歴史に残る名作にはそれなりのバックストーリーがあると思います。チャリティソング“ウィ・アー・ザ・ワールド”も然り。'85年にリリースされたこの曲は当時のスーパースターが一同に会し録音された奇跡の一曲。そしてその制作過程・録音風景をテーマにしたドキュメンタリーが『ポップスが最高に輝いた夜』。
世界の超有名アーティストを集めてひとつの作品を作るのが大変であることは想像に難くありません。録音が行われたのはアメリカンミュージックアワードという大きな音楽賞が終わった夜、しかもタイムリミットは翌朝。限られた時間のなかでリーダーを務めるライオネル・リッチーが抜群のバランス感覚で録音を進めていきます。ただしエゴだらけのスター相手ということで一筋縄ではいきません。待ち時間が長いと帰ってしまう歌手がいたりとみんなやりたい放題。参加アーティストの性格や人間性が次々とあらわになっていきます。
マイケル・ジャクソンはめちゃ真面目。シンディ・ローパーは想像通り自由奔放でおちゃめ。スティービー・ワンダーはまったく空気が読めない。そして極めつけはボブ・ディラン。かなりの大御所なのに居心地悪そうな面持ちで固まっています。ほとんど歌うことなく、しかめっ面で口を閉じて困惑している様子。しかもソロパートがあるのにどう歌っていいかわからず、周りから助言を受ける始末。
とにかく本作にはぶったまげました。超豪華なキャストの壮大なコントを観ているよう。そして優勝は転校生の如く固まるコミカルなボブ・ディラン。彼の苦悩の表情だけでも観る価値のある最高の一夜。めっちゃオススメです。
—MK