Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
YOSHIHIRO “DESHI” OHMOTO

弟子の愛称で慕わられ、carharttのグローバルライダーとして活躍する大本芳大。 旅とドトールと読書をこよなく愛する吟遊詩人。 “我以外はすべて師匠なり”が座右の銘。

第17回:クエスチョン

 スケートしているときはもちろんのこと、普段スケートなしで遊ぶときも、スケーターと行動している。今は地元で暮らしていないので、中学や高校の友達には本当にごくたまにしか会う機会がない。スケーター以外の友達も数えられるくらいしかいない。つまり、仕事場の同僚や家族と接する以外は、スケーター仲間となにかしら馬鹿騒ぎしている時が圧倒的に多いわけである。

 とはいっても、日々日常の中で、ふっとスケーター以外の人たちと出会うことも当然ある。

 そんな時「普段は何をしているんですか?」というような会話になる。

 僕自身も相手がどんな人なのか知るためにも、まず放つ質問である。この質問は、お互いに自己紹介のスタートを意味する。

 こんな時、僕は正直に自分がスケーターであることを相手に伝える。

 「普段はスケートボードをしています。かれこれ15年くらいやってます。あの、木の板にローラーがついてるヤツです。雪の上で滑るやつじゃないですよ」

 そう伝えると、だいたい相手は興味を持ってくれる。

 「へぇ~すごいですね。あれ恐くないですか? 僕も(私も)昔ちょっとだけ乗ったことあるんですよ~。でも、思いきりお尻からコケて、かなり痛かったです! もう死ぬかと思いました! えへへ…」ってな感じにだいたいなる。で、その後相手から、かなり高確率で聞かれる質問がふたつある。10人中7~8人くらいは必ず聞いてくる。

 まずひとつ目。「じゃあ大会とか出るんですか?」である。

 これはもうほぼ確実に聞かれる。なぜかわからないが必ず聞かれる。しかし、僕は大会にはほとんど出たことがない。しかも、最後に出た大会は、もう6~7年も前のこと。だから、「大会とかは普段出ないですね」と正直に答える。すると相手は、一瞬トーンが下がり、「あっ…そうなんですか?」となる。きっと僕が「はい。毎月全国の大会に出てますよ。来月は結構でかい大会があるんですよ。頑張ります。押忍!」となり、「えぇ! そうなんですか。すごいですね。優勝とかもしたことあるんですか?』ってなふうに、話が徐々に膨らんでいくのを期待してくれてるのだろう。だが、そんなことにはならない。申し訳ないが、相手はこの時点で期待がハズれ、少し戸惑ってしまう。

 そして、次に聞かれること。

 「じゃあ、階段の手すりとかで、ガーッってやったりするんですか?」

 必ずといっていいほどこの質問もされる。ただ、やっぱりこの質問に対しても相手の期待に応えることはできない。

 「あっ、それならやりますよ」

 「うっそ! すごいですね! なんかテレビとかでちょっと見たことあるけど、本当にああいうことするんですね。見てみたい」とはならない。

 僕は普段ハンドレールはやらない。やらないというかできない。怖いもん…コケたらいたそうだし…。

 「いや~。僕はそういうのできないんです…。できればやりたいんですけど…」

 「あっ…そうなんですか…」

 こうなるといい加減相手も困った様子を隠しきれなくなる。

 「こいつ本当にスケボーしてんのか? 口だけか? じゃあちょっと説明してよ」。そんな表情があからさまに見える。

 しかし、そんな表情されても、僕から「普段どんなところで、どんなふうにスケボーしているか」を説明することはない。

 だって、僕がいかに天然Rや街なかにある変わったオブジェが好きなこと、またスラッピーやウォール、ノーコンやハンドプラントやフットプラントなどなど、話たらキリがないが、それらのことをスケートをあまり知らない人に対して、イチから丁寧に説明し、ちゃんと相手に理解してもらえる会話のスキルと気力が僕にはない。

 しかも、もしかりに相手にしっかりとそれらを説明できたとしても、きっと相手は「で、それのどこが楽しいの? まじキモい…」と思われるだけだろう。

 これらふたつの質問をされて、話が盛り上がったためしがない。とほほ。

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