ここずっと新しい音楽に疎くなってしまっている自分ですが、欠かさず動向をチェックしているアーティストがいます。ターンテーブルを楽器のように操り、日本のHip-Hopを世界へと発信するパイオニアとして知られるDJ KRUSH。そんなDJ KRUSHが今月頭にニューアルバム『軌跡』をリリースしました。昨年まで11年もの間アルバムをリリースしていなかったのですが、本作『軌跡』は昨年の『Butterfly Effect』に続き2年連続のリリース。
DJ KRUSHは1992年にラッパーのMUROなどと組んでいたKRUSH POSSEというグループを解散してDJとしてのソロキャリアを開始し、アメリカナイズされたスタイルを敬遠しながら独自の道を模索。そして「Hip-Hop=ラップ」という既成概念を破壊し、ブレイクビーツだけでアルバムを制作するというスタイルで世界的注目を集めるように。'90年代半ばにMoWaxからリリースされた『Strictly Turntablized』がその最たる例です。さらには日本の伝統楽器などの音を採用しながら日本のアイデンティティをHip-Hopで表現。そうして世界的認知を得て以来、日本のHip-Hopを世界に発信するという意味で、RINOやTWIGY、BOSS THE MCやMC漢など、DJ KRUSHが手がけるアルバムには必ずと言っていいほど日本人アーティストがゲストに起用されてきました。自身が掴み取った知名度を活かして同胞を世界に発信する姿勢、そして日本人として世界を舞台に第一線で活躍する姿が個人的にたまりません。
「DJ × ラッパー」として活動していたKRUSH POSSEを解散してから25年後、少しずつ日本人アーティストを世界に発信し続けた時代を経てリリースした今作『軌跡』は、8名の日本人ラッパーをゲストに迎えるという、DJ KRUSHにとって初のラップアルバム。面子は、OMSB、チプルソ、R-指定、Meiso、呂布カルマ、RINO LATINA II、5lack、志人。それぞれのラッパーが、それぞれの「軌跡」をテーマにリリシズムを展開していきます。まさにソロキャリア25周年にふさわしい、原点回帰とも言える作品。
是非『軌跡』をレコード屋やiTunesなどでチェックしてみてください。本作の視聴はこちらのSoundcloudで可能になっています。ちなみに今年はもう1枚、インストオンリーのニューアルバムもリリースされるということなので、そちらも楽しみでなりません。
—MK
こちらは深夜の増上寺でのプレイ。重厚です。