Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
HIROYUKI WAKABAYASHI

Possessed SHOE. CO 代表。1969年生まれ。
極上のスケートセッションをこよなく愛す自称Skate Rat。
SKATEBOARDING IS PUNK ROCK!

第1回:POSSESEED TO SKATE

 私は46歳のおじさんです。人生多くの時間をスケートボードに費やしてきています。スケートボードにのめり込み始めたのが16歳の時だったので、気付けば30年程続けています。自分の時間を優先的にスケートボードに充てる自分を、家族は「本当に好きなんだ」という理解で快く送り出してくれるのですが、時折あまり気が進まない時にも、使命感的な思いでスケートボードに出掛けて行く自分に疑問を感じ「滑りたくない時に滑る必要は無いのになぜ自分は滑りに行くのだろう? なぜ今もスケートボードを続けているだろう?」と、ふと疑問に思い理由を考えてみました。

 遡れば中学生でパンクに開眼し、高校生で完全にハードコアパンクに傾倒していました。その頃に出会ったハードコアパンクと深い関わりを持っていた当時のアメリカのスケートシーンにはかなり度肝を抜かれたものでした。スケートボードには小学生の頃に一度出会っていて、当時強くアメリカンカルチャーを感じたのですが、父親に買ってもらった板は埃をかぶってしまったのでした。しかし高校生の時に再び出会ったスケートボードはまったくもって別のカルチャーに感じ、パンクの格好(鋲ジャンとかトロージャン……いわゆるモヒカン)をしたスケーターがパーキングビルをダウンヒルしたり黄色い縁石にスラッピーグラインドしたり、バンクでボーンレスしたり、チェック柄のショーツにTシャツのいかにもなスケーターがパンクバンドのギグでステージに上がってスラムダンスからダイブする姿など、ラディカルとしか形容できないスケートパンクスタイルを当時少ない画像や映像で観て、かなりの衝撃を受けたものでした。そして当時アメリカンハードコアパンクにどっぷり浸かっていた自分は「スケートボードをしなければ本当のパンクではない」とスケートボードにのめり込んでいったのです。もちろん、それは当時のスケートシーンのほんの一部だったのですが、思い込みの激しい自分は当時から今に至るまで自動的に自分自身に“Skateboarding is Punk Rock”の図式をすり込んできたのでしょう。それが入り口で、今に至るまで自分の好みに変化が無かったのでスケートボードを続けてきたのだと思います。スケートボードを続けてきた理由は、パンクの持つFYA(Fuck You Attitude)が今も自分自身の根底にあってスケートボードにも同じ側面があり、自分の性に良く合っているから今もスケートボードを続けているのだという結論に至ったのです。

 しかし自分も含めおじさんスケーター仲間は、普段の生活の中で定期的に滑るための時間をかなり優先しているように思えます。この歳になると家庭や仕事の事情があったり、なかなか定期的にスケートボードを続けるのが難しく、生活の優先順位の上位にスケートボードを置く必要があるので、自分のスケートボードに対する原動力は「単純に好きだから」だけではないのではと思えてきたのです。スケーターなら誰しも覚えがあると思うのですが、スケートボードにのめり込み始めた頃に、1日の使える時間のすべてをスケートボードに使っていたことがありませんでしたか? スケートボードを持って出掛け、帰宅するのは翌日の朝などという経験は一度や二度ではなかったのではないでしょうか。今も滑る予定の日に何か急用ができてしまっても、なんとか都合をつけてスケートボーディングにありつくなんてことは自分と同じおじさんスケーターは経験があると思います。例えばスケートボードで踵を痛めていて歩くことも満足にできない状態で「プッシュはできないけどプッシュする必要のないボウルなら滑ることができる!」と言ってコンクリートボウルに滑りに来ていた40オーバーのスケートメイトがいました。冷静に考えれば40歳過ぎた、家族もあり社会人としてもきちんとした人が、趣味のために翌日仕事に行けなくなる可能性もあるにもかかわらず、スケートボードに出掛けてしまう。私自身も数年前にスケートボードで骨折、2週間程入院して家族や勤務先に迷惑を掛けた経験もあるのですが、完治後は以前と変わらず滑り続けています。そう考えると「長い間スケートボードから離れない人たち、また一時期離れていてもまた戻ってきている人たちはカルト的な気持ちでスケートボードにのめり込んでいるのではないのか」という結論に達しました。その気持ちがどこから来るのかは人それぞれだと思いますが「スケートボードに取り憑かれてしまっている」ということではないでしょうか? 強烈なスラムを繰り返すも何度も立ち上がる若い世代のスケーターももちろんスケートボードに取り憑かれていると思うのだけど、当時は何となくスケートボード大好き的な爽やか系憑依なのかなと勝手に思ったりします。オジさん世代はドロドロ系のオカルト的な憑依です。加齢により思うように動かない身体でもがき苦しむような…。まあスケートボードを軽視しない限り、取り殺されることはないとは思いますが、きっと身体の動くうちはこの憑依から解放されることがないんだろうなと思います。

 


Thrasherが’80年代後半にリリースしたスケートロックビデオ『A Blast From the Past and Present』から’80年代のThrasherを中心にSkate & Destroyライフスタイルで活躍していたフォトグラファー、Mörizen Föche aka “Mofo”率いるDrunk Injunsのライブ映像。ゴンズの若い頃のスケーティングも楽しめます。

 


説明不要、Suicidal TendenciesのPVです。まさにこのコラムのタイトル的な曲です。豪華な80’s Venice Super Stars全員集合です。

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