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スケートボードをバックボーンに良質なプロダクト展開を行うHUF、CHALLENGER、BOLDLINE。珠玉のコラボアイテムをリリースしてきた3ブランドのディレクターであるキース・ハフナゲル、田口 悟、堀内俊哉が邂逅を果たす。3人の出会い、コラボレーション、そしてそれぞれのスケートボードとの向き合い方とは?
──KEITH HUFNAGEL × SATORU TAGUCHI × TOSHIYA HORIUCHI

2016.04.27

Words by VHSMAG, Photos by Isamu Isono

VHSMAG(以下V): まずはみなさんの出会いから聞かせてください。

田口 悟(以下ST): 僕が初めてキースと会ったのは1995年に埼玉の朝霞で行われた大会です。キースがREALのデモで来日したときに一緒に記念写真を撮ったんですよ。今日はそれを持ってきました。緊張して引きつったこの顔……。ちなみにこの大会はアマチュアクラスに2位に入賞しました(笑)。

キース・ハフナゲル(以下KH): ちょっと見せて。1995年8月26日……。懐かしいね。しかもMetropolitanのTeeを着ている。ヤバいね。キミのイエロー、ブルー、ホワイトのコーディネートもヤバいね(笑)。Golden State Wheel CompanyのTeeも懐かしい。

堀内俊哉(以下TH): 僕はこの頃、スケートビデオで一方的にキースを観ていたって感じかな。でも実際に会ってご挨拶できたのは昨年のInterstyleです。

KH: そうだね。BOLDLINEのブースをチェックして自己紹介をし合ったのが最初の出会いだね。

V: HUF × CHALLENGER、HUF × BOLDLINEはどういった経緯でコラボが実現したのですか?

ST: 2011年にHUFの日本人スタッフであるナオくんがCHALLENGERと一緒にアイテムを作りたいと声をかけてくれて、もちろん僕もHUFのことは知っていたしキースは凄く影響を受けたスケーターだったので、かっこいいアイテムが作れる、発信できると思い企画をスタートしました。

TH: BOLDLINEとHUFのコラボはCHALLENGERとのコラボで制作したライターケースがHUFの目に留まったのがきっかけです。HUFは、喫煙に対しても寛容なブランドという認識だったからこれは好機でした。

KH: そうだね。CHALLENGERとのライターケースがかなり気に入ってCHALLENGERに相談したら、直接BOLDLINEとやり取りをしてくれということだった。そうしてHUF × BOLDLINEのコラボが実現した感じだね。

HUFとのコラボをきっかけに新しい試みに挑戦することができた(堀内俊哉)

V: コラボを行ったアイテムの感想を聞かせてください。

ST: 本来、物作りとはこういうものだなと改めて感じたプロダクトでした。もちろん、売れる物を作ることは大切だけど、自分たちが楽しんで、かっこいいと思えて、それを着ることによってハッピーな気分になれたり、スケートでいつもより難しい技にChallengeしたくなる気分になったり。結局、ファッションって音楽と似ていると思うんですよ。ある曲を聴いて勇気が出たり楽しくなったりすることとかあるじゃないですか? それと同じで、あるTシャツを着たら勇気が出ることもある。HUFのアイテムにはそのような力があると思います。だから、そういうことを心がけながら僕もデザインするようにしました。その結果、そういう物作りができたと思います。グラフィックはアメリカを象徴とするイーグルと日本を象徴とする鶴がモチーフ。HUFとCHALLENGERがひとつとなって“CUF”という架空のスケートチームが誕生するという設定です。僕の大好きな’80年代のカルチャーが感じられるように、デッキはシルクスクリーンでプリントしています。“CAME UP FIRST”。これは“誰よりも最初にスポットを攻める”という意味が込められています。このフレーズはキースが考えてくれました。

KH: まずこれまでのCHALLENGERやBOLDLINEとのコラボアイテムはすべて最高。完成したアイテムを見てもらえれば一目瞭然だ。CHALLENGERとはこれまでにデッキ、Tee、キャップの3アイテム。そしてBOLDLINEとはさっき話したライターケースを3色展開。どれも最高の仕上がりだと思う。

TH: CHALLENGERとのライターケースは光沢のある仕上げだったんですけど、HUFとのコラボはサンドブラストでマットに加工しました。ライターケースのボディ自体をアップデートした感じです。HUFとのコラボをきっかけに新しい試みに挑戦することができたので感謝しています。

V: これからHUFとCHALLENGERの新しいコラボアイテムがリリースされると聞きましたが?

ST: 2011年にリリースされた“CUF”の続編ですね。どこまで話していいかわからないけど、今回も楽しく、かっこいい物作りができたと思っています。今回はキース自らプロモビデオに出てくれたり、僕もLAに行って撮影したりしました。本当に“CUF”というスケートチームの一員になったみたいでした。

KH: これまでに時間をかけて新しいコラボの準備をしてきたんだけど、今回は前回よりもアイテム数が増えている。Tee、スウェットシャツ、キャップ、ソックス、シューズ、デッキ……。まさにフルコレクションだね。

CHALLENGERもBOLDLINEも、スケートをルーツに持つオーセンティックなブランド(キース・ハフナゲル)

V: ではそれぞれが思うHUF、CHALLENGER、BOLDLINEの魅力について教えてください。

KH: CHALLENGERもBOLDLINEも、スケートをルーツに持つオーセンティックなブランドという点。そのようなブランドとコラボを行うのがオレらHUFにとっての理想なんだ。ルーツに忠実でいることが大切だと思う。

TH: 基本的にHUFはスケートシューズを軸にしながら展開を行い、スケーターやスケートシーンをサポートしているところが素晴らしいと思いますね。ブランドとして、根っこがしっかりしていることも魅力のひとつだと思います。スケートシューズを製造している他の巨大なスポーツブランドとも互角以上に肩を並べていることも本当に誇らしいと思います。

ST: HUFは楽しみながら仕事をしているという印象があります。2011年にLAのオフィスに行ったときも、夕方からバスケしたり、スケートしたりしていて、なんていい会社なんだって思いました。そして、その楽しみながら仕事をする姿勢がしっかりと物作りに反映している。HUFの動画からもそれは伝わってきます。まさに僕の理想ですね。

V: HUFとBOLDLINEもコラボの予定があると聞きましたが、どのようなものを作りたいですか?

TH: まずは最初のコラボアイテムを売り切ってからになると思いますけど、また同じライターケースの新型を開発できたらと思います。

KH: まだ今後のことは未定だけど、このライターケースはマジで気に入っているから是非第2弾を実現させたいね。BOLDLINEはアイデアの宝庫だから面白いものを待っているよ。

オレたちが今日ここに集まっているのもスケートがあったからこそ(キース・ハフナゲル)

V: スケートはアイテムのデザインなどにどのような影響を与えていると思いますか?

ST: 僕がスケートボードを始めたのは’80年代後半です。まだ小学生だった僕には本当に高価なおもちゃでした。雑誌を見ながら「いつかこのデッキを買いたい」とか、「このライダーが着ている服が欲しい」とかイメージしながらそのデッキや服のグラフィックを教科書に描くような毎日を送っていました。きっと、それがきっかけで絵を描くことが好きになり、高校に入ってアトリエに通い、グラフィックデザインの専門学校にも通うことになりました。すべてはスケートがきっかけです。僕の手がけるデザインのルーツは、’80年代のデッキに描かれていたボードグラフィックです。

KH: スケートがオレたちのルーツなんだから、すべてに影響を与えているとしか言いようがない。オレたちが今日ここに集まっているのもスケートがあったからこそ。スケートはそれぞれを表現するひとつの手段なんだよ。そして、スケートで培った感性がアートやビジネスに反映されて新たな表現の手段が広がっていく。現に、オレたちはそれぞれスケートを軸にしたブランドを立ち上げているわけだから。

TH: 僕もスケートにインスパイアされてデザインのアイデアを得ているひとりなので、まったくその通りだと思います。そして、そのようにして完成したデザインをスケートシーンにフィードバックできることも、非常にありがたいことだと思います。

僕の人生はスケートによって構成されています(田口 悟)

V: ファッションで影響を受けたスケーターや音楽などを教えてください。

ST: ’80年代はPowell Peraltaの『The Search for Animal Chin』に影響を受けて、Tシャツの袖を切ったり、総柄のシャツとかを真似したりしていました。’90年代はPlan Bのマイク・キャロルに憧れてキャップを後に被って太めのチノパンを穿いたり。もちろんREALのキースも大好きでしたよ。影響を受けたスケーターは数えきれないですね。スケートビデオを観るのが好きなので、使われている曲でSadeが好きになったり、Beastie Boysが好きになったりしてHip-Hopを聴いたりもしました。これもすべてスケートの影響。僕の人生はスケートによって構成されています。

TH: ちなみにキースは田口くんのように、他のスケーターに影響されて何かを取り入れたりすることはなかったのかな?

KH: オレは基本的に周りにいた連中に影響を受けてきたかな。NYにいた頃はマイク・ヘルナンデス、ベン・リバーセッジ、クリス・キーフ、ジェフ・パン、キーナン・ミルトン、ジーノ・イアヌーチ……仲間同士で影響を与え合っていた。SFに移ってからはEMBクルーだね。マイク・キャロル、ヘンリー・サンチェス、ジェームス・ケルチ……。だからウエストコーストとイーストコーストの影響を組み合わせた感じだった。また悟と同じで音楽にも影響を受けてきた。スケートビデオのクレジットでアーティストと曲を調べたり、NYにはイケてるラジオ局やHip-Hop番組が多かったからそこで情報を得ていた。

TH: なるほど。僕は’80年代の『Savannah Slamma』のビル・ダンフォースが好きでした。彼のスタイルには憧れましたね。音楽でいうと、Minor Threat。ファッションとは関係ないけど、アルバムジャケットに写っているイアン・マッケイのデッキのグリップテープの貼り方とか……初期衝動的にはそんなところですかね。

V: クリエイティビティとビジネスの葛藤はありますか?

KH: これはかなり難しい問題だね。クリエイティビティとビジネスは脳の違う部分を使うから、クリエイティブな時間とロジカルな時間を別々に設けなくてはならない。だから、それぞれの仕事を専門とする人材を置くようにしている。オレの役割は、クリエイティブとビジネスを行ったり来たりしながら、両方を引いた目で監督すること。どちらかに偏ることは絶対にしない。クリエイティブの専門はクリエイティブに専念する。そして、ビジネスの専門はビジネスに専念する。双方を繋げてバランスを取り、アイデアを形にするのがオレの仕事だね。

TH: それは素晴らしい環境ですね。僕はすべてひとりでやっちゃっているので、グチャグチャになることがあります。これはいつも壁ですね……。それに数字について考えると、日本のマーケットにおけるクリエイターの報酬は景気の悪化とともに年々相場が下がっている傾向にもありますし。いい物を作るには、やはり資本と時間が必要ですから。今回のコラボにおいては、そのバランスについてCHALLENGERもHUFも寛容にサポートしてくれたので悩みはありませんでした。おかげで、本当に納得のいく物を世に送り出せたと思います。

ST: 僕もひとりでクリエイティブとビジネスを担当しています。経理をしたり、デザインをしたり。頭を切り替えるのは大変ですね。

V: ところで、スケートの話も少し聞きたいのですが、最近の若手で気になるスケーターはいますか?

TH: 日本だと横浜の田中晶悟、そして三本木 心、戸倉大鳳ですね。

ST: 若いスケーターについてはあまりわからないですけど、最近はパークに行くと小学生ぐらいのキッズがめちゃくちゃ上手いという印象があります。いつも感心していますよ。パークが増えたこともあると思いますけど、そのような子たちが今後本当に上手いスケーターに育っていくと思いますね。僕もまだまだ、負けたくないので若い子より滑る努力をしないとだめですね。最近では朝イチで影練するようにしています(笑)。

スケートをすることができる一回一回を大事にしたい(堀内俊哉)

V: 40を過ぎて、スケートとの向き合い方も変わってきたと思いますが、それについてそれぞれ聞かせてください。

KH: プッシュしたりハングアウトしたりしながらスケートセッションの雰囲気を感じることはできるけど、個人的にスケートと仕事の両立は本当に難しい。これまでに長い間プロとしてスケートをしてきた。でも、時間の制限と年齢を重ねたこともあり、現在は当時と同じレベルでスケートすることができなくなっている。だから、今は人のいないパークで本当に親しい仲間たちとクルージングをすることが多いね。昔はツアー先のパークでデモをしたり、ビデオパートに取り組んだりする見せるスケートをしていたけど、今のオレにとってのスケートはプライベートなものだよ。でも、やはりスケートは今でも楽しい。

TH: それは、かつてエアブラシを使って精密なアートを手がけるアーティストが、年齢を重ねることによって徐々に水彩画に移行していくような感じなのかもしれませんね。僕の場合は、残りの人生の中でスケートボードに乗ることのできる時間が少なくなってきているような気がしています。だから、スケートをすることができる一回一回を大事にしたいと思うようになりましたね。

ST: キースと似ているけど、今は誰もいない朝の時間を狙って友だち2、3人と滑っています。昔のようには滑れないけど、今は今で楽しいです。年代によってスケートの楽しみ方も違ってくると思うし。スケートにはルールがないんで何をやってもいい。ただ自分を表現すればいいわけじゃないですか。今はスポンサーがなくなって若い頃のように無茶をしなくなったけど、最近になってまたフルパートを作りたくなったんですよ。実は昨年の7月から撮影を始めています。この歳になってスポンサーが欲しくなったワケじゃないんですけど、自分を表現したくなって……。あとは僕のブランド名がCHALLENGERなだけに、いつもチャレンジ精神を忘れずに生きたいと思っています。

V: では最後に、それぞれのブランドの今後の展望を聞かせてください。

KH: “スケーターをサポートする”というHUFのブランド立ち上げ当初からの目的を変わらず貫いて成長していくだけだよ。今はミュージシャンやアーティストもサポートして活動の幅を広げているけど、今でもスケートというコアな部分を一番大切にしている。スケートを軸に、他の大手のシューズブランドに匹敵するフットウェアブランドとして成長していくことが今後の展望だね。あとはCHALLENGERとのコラボを無事にリリースして、BOLDLINEとのコラボ第2弾も実現したいと思うよ。

ST: CHALLENGERはスタイルを変えずに、これからもさまざまなことにチャレンジして行くだけですね。“CAME UP FIRST! KEEP ON CHALLENGING!”という感じです。

TH: BOLDLINEについては、まずは今日を機にビジネスとクリエイティブを分ける環境作りから着手したいと思います(笑)。

 

キース・ハフナゲル
@keithhufnagel

オーリーをはじめとするスタイリッシュなスタンダードトリックを武器に活躍したREALの元プロスケーター。2002年にHUFを発足し、現在はスケートをベースにフットウェアを軸としたブランド展開を行っている。

田口 悟
@taguchisatoru_

長身から繰り出すバネとしなやかなスタイルで'90年代から'00年代に注目を集めたスケーター。現在はスケートにインスパイアされたアパレルブランド、CHALLENGERのデザイナーとして活動しながらパートを撮影中。

堀内俊哉
@toshiya_horiuchi

昨年20周年を迎えた7STARS DESIGNを主宰するクリエイティビティの代名詞的存在。こだわりのプロダクトラインを展開するブランドであるBOLDLINEを手がけ、これまでにCHALLENGERやHUFともコラボを行っている。

 

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