SHAPED BOARD

 シェイプドボード、一般的にはオールドシェイプと呼ばれることの多いデッキに乗っている若きスケーターに一言物申す。「キミたち、最高!!!」。と言うのは、僕がスケートを始めた頃に抱えていたコンプレックスがあったから。初めてのコンプリートは10インチぐらいの板、それもノーズはほぼ無く四角いテールにキックがついたもの。ウィールは確か60mmぐらいだっけ、そして短いノーズの先端にガードと、レールバーも付いてたなぁ。なにもボーンズ・ブリゲード時代の話ではない。それは2000年の夏、7.5インチの板が主流だった時代である。そしてもちろん、中1の少年にまともなコンプリートデッキを組める経済力なんてあるはずもないので、その初めての板とは紛れもなくディスカウントストアなんかに売っている2〜3000円のポンコツデッキ。
 本物のスケボーが3万円くらいするのを知った上でそのポンコツ板を手にしたワケですが、晴れてスケーターとしてデビューしたことに変わりはありません。とりあえずひとりで乗る練習。そして少しずつ板に慣れてきた頃、スケートを誘ってくれた友達といざ会うと「なんでそんなヘンな板買ってんだ!」と笑われ、そこで初めて自分のデッキが古臭いものだと知ったのです。少し経って友人に連れてってもらったショップ、そこは空手着や軍モノのグッズが並ぶ中にスケートのコーナーもあるという謎な店だった。おそらくスケーターではなかろう店主のおじさんは僕の板を見て「まるで’80年代の板じゃねぇか、ハハッ」と。今考えると他意は無いのだろうが、そこで友人らにまた笑われ僕は恥ずかしさ大爆発! そこから数ヵ月間、そんな古臭いデッキでスケートするのはコンプレックスとの戦いであった。当時は確かに、オールドシェイプの板でスケートしてる人なんてアール好きのマニアックな少数派で、どんなスタイルで滑ろうがみんな似たようなセッティングだった。それもありオールドシェイプの板はあまり好きになれなかった。時が過ぎ、どんな板やセッティングでスケートしてようが変に見られることのない今、自分の過去のコンプレックスと現在のシーンへの羨望もあり、変な形の板に乗る若いスケーターたちに「最高!!」と賞賛した次第であります。
 そんなコンプレックスを抱いてスケートしていたあの頃から十数年が経ち、ひょんなきっかけがあり、また大ファンであるスケーターのひとり、ジェイソン・アダムスがその手の板でスケートしているのを見て僕もオールドシェイプの板に乗ることを決意。まぁ、オールドシェイプデッキの再燃に自分も乗っかってみただけの話なんだけど、古臭いとコンプレックスだった板に自らの意思で乗り、普通の板と同様に扱えるのは妙な快感でした。かくしてそれ以降はオールドシェイプの板に乗ることが多くなったというわけさ。ノーズとテールで不揃いな形は表情があるようで愛おしく、またそんな板をアールだけでなくストリートでも使いこなすスケーターを見るたび「萌え萌えキューン!」なのであります。
 余談ではありますが例の謎のお店で誕生日に買ってもらった、今は無きaestheticsのデッキが初めてのまともなデッキだったので、初めての板についての話になると僕はaestheticsだと言うことにしています(笑)。店主のおじさんよ、あなたの発言で僕は勝手にコンプレックスを抱えてしまったよ。いつの間にかお店は無くなってしまったけど、オレはいま変な板でスケートしているぜ! Peace!!

─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 

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