、途中でやっぱちょっと普通の技もだんだん欲しくなってきて。それで、そのときだとPJ・ラッドとか。Flipのビデオを観てスイッチをもっと練習したいと思ったり。そこから正統派の技も一気に練習するようになりました。
V: その時期があったから何でもできるスキルが身についたんだね。
G: そうですね。そのおかげで今はどこに行ってもある程度楽しめてます。
V: 今はオリジナルの技をやりたいっていう気持ちが強い?
G: 思いつく限りはやりたいと思います。ただこれまでやりすぎた結果、今は全然思いつかないですけど。
V: やり尽くした感があるね(笑)。ではお気に入りのオリジナルトリックは?
G: SFのフォートマイリーでやったドロップですかね。あれは高校のときに思いついてやった技なんですけど、たまたまあのスポットに行ったときに反対側に板を落としちゃって。それで戻ってきて柵をまたいだときに「そういえばあの技!」って思い出しました。
Video_Katsumi Minami
V: では初めて入れたタトゥーは?
G: 20歳で肩に入れた星です。それが初めで、もともといっぱい入れたいという思いがあったんです。実は幼稚園から小4までモトクロスやってたんです。そのモトクロスのビデオにタトゥーをいっぱい入れた外国人が出てて。それを観て大人になったらいつか入れたいと思ってました。
V: ちゃんと大人になるまで待ったんだね。
G: そうですね。たしか法律で18歳から大丈夫なんですけど、店によっては親の承諾が必要とかあったと思うんです、今はわからないですけど。それが面倒なんで20歳まで待ちました。バイトしてお金に余裕ができてからようやくって感じですかね。タトゥーを入れる痛みを知って「これならいける」って思って入れ続けました。
V: 親に初めて見せたときは何か言われた?
G: 初めて入れるときに親に話してたんで大丈夫でした。
V: 眉毛に入れたときも?
G: 一応ちょっと前くらいに「これ以上入れないでくれ」って言われましたけど。でも正直、ここまで来たらあまり変わらないというか…。
V: たしかに。一番気に入ってるタトゥーは?
G: どれだろ。右脚の自由の女神をちょっと改造したヤツ。もう色が薄くなっちゃったですけど。それと胸のチャッキーとか。
V: 全身タトゥーだらけで引かれたりすることはない?
G: もちろんビックリされることはいっぱいありますけど、逆に1回だけラッキーなことがありました。11年くらい前ですけど、マックでレジに並んでたら帰ろうとしたお客さんに声をかけられたんですよ。60歳くらいのオジサンだったんですけど、オレを見た瞬間に「うわ、いた!」って近寄ってきて。全然知らない人だったんで「会ったことありましたっけ?」って聞いたら「いや、初対面!」みたいな。オジサンはどうやら転勤で長い間アメリカに住んでたらしくて、久しぶりに日本に帰ってきたら日本人のパンチの少なさに悲しんでたらしいんですよ。「アメリカのような刺激がほしい」みたいな。それでたまたまタトゥーだらけのオレを見かけて、思わず声をかけて、「ごめんね。うれしくなっちゃって。マック食べるんでしょ? オレがおごるよ!」って。知らないオジサンにいきなりセットをおごってもらいました。
V: いいね(笑)。では初めてのスポンサーは?
G: 初めてのスポンサーはMxMxMです。あと同じ時期にVansとCreature。その頃はもう東京に住んでました。
V: 東京はいつ出てきたの?
G: 20歳の2月の中旬くらいに東京に出てきました。だから2個目のタトゥーを入れてすぐくらいです。沖縄では親の水道工事の仕事をしてたんですけど、スポンサーをつけたかったのと撮影もしたかったんで東京に行きたかったんです。そしたら「仕事とスケボー、どっちが大事なんだ」って怒られて。それで「どっちも」って答えたらさらにめっちゃ怒られて。最後は「もう帰ってくるな!」って言われて、そのまま13万だけ持って東京に引っ越しました。
V: 東京に出てきてどこに住んでたの?
G: 初めは繁太の家に1ヵ月住ませてもらってました。その後は職場の寮に住みながら貯金して一時は家を借りましたけど、そこからは長いこと友達の家に住みまくってました。
V: 悪名高きフラワーハウスにも住んでたもんね。
G: そうですね、国分寺の。あそこには2年くらい住んでましたけど…。あのときはまあ、ひどかったですね。よくクレーム来なかったと思うくらい。隣や下の階の音が聞こえるくらい壁が薄いんですけど、きな粉棒が泊まりに来て寝たらTKがアコースティックギターをかき鳴らしながら大声で歌って起こしたり。オレとTKと良明の3人で住んでたんですけど、Call of Dutyっていうゲームをやりながら夜中まで騒いだり。それでも1回もクレームが来なかったです。お年寄りが多かったんで耳が遠かったのかもしれないです。
V: 長堂くんとは今じゃ親戚だもんね。
G: はい、良明のいとことオレの親戚が結婚したんで。だからはふたりの名前は同じ家系図に載ってるはずです。良明の結婚式にも行って友人代表スピーチもしましたし。感動するスピーチは思いつかないんで笑いの方向で行きました。大成功しましたね。オレの後に感動系の新婦の友人代表スピーチがあったんですけど、オレのスピーチのせいでやりにくい気まずい空気になってたらしくて。オレは自分の出番が終わって緊張から解放されて外でタバコ吸ってたんで知らないんですけど。だいぶウケましたから(笑)。
V: 2016年にはMxMxMからプロモデルを出してるよね。
G: あれは大きな出来事でしたね。いつか自分のデッキが出たらうれしいと思ってましたけど、当時はすでに29〜30歳くらいでほぼ諦めてたんで。スポンサーが変わる機会はあったとしても、そこからモデルを出すなんてないと思うんで。
V: では今回のパートについて。撮影のスタートのきっかけは?
G: MxMxMの『MOSHIMOSH』が出た後にまたDVDを作ろうって話があったんですけど、ライダーの住んでる場所がバラバラになっちゃったんで。あとはジマさんも家族があったりとかでなかなか撮影に行けなくて。DVD用に撮影する予定から、各ライダーのパートができたらアップして行こうっていうことになりました。撮り始めて4、5年くらい経つんですけど、その間にプロモデルのプロモビデオがあったり、シンガポールツアーのビデオがあったりしました。
V: 今回のパートはLAでも撮影したんだよね。
G: LAはスポットがヤバすぎましたね。ここであんなことやってたのか…っていう。アンドリュー・アレンがやってるスポットに行ったんですけどあれはヤバいですね。あの人のパートを事前に観てイメージを膨らませるんですけど、結局メイクできなかったというのが結構あって。それで当初は狙ってなかった技を出したんですけど、それでもメイクまでかなり時間がかかりました。だいぶ手強かったです。
V: では今回のパートで思い入れの強いトリックは?
G: 一番時間がかかったのは…LAで撮った技ですね。フリーウェイの出口の壁にアールが盛られてあるスポットがあるんですけど、そこでやった5-0のFsグラブアウト。あれは途中で「無理かも」と思って何回か心が折れそうになりました。時間的には2時間くらいだったと思います。ウォールライドのグラブアウトはメイクしたんですけど、何回やっても上にトラックをかけられなくて…。でも同行したアンソニー・アコスタの情報だとそこは誰もトラックをかけてないということだったんで。それで諦めずがんばりました。他のスポットや技なら時間がかかっても数やりゃいつかできるって思うことが多いんですけど、あれだけは別でしたね。ぎりぎりなんとかメイクできました。
V: LAのそのトリックは苦戦したわけだけど、普段はどんな感じで撮影してるの?
G: できればそのスポットで誰も触ってないところを攻めるとか、誰もやってないトリックをやるとか。それが一番です。あとはスポットで思いつくことをやる感じです。何回かトライすれば、感覚的に数撃てばできるかどうかわかるんで。特にマニュアルは数やればできると思えますけど、ラインは途中で不安になることがあります(笑)。あとは体力との勝負。大体最初の15分は調子いいですけど、そこから1回ハマる時間が来て、心が折れる手前くらいでもう1回いい波が来ることがあるんです。だから時間がかかるときはその波まで待つことがありますね。どうしてもやりたい技は粘ります。
V: 今回のパートの撮影はどうだったの?
G: 今回のパートは何個目かと考えたんですけど、実はこれが7個目なんですよ。7個目にもなるとなかなか新しい技が思いつかない(笑)。だからいろいろ大変だったというか…。トリックチョイスとスポットチョイスが大変でした。できれば有名なスポットで誰もやってない技を出せるのがベストですけど。それも最近は難しくなってきました。
V: でもそれがLAの5-0のFsグラブアウトだよね。ちなみに元気くんは人に心を開くまで時間がかかるタイプ?
G: 毎回時間がかかります。人がいっぱいいるとあまり話せないです。どっちかと言うと聞き手に回るというか。大勢で動くのもそんなに得意じゃないんで…。でも撮影は別です。ハンマーをやるときは人が多いほうが気持ちが高まります。逆にマニュアルとかラインとかは時間がかかるかもしれないんで人がいないほうがいいです。ハンマーは身体が持たないから長時間できないんで(笑)。
V: 理想のスケーター像は?
G: 「苦手なトリックは?」って聞かれたときに「そんなのないっしょ」って言えるようになりたいです…けどヒールフリップとメインスタンスのキックフリップがダメです。どっちかが苦手なスケーターは多いと思うんですけどマジでどっちもヤバいんですよ。スケートゲームで出されたときに返せるように持ってるくらいのレベル(笑)。最悪苦手でもいいから全部のトリックができるようになりたいです。あとはどこでも滑れるスケーター。
V: ではこの先の展望は?
G: 目標としてはあと3個フルパートを撮りたいですね。そうしたらピッタリ合計10個になるんで。今はラッキー7ですけど、どうせなら10にしたいです。
V: じゃあさらに新しいトリックを考えないとね。では最後に何か面白い話を。
G: 良明がインタビューで「きな粉棒がテ●ガに飽きたっぽい」って言ってましたけど、実はテ●ガエッグにハマってたときは何回も洗って使ってたんですよ。それで「まだテ●ガエッグを使い回してるの?」って聞いたら「もちろん。ついに貫通して穴が空いた」って言ってました。
Genki Sunagawa
@gxnxk
Date of birth :
April 19, 1987
Blood type :
A
Birthplace :
Okinawa
Sponsors :
MxMxM Skateboards, Converse Skateboarding, FTC, Ace, Spitfire, Sabre, Stance, Highsox