Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
HIROKI MURAOKA

現在もっとも乗れている日本人スケーターのひとり。スケートのスキルに加え、ペインターとしても非凡な才能を持つ。

第23回:BEN GORE × HIROKI MURAOKA COLLABORATION ZINE

 2年程前にサンフランシスコを訪れた時のこと。僕はMagentaのレオ・ヴァルスと連絡を取り合い一緒に滑る約束をしていた。自分が待ち合わせ場所に着いた時にはすでに撮影はスタートしている。その時、僕はひとりのスケーターが気になってしょうがなかった。そのスケーターは高い柵をオーリーで越えてマニュアルし、その先にあるバンクでBs 360を難なくメイクしたにも関わらず、気に入らなかったのか、その後も何回か完璧なメイクを繰り返していた。
 「スケートボードの聖地だけあって凄いスケーターがいるもんだな」と思っていると撮影が終わり「Nice to meet you, I’m Hiroki」と挨拶をすると「I’m Ben」と返事が返ってきた。
 「Ben ? Ben Gore?」
 「…Yes」これがベンとの出会いだった。

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 最初は互いに距離はあったものの、絵や写真の話を通じて仲良くなり、一緒に滑ることで一層仲が深まった。アメリカから帰国して少し経った頃、ベンから「スケート関連のイベントで来日する」という連絡があった。「暇な時間があるから遊ぼう」という話になり、合流してまずはスケートではなく観光をした。ふたりとも疲れていたので、スケートという気分ではなかった。写真が好きなベンのために写真展や美術展に連れて行き、有名な観光地をまわった。その時に持っていたノートに描いた僕の絵をベンが気に入ってくれて「一緒に何かやろうぜ」という話になった。しかし、このようなタイプの話はたくさんあるけど実現するのは稀だということを知っているので「やろやろー」と軽く受け流し、あまり本気にしていなかった。
 それからしばらく経ったある日、ベンから届いたメールに驚いた。それは「コラボレーションZineを作ろう」という内容で「写真を送るから何か描いてくれ」というものだった。ベンは以前の約束を真剣に考えてくれていたようだった。やがてベンから日本で撮り下ろした数枚の白黒写真が届いた。コラージュにしようかとも思ったのだが、白黒だけでバリエーションを多く作るには時間と労力がかかると思った僕は、ボールペンで細かい絵を描くことにした。そうすることで自由な物を描けてバリエーションも作りやすく、白黒写真とマッチするような気がしたのだ。写真の上に描くというのも思いついたが、すでに似たような手法をやったことがあったので、写真を見て思いついたものを描こうと思った。

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 送られてきた写真と同じ枚数のイラストを描いてベンに送ったところ「Awesome」という返事とともに、すぐに数枚の写真が送られてきた。このやりとりを数回繰り返し、最終的にベンの写真16枚にイラスト14枚が溜まった。そこからは早かったような気がする。写真家のリチャード・ハートがこのZineについてコメントをしてくれ、ベンは製本の状態まで持って行ってくれた。世界で限定150部しか生産しておらず、日本には30部のみの入荷。少数のためイラスト5枚を選出し、ポストカードを作り販売することにした。サンフランシスコのFTCにてリリースパーティをやった後、次は渋谷のFTC TOKYOにてリリースパーティを開催。ベンはFTC SFのスタッフでもあるし、FTC TOKYOは僕も普段から行きつけなので、お互い馴染み深い場所で、パーティにはたくさんの仲間たちが駆けつけてくれた。

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 このような形で、自分たちの作品を披露できたことはとても嬉しく思う。ベンと一緒にZineを完成させることができたことも誇らしく思う。コラボZineの展示は5月29日までなので、渋谷界隈を訪れる際には、ぜひともFTC TOKYOに足を運んでいただき、ベンと僕とのコラボレーションワーク(写真と原画)を見ていただきたいです。

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