東銀座にある行きつけの小さなハンバーグ屋のトイレに入ると、見慣れないモノが目に飛び込んでくる。チャカ? ディルド? いやいや、目を凝らしてみるとパンパンに膨れ上がった有名ブランド物の長財布ではありませんか(しかも女物)。
男女兼用のトイレ内(狭くて臭う)には当然オレひとり。とりあえず中身を確認。免許証、保険証、クレジットカード、SMグッズ(ウソ)その他生活に必要であろうカード類がぎっしり。そこで気になるのは当然ジョニー・CA$H。銀座で有名ブランドモノ財布とくれば期待を裏切りません。福沢諭吉愚連隊が優雅にチルっているではあ〜りませんか〜。ひょっとしてトラップかもと勘ぐり盗撮されていないかトイレ内を見渡すも、怪しい仕込みは見当たらない。現金だけ頂戴して財布は放置 or ジェントルマンになって財布を店主に渡すか…。悪魔の囁きと良心とが綱引きを繰り返す。しかもオレの次にトイレに入るのは順番的に同行していた真●郎なので、やつなら迷わず前者を選択するはず。う〜ん、翌日から撮影で台湾へ行くタイミングだったのでこの現金があれば現地でポッポ〜できるけど、逆の立場だったらかなり凹む。迷った末、「忘れ物ありましたよ」と店主に手渡す。その善意は近々返ってくると信じて。
翌日から灼熱の台湾にて連日の撮影合宿。老体に鞭を打ちながらなんとか撮影をこなし、帰国の便をキャッチするためタクシーで空港へ。チェックインカウンターで手荷物を預けていると、何か足りないことに気がつく。あ、三脚がない(汗)。高価な三脚をタクシーにフォガットしたよ。うちはエンゲル係数が高いんだよ(あんちゃん)! 一同顔面蒼白して狼狽していると、見た顔のオジさんがノソっと何かを手渡す。えっ、ウソ、三脚? タクシーから降りて1時間弱経っているにも関わらずタクシーの運ちゃんがわざわざ届けに戻ってきてくれたってか!? 「謝謝×14」とお礼を伝えて500元のチップを渡して運ちゃんとグータッチ (原監督風)。
このウソのような絶妙なタイミングで三脚がオートマチックに手元に戻ったサプライズは、きっと長財布から繋がってるに違いない。タクシーの運ちゃんの優しさに感動を覚えたと同時に、タクシーの上で飛び跳ねたかつての愚行(自分)を呪ったのでありました。
─KE