Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
LAURENCE KEEFE

エンゲル係数高すぎスネークスタイルで、世界の秘境をスケボー片手に渡り歩くザ・トラベラー。合言葉は「旅の恥はかき捨て」。
ローレンス流、地球の歩き方。

第8回:KANSAI BANZAI

 今回のツアーのスケジュールが決定したとき、正直言うと、少々心配になったのは事実だ。共通点の少ないスケーター3人(コンテストを総ナメにする16歳の瀬尻 稜、東京でもっとも汗っかきのストリートラット金子次郎、そしてただの白人のオレ)で関西ツアーを敢行する。与えられた期間はわずか5日間、しかも天気予報は雨。VHSMAG並びに、ご協力していただいたスポンサーさんたちを失望させてはならない。さらにはスケートの未来を変えるべく活動を続けるライアン・シェクラーとの撮影の合間を縫って、名フィルマーのパトリック・ウォールナーまで上海から本ツアーのために来日。どうやら雨に晒されていないレッジやバンクを、大阪駅付近であてもなく探すはめになりそうだ。ヤバい。

 しかし、深夜バスで大阪に到着した初日にその心配は吹っ飛んだ。なんと、初日にオレたち3人だけで18カットもフッテージを量産したのだ。得てしてツアーの初日は、心身ともどもエネルギーに満ちているものだ。しかし、その調子の良い初日も、京都から合流したイーちゃん(飯田明弘、ガイドでありサポートメンバーとなるはずだった)の肛門がレッジで裂けてしまったことで幕が下りた。肛門破壊! こんな話、聞いたことがあるか? ヤバいぜ。これは過去に見たことがないほど酷い光景だった…。イーちゃんは血まみれになったジーンズのまま、すぐさまタクシーで病院へと向かった。イーちゃん、早く良くなってくれ!

 パトリックにとって、このツアーは日本を体験する短期集中コースのようなものだった。日本が誇るサラリーマンの“よく働きよく遊ぶ”というメンタリティに忠実に、大阪のナイトライフを満喫するように心がけたのだ(もちろん、未成年をベッドに寝かしつけてから)。「チョットマッテ。チョットマッテ」という日本語を習得したパトリックは、このフレーズを居酒屋やバーの女の子に向かって呪文のように唱えている。テーブルの下ではパトリックの手がタコの足のように女の子へと伸びている。宿泊先ホテルのロビーに設置されていたビールの自動販売機もクセモノだった。夜が明けた8AMに、オレたちは与えられた食費でビールを購入し、パトリックとこれまでに訪れた第三国での体験を振り返り、永遠と語り合う始末。しかし、どうにか与えられた短い期間でも、次郎のがんばりと瀬尻の天才的なレールテクニックのおかげもあり、オレたちは行く先々でフッテージを量産することができた。

 とあるギャップ・トゥ・バンクのスポットでミスをし、レッジに忍者キックを食らわせたところでオレの関西ツアーは終わった。足の親指を見ると、曲がってはいけない方向にしっかりと曲がっている。すぐさま病院で診てもらうと、脱臼しているとのことだった…。最低でも1ヵ月はスケートができない。ヨッシャ! その翌日はオレの誕生日だったので、オレたちはボーリングを楽しむことにした(オレは観戦するしかできなかったが)。でも、怪我のおかげで大阪のゲトーな地区を体験することができたし、妙なコスプレが目に付く赤線地帯のストリートで酒を飲むこともできた。

 2日間連続で雨に打たれ2名の負傷者が出てしまったが、関西ツアーは楽しく大成功に終わった。TBPRのオグ、カズ、ダル、イーちゃん、トシ、パトリック、稜、次郎、VHSMAGのみんな、協力していただいたスポンサーのみなさん。本当にありがとうございました。おかわりちょうだい!


[RIDE ON] KANSAI BANZAI 関西万歳

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