VHSMAG(以下V) 今作を制作したきっかけから教えてください。
中島壮一朗(以下N) 当初は自分が編集する予定ではありませんでした。最近フィルミングを結構していて、いずれは編集もちゃんとできるようになりたいと思っていたところ、編集を依頼していたエディターにトラブルが起きてしまって…。今回は自分のライディングもないので、自分が編集することでIFOの作品としてもいいものが残せると思い長編作品を作ることになりました。
V 今作の制作期間はどれくらいでしたか?
N 仕事の合間に作業をしていました。次の日の仕事に影響するので徹夜はしなかったです。編集ソフトのPremiereを使うのも初めてだったので、最初は機能の勉強から始めました。期間的には1ヵ月で、時間は50時間くらいでした。思っていたよりは早くできた印象はあります。
V 撮影がほとんど昼でスポットも全国各地に広がっていて、かなり精力的に動いているのが伝わってきました。IFOのチームは普段どのように活動しているのでしょうか?
N 最近は神奈川のライダーが増えたのですが、IFOのライダーは全国に分散しているのでチームが揃うのは毎年2~3回ほどのツアーです。ツアーは通常4~7日間で、映像がキレイに撮れて滑りやすい日中はがっつり撮影して、暗くなったら夜の街に繰り出す流れ。自分が海外のツアーでしていた動きをそのまましている感じです。それと、ツアーに参加できないライダーたちは個々で地元で撮影を続けています。
V 短期間で作品を制作する秘訣は?
N 前作『Time Capsule』のリリースが2014年だったのでフルレングスとしては3年ぶりの作品になるのですが、それ以降もツアーや個々の撮影を続けてきました。前作の時にはいなかった精力的な若手が増えたことも映像を多く残せた要因だと思います。
V 今作の撮影で印象深いエピソードを教えてください。
N 一番は自分が滑る側ではなく撮影する側として作品に参加することになったことです。ツアーでは自分がほとんどひとりで運転して、泊まる場所からカメラマンの手配、現場での指揮まで、気がつけばみんなのお父さんみたいな動きになっていました(笑)。
V 中でも思い入れのある撮影は?
N 今年行った大阪ツアーでの佐川海斗のライディングですかね。海斗はIFOの立ち上げからのオリジナルライダーで、当時は中学生だったんです。あまりに若すぎてストリートの撮影に誘うのを少しためらっていたぐらいです。そんな海斗も大学生になり、大阪ツアーではどんなスポットでもトリックを残すことのできる一流スケーターに成長したと実感しました。撮影の時、チームのみんなもどこでも攻めまくる海斗に後押しされて、モチベーションが上がっています。
V 『SECOND COSMIC VELOCITY』というタイトルの由来は?
N タイトルの直訳は「第二宇宙速度」。地球の重力を振り切るために必要な速度という意味です。前作から新たに加入した若手たちが中心となって、IFOも新たな追い風を受けてさらなる目標に向かっていこうという意味を込めてこのタイトルにしました。
V 今作のBGMはDJ Buntaがミックスを担当していますね。
N DJ BuntaはDJバトル“DMC Japan Final”の2008、2010年の日本チャンピオンで、Dlip Recordsに所属するDJです。普段から個人的にDlipのメンバーと交流があり、ジャグリングが上手いDJとスケートを融合させた映像を作りたいと相談しました。彼らからDJ Buntaを推薦され、今作の制作に携わった感じです。
V 今作の一番の見どころは?
N ライダーのスケートはもちろんですが、全編まるまる繋がっているDJ Buntaの楽曲に合わせた編集にも注目してもらいたいです。
V 今作でお披露目となったライダーも何名かいるようですが、彼らについて教えてください。
N 今作でお披露目になるのは、傳田 郁、中田海斗、そして兼本理久。郁も海斗も小学生の頃から知っている地元の茅ヶ崎スケーターで、郁はとにかく滑りがキレイでパワフルなオールラウンダー。地元のプロスケーターたちからの支持は高いですね。海斗はファッションシーンからもプロップスが高いイケイケスケーターです。兼本理久は岡山に住んでいて映像は少ないですが、来年の高校卒業と同時に茅ヶ崎に引っ越してくる予定の大注目株です。初公開ではないですが、何気に佐川海斗のフルパートも今作が初となります。
V IFOのチームカラーについて教えてください。
N 当たり前のことですが、IFOのライダーのスケートスキルは他のブランドに負けません。ファッション重視でかっこつけたスケートを目指す若者も多いこの頃ですが、IFOの基本はスケートボードです。過度に装飾された編集などで誤魔化すのではなく、スケートボードと真剣に向き合っています。それは作品を観ていただければ確認できるでしょう。
V IFOのアイテムを作るときに心がけていることは?
N IFOではスケートグッズ以外にもいろんなアイテムをリリースしています。これは単純にスケートをする場面で自分が欲しいと思ったものや、あったら便利だと思ったものばかりです。なので、たくさん水分を摂るスケーターのための大き目のステンレスボトルや、スマートフォンに簡単に取り付けられるウルトラフィッシュアイ、折り畳みができてコンパクトになるサングラスなど、いろんなアイテムを幅広く展開しています。
V ではIFOのライダーを選ぶ基準は?
N ただ上手いだけじゃなくて、スケートボードに乗れているかが大きな判断ポイント。一通り上手くできるスケーターはたくさんいると思いますが、ちゃんと板に乗れてるスケーターはなかなかいないです。それと自分自身をちゃんとアピールできるスケーターじゃないとスケート活動は厳しいですね。自分勝手なライダーも受け付けたくないです。当然のことですが、チームのメンバーに馴染めない人は論外です。
V 最後にIFOの今後の展開を聞かせてください。
N 今作を観ていただければわかると思いますが、自分は表舞台から退く形になります。裏方という形でチームと付き合っていくことになるので、今まで以上に映像作品をリリースできればと思っています。
SOICHIRO NAKAJIMA
神奈川県出身。強靭なポップで繰り出すトリックを武器にStereoのグローバルチームに在籍した経歴を持ち、411VMのオープニングを飾った唯一の日本人スケーターとして知られる。現在はIFOのディレクターを務めている。