推測するに、『愛の鉄砲玉』の試写会場は異様な雰囲気に包まれていたのではないだろうか。
というのも、自分は久々にスケート映像に引き込まれてしまったから。諸事情で東京プレミアに足を運べず、ようやくDVDをゲットしてソロ試写会を開催。「ポッポッポッォ〜」とはやる気持ちを抑えてプッシュPLAY。黒の入れ方、間のとり方とか完全に確信犯。でもってカラ吹かしからの座間ちゃん登場って掴みからハンパない。もうこの時点で完全に負け(観る側ね)。あとはノンストップで最後まで瞳孔開きまくりで全流しメイク。まさに十字架、じゃなくて画面に釘付けとはこのこと。おそらく試写会に行ったスケーターのみんなも同様の衝撃を受けたというか、騒ぐどころかハイピッチな展開に脳の情報処理能力がついていけず、ただただ物語に見入っていたのではと。今村昌平とか長谷川和彦作品から影響を受けたのかな、なんて場面も随所に見られ、昭和の邦画エッセンスが色濃く投影された異色スケートビデオ。
今作のメガホンをとったのは、TORIOTOKOこと東芝美津子監督。そもそも10年にも及ぶ撮影期間を経て、なぜこのタイミングでの発表なのか。飽和する模倣作とハイプ系ビデオへのアンサーなのか。スキットで挿入される意味深な画、そして異常ともいえる路地裏への執着心が問いかける先に何があるのか。その解釈はスケーター各々に委ねられるとして、まずはこの作品を観てもらいたい。できれば大勢でカラムーチョ片手に観るよりも、ひとり静かな環境で向き合っていただきたい。
30分弱が3分弱に感じられる、20年に1本の国産スケートビデオ。それっぽく見せているみなさまへ。「おまえはもう、死んでいる(ケンシロウ)」
─KE