自分は元々パンクやハードコアが好きで、スケートボードに出会い、のめり込みました。’84年頃まで、パンクシーンではいかにもパンクっぽい鋲付きライダースにブラックスリム、ブーツという格好をしてライブやショップに行くのが当たり前でした。当時はTシャツにショーツ姿のスケーターがパンクのギグに来るのはタブーな雰囲気。Thrasherの名物編集長ジェイク・フェルプスが「SFのパンクとスケーターは昔よく小競り合いをしていた」という内容の話をしていたのを聞いたことがあります。
「クロスオーバーカルチャー」という言葉を今は誰も使わなくなりましたが、自分がスケートボードを始めた’80年代中盤頃、南カルフォルニアを中心にさまざまなシーンが入り交じったカルチャーが生まれ、その流れは世界中に飛び火しました。「パンクがスケートボードと繋がり、スケーターがHip-Hopと繋がり、グラフィティアートがハードコアパンクと繋がる」といったように、カルチャーの連鎖が急激に進みました。代表的な例を挙げるとギャングスタイルでスケートボードに乗りパンクサウンド(当時のスラッシュ)を演奏するSuicidal Tendenciesや、それを取り巻くヴェニスビーチ発のカルチャー(スケート、サーフ、グラフィティ、ギャング、チョッパーなどが入り交じっていた)はクロスオーバーの代表例だと言えるでしょう。
好きなバンドがスケートボードに近いスタンスだったことがきっかけで、スケートボードにどんどん傾倒していきました。今もそうですが、スケートボードがきっかけでそれまで出会うことがなかったシーンの人たちと繋がることができました。他のシーンの人たちも刺激を求めて惹かれ合う感覚があったので繋がっていったのだと思います。
そして’80年代後半(’87年頃)にはクロスオーバーカルチャーの波に乗ってスケートボードブームが押し寄せました。当時の日本はカルチャーのクロスオーバーが当たり前ではなかったこともあり、Thrasherが掲げていたSkate Rockの打ち出しをそのまま真似する風潮がありました。バンドやスカル柄のTシャツにショーツを合わせるスタイルは当時珍しかったようで多くの雑誌に取り上げられ、スケートボードを持っていれば街中で「スラッシャー」と呼ばれることもありました。特にハードコアファンでもなければ、ポップスを好んで聴くような人もそのような格好をしていました。当時スケートボードがブームになった背景にはクロスオーバーカルチャーがあったのだと思います。
今はスケートボードも音楽もアートもジャンルレスが当たり前で、あえてクロスオーバーという言葉は使わなくなりました。好きな音楽がジャムバンドとハードコアパンクのストリートスケーターがいても、スケートボードが大好きなラッパーがパートを作ることに違和感を覚える人も今は少ないと思います。誰もがインターネット経由でさまざまな情報を得ることができるこの時代。勤勉でクールな若者がさらに知識を得て、独自の進化を遂げて驚かせてほしいと期待しています。
PUSHEAD
国際的なアーティストとして知られるPUSHEAD。独自のスタイルで描くスカルモチーフのアートワークが特徴で、世界各地にフォロワーが存在します。スケートボーダー、ハードコアパンクバンドのシンガーとしての顔を持ち、’80年代にThrasherやZorlacに提供した数々のアートワークはあまりにも有名。アートを通じて多ジャンルへのクロスオーバーを牽引した代表的なアーティスト。写真の作品は某氏所有の原画(!!)で、日本のあるレジェンドハードコアバンドのアルバムカバーになる予定だったものだとか!?
EXCEL JAPAN TOUR 2018
Dogtownが盛り上がる’80年代、Suicidal Tendenciesの他にもヴェニス出身でスケートボードにより近いスタンスでオーラを発するバンドがいました。世界中に根強いファンを持つExcelは当時Thrasherに頻繁に登場していた人気のクロスオーバーハードコアバンド。サウンドはもちろん猛烈にかっこいいのですが、Santa Monica Airlinesで製造したExcel Skatesというデッキをリリースしていたり、ベーシストのショーンの父親がZ-BoysだったりとSkate Rockを地で行くバンド。クロスオーバーカルチャーを語る上で欠かせないアーティストがアートワークを提供していたりもします。そんなクロスオーバーカルチャーの代表格のバンドが何と12月に来日します。しかも東京公演はスケートボードとライブが楽しめるSkate Rockイベント。
FALL OUT
シアトルに存在したレコードとスケートボードのお店、Fall OutのステッカーとThrasher(1987年11月号)に掲載されていた広告。同じ頃、下北沢にViolent Grindというレコード、カセットテープなどの音源とパンクやハードコアにスタンスの近いスケートブランド(Skull Skates、Zorlacなど)を取り扱うお店がありました。この広告にはシアトルきってのスラッシュバンド、Accusedのメンバーが登場。このステッカーは当時見たことがありませんでしたが、某スケートボードサイト編集の方が当時Fall Outに出入りしていたとお聞きして強引に頂いた貴重な画像です。あまりにもかっこいいのでブートステッカーを製作する予定です。
SKULL SKATES 40TH ANNIVERSARY PARTY, LIVE SHOW AND SKATE VANCOUVER
バンドのオフィシャルデッキをリリースしたスケートカンパニーでまず名前が挙がるのがZorlacやSkull Skatesでしょう。Skull Skatesは今や世界的なビックバンドになったRed Hot Chili PeppersのデッキやGang Green、Social Distortionなどのデッキをリリースしていることでも有名です。Skull Skatesは日本での運営があり、BrahmanやKemuriら日本のバンドのデッキもリリースしています。そんな音楽シーンにスタンスの近いスケートカンパニーが何と40周年(!)を迎え、地元バンクーバーで記念イベントを開催。我が道をいくSkull Skatesらしく日本から現代のクロスオーバーバンドの代表格Dub 4 Reasonをメインアクトに迎え、鉄屑アーティストのJunklawさんがこのイベントのために制作した作品を展示するという、独自のスタンスを崩すことなく現代風に進化したSkate Rockイベント。
URBAN DANCE SQUAD “DEEPER SHADE OF SOUL” 1989
リリース時にはMTVで頻繁に流れていた、まさにクロスオーバーを感じさせる特徴のあるサウンドスタイルのUrban Dance Squad。当時スケートボードをしていた人はこの「Suprise, Suprise〜」という歌い出しをほぼ知っていると思います。PVも有名どころのプールライディングが楽しめるいい仕上がり。
KRIMEWATCH “DREAM OF PEACE, CRYBABY”
ニューヨーク出身の新鋭ハードコアバンド。明らかに’80年代のジャパニーズハードコアパンクに影響を受けたサウンドスタイルで演奏。歌詞も日本語を多用していてとても興味深いバンド。