Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
KENJI TANAKA

酒盛りとセメント盛りがDNA配列に組み込まれたSK8スカム。
酩酊状態がシラフよりも長い、西●敏行ちょい似のお茶目さん。
必殺技のクレイルスライドは、最近お腹が邪魔して切れ味悪め。

第9回:復活

 お久しぶりです。最後の寄稿から1年以上経ってしまいました。一体何をやっていたのか? たくさんありすぎるんですが、時系列でダラダラと書いてみます。コラムというより思い出話になってしまいますが、面白いことがたくさんあったのでおヒマな方は読んでみてくださいませ。

 まず最後の寄稿であった白畑公園破壊の件から続けます。健闘むなしく、つくば市に破壊されて悲しみに沈むオレたちにさらなる悲報が飛び込んできました。茨城県南の龍ヶ崎市にあるスケートパークAxisが土地の持ち主から突然の退去を命じられたのです。何でも地主が今までAxisに貸していた土地に家を建てるとのこと。借りている土地なのでやむなく退去しましたが、このままでは県南地域の面白いパークをふたつ失ってしまうことになります。
 さて、どうしたもんかと悩んだ末にたどり着いた答えは「新たにパークを作る」こと。Axisのオーナーである木村さんは建設業をやっているために広い資材置き場をつくば市に持っていたのです。しかもオレの家から車で10分。もしこの土地にパークを作ればガソリン代も軽減、時間も短縮、さらに龍ヶ崎よりも広い土地なのでパークもパワーアップ。パークを作るには材料費、人件費などなかなかのお金がかかります。そこで費用を数名の人間と会社で分担することにしました。Axis木村さん、オレの当時の勤務先であったAdvance、オレと近所の仲間数名で金を集めることに成功。ではどう作るか?
 オレと仲間は以前から低クオリティなDIYをいくつかの場所に作ったことはあるものの、お客さんからお金をいただいて運営するパークとしてのクオリティはなし。そんな時に偶然連絡していたBassturdのライ・クランシーが、友達のパークビルダーの手伝いをしていると言うではありませんか。これは奇跡。しかもその友達は以前オーシャンサイドでスケボーしたことがあるヤツではありませんか。
 こうなったらこいつら呼んで手伝ってもらうしかない。連絡してみたらあっさり承諾。旧Axisが取り壊されてから約1ヵ月ほどで新Axisの建設のためにヤツらがやってきました。アメリカからの救世主たち4名はオレの家に約1ヵ月の滞在予定。毎日泥まみれ、コンクリートまみれの臭いアメリカ人とフルタイムボランティアの橋本シュンとオレ、渡辺ユウジと遠方からの助っ人数名と近所のボランティアが約40日間ほぼ無休で作業しました。元々の予定だった30日は、いくつかのトラブルに見舞われ10日間延長したものの、計40日であれだけのパークが作れたことには驚きました。しかも完成直後にはBassturdのデモも行われ最高レベルのパークの使い方まで見せてもらえました。

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 おかげさまでパークが完成してから、近所だけでなく遠方からのスケーターも後を絶ちません。昨年秋から取り組んだバートランプも今年2月には完成。このバートもつくばから来てくれた某ボランティア氏の全面的協力により素晴らしいものができあがりました。

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 2月にはストリートにあり取り壊し予定だった鉄のラウンドベンチをパークへ移設。いろんな人間が繋がり、情報を共有し、それを新しい形に変化させていく。スケボーをやること自体の面白さと、それを取り巻く人の繋がり、そういうものまで含めてこそ本当のスケボーの面白さを感じることが度々ありました。

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 パーク建設時はフルタイムのボランティア(無給)だった橋本シュンは、パーク完成後、すぐに渡米。1ヵ月の修行を経て、帰国後Axis社長が経営する建設会社に無事就職。オレの方はというと、8月に16年勤めたAdvanceを退社。今は自宅の物置小屋で小さな代理店を営んでおりますが、いかんせんマニアックなスモールブランドばかりなので、かつてのようには忙しくもなく、それはつまり収入も激減。しかし畑で作物を育て、友達が作ってくれたニワトリ小屋で暮らすメス鶏たちが産んでくれる卵のおかげで何とか生きております。金はなくても時間がある。その時間のおかげでほぼ毎日スケボーすることができております。

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 スケボー万歳。社会の歯車から外れてしまったような俺を代理店として選んでくれたBlack Label、Blood Wizard、Confusion、Consolidated、Death、Freedumb、Lowcard、Skeleton Keyと、彼らのデッキや服を取り扱ってくれる全国のリアルなスケーターが経営するスケートショップ、そしてそこで買ってくれるお客さんたちに感謝。はたから見たらかなりスケッチーな生き方かもしれませんが、こんなオレを応援してくれる彼女、家族、友達、そして古巣のAdvanceにも感謝。この文章を掲載してくれるVHSにも感謝。

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 次回のコラムはまた来年くらいになるかもしれませんが、気長にお付合いくださいませ。ところで少し前にInstagramを始めてみましたので、よかったらチェックしてください。@kenjitanaka77

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