アルコールはおそらく人類文明の発祥と同時期に、同じ場所で出現したに違いない。以来、世界中で2足歩行の類人猿が、酩酊しファックアップする方法を死に物狂いで求め続けてきた。我々人間は、植物や生物から抽出された物質を吸引したり、飲み込んだり、舐めたりすることで長時間起きていたり、逆に睡眠をとったり、活動を向上させたり、集中したり、心を満たしたり、スピリチュアルな悟りを開いたりするわけだ。
世界中で娯楽として手っ取り早く摂取されているのは、カフェイン、アルコールやニコチンだ。カフェインが眠気を覚まし、アルコールが抑止力を低下させ暴力的な愚か者へと変身させ、ニコチンが限られた人間を豊かにしていることは誰でも知っている。ドラッグの使用がもたらす弊害は、それがもたらす良い影響よりも大きいものだ。しかし我々人間は、空腹を満たし喉の渇きを癒すのと同じように、(ほぼ間違いなく)酩酊を求める見えない力に支配されているようだ。
中央アジアに旅立つ前、僕は“NASZAY”と呼ばれるドラッグの存在を知った。これは西欧では誰も聞いたことがないドラッグであり、パソコンに搭載されたスペルチェッカーも反応しない代物だ。製法はさまざまだが、一般的なNASVAYは鶏の糞をタバコとライムと混ぜ合わせ、ときには少々アヘンを加えることもあるそうだ。以上を巻き合わせ、頬と歯茎の間に挟んで摂取する。要は臭く深緑色をした混合物に含まれたライムと糞が口内の酸性度を抑え、ニコチンをはじめとする物質が直接的に粘膜を通して血液中に吸収されるわけだ。うーん、おいしそう!
NASVAYの驚くべき点は、違法とされ国際的ドラッグのリストに追加されるどころか、中央アジアのタクシードライバーにとっては、アメリカの子どもにとってのコカ・コーラと同様にポピュラーなものであるということ。彼らは食事や家族よりもNASVAYを愛しているのだ。どこのマーケットでも手軽に入手することができ、パン1斤よりも低価格。そのためタクシードライバーは、24時間ぶっ続けでこの鶏のクソでできたドラッグを摂取している。
うだるように熱いある日、ウズベキスタンの国境に向かうキリギスタンの砂漠道を走っていると、ドライバーから悪名高きNASVAYを初めて(そして人生で最後)勧められた。NASVAYがもたらした作用はとてつもなかった。まず口の中に強烈な苦味が広がり、身体が自然と口内に入れられた毒を洗い流そうとする。すると次の瞬間、目眩に襲われる。それはまるで、30秒でウォッカを半ボトル空けたような感覚。そして最終的に胃がむかつき、吐き気、そして下痢に襲われる。これらの作用を知ってしまうと、NASVAYを摂取しているドライバーが高速で車を飛ばしていることに強烈な不安を覚えてしまう。
翌日はウズベキスタンの古都、サマルカンドのモスクの前で蛍光オレンジのゲロをぶちまける始末。さらには1週間まるまる身体が機能不全となり、その症状は連鎖反応を起こして旅に同行したメンバー全員がひとりずつ下痢に襲われ全滅。まさに下痢祭りだ。一日中続く砂漠道のドライブは楽しかったね(笑)……みんなゴメン! すべては鶏クソ麻薬のせいなんだ。