Interview by VHSMAG, Photos by Junpei Ishikawa, Special thanks: Element Japan
VHSMAG(以下V): まずアートを始めたきっかけから教えてください。
BB・バスティダス(以下B): ガキの頃から絵を描いていたけど、本格的にアートを始めたのは18歳の頃だった。仲間たちとスケートトリップでSFに行ったんだけど、そのときにステイしていた家に住んでいた連中はみんなアーティストやミュージシャンだった。そんな人たちを生で見たのは初めてだった。年齢の近い連中がアートを作っていたんだ。しかもオレの好きなタイプのアート。それにかなり影響された。地元のオーシャンサイドに戻ったらアートを始めようと思った。あのスケートトリップはかなりクレイジーだったけど。
V: どうクレイジーだったの?
B: 家にステイしていた連中の半分はさっき言ったアーティストだったんだけど、もう半分がギャングだったんだ。場所はオークランドでオレの仲間の兄弟がその家の住人だったからそこにステイしていたんだけど…ギャングたちが「ウィードの売人の家に強盗に入れ」と言い出したんだ。銃を持たされてね。当時はバカなガキだったから言われる通りにやろうと思っていた。でも実際に強盗をするとなると動揺してしまったんだ。結局、ギャングに銃を返して地元に帰ったんだけど、「ファック! あんなこと絶対にしたくない!」と思った。あんなバカな生き方じゃなくてアートを作りながらいい人生を送りたいと思ったんだ。
V: かなりクレイジーだね。ではスケートインダストリーにアートを提供するようになったきっかけは?
B: 当時はスケーターたちと家をシェアしていたから、いろんな連中が来て撮影をしていた。そしてボードグラフィックを頼まれるようになったんだ。ボードグラフィックを作った経験なんてなかったけど、ホーミーだから頼まれたんだよ。それがすべての始まり。初めて手がけたのはCrimsonのリッチー・ベルトンのシグネチャーモデルだった。その後はThink時代のリザード・キング。2009年頃だったと思う。Thinkのカタログにリザードのボードが載っていたんだけど、そこに“Art by BB”と書かれていた。うれしかったのを今でも覚えている。
V: では自身のアートのスタイルを形容するなら?
B: スタイルはつねに変化している。同じスタイルを2年ほど続けたとしても気がつけば違うスタイルにチャレンジしている。今は水彩画が多いかな。壁画ばかり描いていても、次の瞬間、グラフィックに専念していたり。それを続けていたら飽きちゃったり。そんな感じで変化している。
V: スケートインダストリーで手がけた作品で印象深いものは?
B: アーティストとしての転機は初めて手がけたボードグラフィック。だからそれがもちろん印象深いけど、Bakerのシリーズもオレにとって大きかった。ある日、(アンドリュー・)レイノルズから連絡があったんだ。レイノルズ、ジェイミー・トーマス、チャド・マスカが全盛の時代に育ったから、レイノルズから連絡が来てぶったまげたよ。でもその頃、借金取りに追われていたから…。
V: 借金取り? なんかスケッチーだね。
B: そうなんだ。レイノルズからの着信が知らない番号だったから「も…し…も…し…」ってお婆さんの真似をして電話に出た。借金取りかもしれないからね。すると「レイノルズだ。BB、ワッツアップ」って。びっくりしたね。それでボードシリーズを依頼されて、当時にしてはいいギャラをもらった。不況になる前だったからね。
V: では今回、アートショーでコラボをしたHirottonとの出会いは?
B: 最初にHirottonと会ったのはロンドンだった。当時の彼女がヤツの友人だったんだ。ショーディッチで壁画を描いていたらHirottonがやって来たんだよ。彼女から日本人のアーティストが会いに来るとは聞いていたけど、ヤツを見るとトレンチコートを着てクレイジーなパッチだらけのパンツを履いている…。正直、ヤツを初めて見たときは「なんだこいつ。狂っている」と思ったよ。
Hirotton(以下H): そうだね。一緒にスケートして酒を飲んだんだよね。そして、BBに「オーシャンサイドに来て一緒に壁画を描こう」って言われて、一緒にアートショーをやって壁画を描いたんだ。
V: では今回のコラボアートショー、Inner Visionはどういう経緯で実現したの?
H: BBに連絡して「日本で一緒にアートショーをやりたい」と言ったのがきっかけ。当時はFOSからHeroinのボードシリーズのオファーを受けていて、ちょうどBBもElementのボードシリーズを手がけていた。だから一緒にHeroinとElementのコラボアートショーができればいいね、ということになった。
V: 作品のコラボはいつ頃から着手したの?
B: プロジェクトが始動したのが7ヵ月ほど前かな? Hirottonのためのスペースを残してオレのアートを描き、そのキャンバスを日本に送って後はヤツに任せたという感じ。すべての作品がメイクセンスしていると思う。オレは全面的にHirottonを信頼している。だからヤツとの仕事はスムースだね。
V: 今回の来日はこのアートショーだけじゃなくElementのジャパンツアーだよね。ツアービデオのディレクションを務めることになったと聞いたけど?
B: ギャスパー・ノエの『エンター・ザ・ボイド』のような作品を作りたいと思っている。あの映画に影響を受けたんだ。普段とは違う見せ方でチームを記録する。フィルマーがチームを撮影しているところを撮ったり。通常はフィッシュアイでチームのスケーティングが記録されるけど、その舞台裏を見せたいんだ。チームの交流やスケート。今はほとんどのものが同じような感じになってしまっている。他とは違う、何か変わったことがしたいんだ。面白いことをするには他と違ったことをするしかない。このプロジェクトに惹かれたのはそこまで映像の経験がないから。だから難しいしユニークなんだ。アートショーやボードグラフィックは作業的に自分自身で完結できるから簡単だ。でも今回の映像プロジェクトはもっと奥深いんだよ。
V: この後は大阪に移動して撮影をするんだよね?
B: その通り。三角公園でOsaka Daggersとセッションする予定。
V: 楽しそうだね。では最後に、アーティストとしての目標は?
B: 映像制作にシフトしていきたい。オレが敬愛するアーティストはマイケル・ジャクソンとスタンリー・キューブリックなんだ。特にキューブリックは最高。仲間とBum Bagというブランドにもアートを提供する予定。また壁画も描きたいし、コラボもやっていきたい。でも。やっぱり今は映像が一番やりたいね。
南カリフォルニアを拠点にするアーティスト。活動の内容もファインアート、壁画、グラフィックデザイン、アートディレクションと多岐にわたる。これまでに数々のスケートカンパニーにボードグラフィックを提供。最近ではElementのInner Visionシリーズが記憶に新しい。
bbbastidas.com