世界には数多くのスケートボードブランドが存在します。ブランドごとにさまざまなスタイルを打ち出していて、個性の強いスケートボードブランドもたくさんあり、動向をチェックするだけでも飽きることはありません。今も昔もスケートボードシーンは音楽のシーンと深く関わりがあります。大物バンドのメンバーがスケーターだったり、’70年代からプロスケーターとして活動を続ける、デュエイン・ピータースがシンガーソングライターとしてU.S. Bombsで長年ミュージシャンとして活動してきたことも有名な話です。今もバンド活動をしている有名プロスケーターもたくさんいます。自分は音楽がきっかけでスケートボードにのめり込んだので、音楽シーン、特にパンク、ハードコアと繋がりの深いスケートボードシーンやブランドが好きです。
自分がスケートボードに夢中になり始めた’80年代はハードコアバンドやスケートパンクと結びつきがあり、バンドのシグネチャーデッキをリリースするスケートボードブランドが多く存在していました。最近でも国内外でバンドのシグネチャーデッキをリリースするブランドもあります。
当時のスケートボードブランドの中でも特に記憶に残っているのは、Concrete Jungle、Skull Skates、Zorlacなどで、特にサンフランシスコのConcrete Jungleは今では活動はしていませんが、当時DRI(注 1)の板をリリースしていたり、MDC(注 2)とも関わりがある伝説のサンフランシスコ発のスケートボードブランド(母体はスケートショップ)でかなり強烈に思い出に残っています。詳細はわかりませんが、当時のブランド広告にサンフランシスコを代表するスケーターを多く起用していました。TGやミッキー・レイズ、ダニー・サージェントなど、当時スポンサーもあり各ブランドの看板ライダーとして活躍していた彼らを広告に登場させていたのは謎であり、すごいことでもあると思っています。’80年代当時にこのブランドよりリリースされていたBoard To Deathというモデルのグラフィックが強烈に格好良く、当時喉から手が出る程欲しかったのですが、流通も今のように良くない時代で、サンフランシスコから遠く離れた日本で暮らしていた自分には残念ながら入手することはできませんでした。そんなBoard To Deathの現代版ともいえるモデルが2年程前にAnti Heroからリリースされたのを知り、即入手しました。SFローカルシーンの結びつきを感じ、20年以上の時を経た出来事だったのでとても嬉しかったです。
Skull Skatesはカナダの現役の大御所スケートブランドで、レジェンドライダーが多く在籍したことでも有名です。特殊なシェイプで今となっては伝説のクリスチャン・ホソイのハンマーヘッドモデルもSkull Skatesからリリースされてました。バンド系の板も’80年代にリリースされたBudweiserのロゴをあしらったGang Green(注 3)の板はバンドのシグネチャーモデルの代表格です。今もさまざまなバンドの板をリリースしていて、現在も活動を続けるカナダのハードコア・レジェンドSNFUの板も継続してリリースしています。特筆すべきは、Skull SkatesはSkull Skates Japan独自でもバンド系の板をリリースしていて、Dub 4 Reason(岐阜のハードコアバンドStab 4 Reasonのオリジナルメンバーが在籍するDubバンド)やスカ・コアで有名なKemuriの板などもリリースしており、日本独自の活動もとても興味深いです。
ZorlacはShut Up And SkateやF-uck You、 We’re From Texas.のスローガンで名高い老舗スケートブランドです。何と言ってもこのブランドは’80年代にグラフィックデザイナーとしてPushead(注 4)を起用した伝説のブランドで、Pusheadが点で描くグラフィックは他のブランドのグラフィックとは逸脱した世界観で異彩を放っていました。PusheadのグラフィックでMetallicaの板なんかもリリースしていました。当時のテキサスは髪をドレッドロックスにしてハードコアパンクを聴くスタイルのスケーターがたくさんいたようです。Zorlacを代表するライダーにジョン“テックス”ギブソンとクレイグ・ジョンソンという個性的なスケーターがいましたが、クレイグ・ジョンソンの風貌はまさにテキサススタイル全開です。
ここ数年、アメリカのスケート業界では数多くのスモールスケートブランドがひとつの流行のような形で世に出てきました。自分が育った’80年代もたくさんのスモールスケートブランドが存在していましたが、当時はまだ現在のようにスケートボードのスタイルが確立されていなかったり、個性的な打ち出しをするブランドが多かったこともあり、実験的な試みをするブランドが数多くありました。もちろんクオリティもさまざまでしたが、シーンとしても大変面白かったです。現在はプロダクトの生産背景も安定し、多くのスモールブランドの品質が底上げされ、どこも安定した品質のプロダクトをリリースしています。自分は個性的なプロダクトを作るスモールブランドが好きです。これからは自由な発想でプロダクトを考案して、小回りの利くスモールスケートブランドがどんどん楽しいアイテムを作りリリースしていって欲しいなと思っています。
注 1 現在も活動しているThrashやCross Over Punkを当時世に知らしめた代表的なバンド。D.R.IはDirty Rotten Imbecilesの略。
注 2 ポリティカルメッセージも強く打ち出す現在も活動しているハードコアバンド。M.D.CはMillions Dead Cops(他の略もあり)の略。
注 3 ボストン出身のスケートパンクバンド。彼らの代表曲“Skate To Hell”はスケーターなら1度は聴いたことがあるくらい有名な曲。
注 4 独特の世界観で描くイラストレーションは世界的に影響力があります。アイダホ州出身のハードコアバンドSeptic Deathのシンガー、自らPusmortというレーベルも運営していた。
DIYな作りが渋いMDCのウェブサイト。Fog Town、Concrete Jungleの広告やそれにまつわる写真の充実ぶりがすごい。
http://www.mdc-punk.com
詳細は不明ですが、レコードレーベルも運営しているBat Skatesというカンパニーは渋めのバンドのスケートボードをリリースしています。Fear、Crypic Slaughter、Final Conflictなどの板は自分も欲しいです。
http://www.batskates.com
のちにAlva Skatesにテックスとともに移籍したクレイグ・ジョンソンのZorlac時代の滑りです。テキサススタイル全開です。
大御所スケートパンクバンドJFAがリリースしていたJFA Skateboardsの広告。特徴のあるシェイプの板をリリースしていました。広告の女の子のスケートパンクスタイルは当時かなり印象的でした。
スケートパンクの話題には外せないDog Town Skatesの広告。Suicidal Tendenciesのグラフィック、広告自体から漂う独特の危険な匂いに当時やられていました。