Shin Okada
Shin Okada
岡田 晋
(Pro Skateboarder / TSV CEO / Push Connection プロデューサー)
1977年10月7日生まれ。東京都出身。
日本人として初めてアメリカのスケートカンパニーにオフィシャルにフックアップされ世界デビューを果たしたプロスケートボーダー。
世界リリースのビデオ10本以上に出演し、世界にその名を轟かす。日本と世界とのスケートレベルを縮め、日本スケートシーンの進化と構築に貢献したパイオニア的存在。現在はプロスケーターとしての活動のみならず、ブランドプロデュースやイベントをオーガナイズするなど、その活動は多岐にわたる。

プロになりたいAくんと スポンサーが欲しいBくん。

ある所にプロになりたいAくんとスポンサーが欲しいBくんがいました。

二人は同い年、何時も一緒に近所のスケートパークで滑る仲、二人はこう言います。

 

Aくん「僕はいつか必ず世界に通用するプロスケーターになるんだ!」

Bくん「僕はいつか必ず沢山スポンサーをつけてみんなに自慢するんだ!」

 

そんなある日、そのスケートパークにある有名なプロスケーターが練習にやって来ました。

彼は世界で活躍するプロスケーター、もちろんスポンサーも沢山ついています。

そんな彼に二人はここぞとばかりに駆け寄りこう言いました。

 

Aくん「僕もいつかあなたみたいなプロになりたいんです!」

Bくん「あなたはどんなスポンサーがついてるんですか?僕もスポンサーが欲しいな〜。」

 

二人のその質問にプロはこう聞き返します。

プロ「Aくんはなんでプロになりたいの?Bくんはなんでスポンサーが欲しいのかな?」

 

Aくんはこう答えました。

Aくん「スケートが好きなんです!もっと上手くなってみんなが憧れるようなプロになっ

て、それでもっと沢山の世界を見たいんです!」

 

Bくんはこう答えました。

Bくん「え?だってスポンサーがついたら何でもタダで貰えるんですよね!友達にも自慢

出来るしカッコいいじゃないですか!」

 

そして2人は聞きます。

AくんBくん「どうすればいいですか?」

 

少し困ったプロは2人にそれぞれこう言います。

プロ「Aくんプロになりたかったら沢山の場所に出かけて行って実際に上手いプロと滑る事

だよ。それと大会に出て結果を出して自分の滑りを撮影し続ける事だね。そうしたらきっと

チャンスが来るよ!」

 

Aくんは答えます。

Aくん「そうなんですね!分かりました!僕、言われた事全部やってみます!」

 

プロ「Bくんスポンサーがつくにはまずプロにならないとね。もっともっと練習して上手く

なったらチャンスが来るよ。」

 

Bくんは納得いかない様子でこう聞き返します。

Bくん「上手いってどの位ですか?俺あんまり上手くないからな〜。」

 

プロはそれ以上答えずにその日は帰って行きました。

 

2人はプロが帰った後、こう言いあいます。

Aくん「俺明日から色んなパークに行ってみるよ!緊張するけど大会もでる!撮影は、、最初

は携帯で良いか!ねぇBくんも一緒にやろうよ!」

 

Bくん「えーお前あんなやつの話し鵜呑みにすんなよ!別に今日だってあいつそんな上手く無

かったし。スポンサーつけてくれないなら俺はどうでも良いわ。面倒くさい。」

 

Bくんは肩透かしを食らった様子でプロの言葉を聴くどころか嫌悪感をあらわにして不貞腐れて

しまいました。

少し残念そうな表情のAくんもそんなBくんをそれ以上誘う事は諦めました。

 

 

次の日以降、何時も一緒だった二人は別々に行動を始めます。

 

Aくんは毎日上手い人が集まる場所を聞いては滑りに行き。イベントがあれば顔をだしました。

BくんはそんなAくんなど知らんぷり。「あいつは裏切りもんだ!」とローカルに悪ぶりながら

相変わらず何時ものパークで滑り続けます。

 

しばらくして、Aくんはとあるストリートのスポットで地元のスケートパークで出会いアドバ

イスを貰ったプロに出くわします。

 

プロ「あれ?君、パークに居たプロになりたいAくんだよね?」

 

Aくんはプロが自分の事を覚えていてくれた事に興奮しこう返します。

Aくん「覚えてくれてたんですね!はい!あれから沢山のパークやスケートスポット、イベント

にも顔だして、今まで以上に友達や上手い人とも一緒に滑る機会が増えました!ありがとうござ

います!」

 

それを聞いたプロは嬉しそうに笑うとこう聞きます。

プロ「Bくんは一緒じゃないの?」

 

Aくん「あいつも最初誘ったんですけどめんどくさいらしくて、、でもあのパークではまだ滑っ

てるみたいです。」

 

プロは少し残念そうな顔をして、話題を変えます。

プロ「そっかぁあの子も上手くなる可能性ある子なんだけどね。そう言えば撮影はしてる?」

 

Aくんはその質問にドキッとした顔をして恐る恐るこう答えます。

Aくん「実は、知り合いが増えたとはいえ、ほとんど一人で行動して居るので撮ってくれる人

が居なくて、たまに携帯置いて自撮りはするんですけど人に見せられるような物ではなくて、、」

 

プロはAくんのその話を聞いて目を輝かせます。

プロ「お前すげーな、カメラマン居なくても、携帯で自撮りしちゃうんだ!」

 

Aくんはそれがどういう意味なのか分からず戸惑っているとプロと一緒にいた大きなバックを背負っ

たスケーターが話しに入って来ました。

 

カメラマン「ねぇ君Aくんって言ったよね?俺カメラマンHって言うんだけど、今から彼(プロ)の撮影

に行くんだ!君も良かったらおいでよ!良いよな?」

 

カメラマンはプロにそう促すとプロも

プロ「お!良いね!Aくんも良い技出したら撮影出来るし、来なよ!」

 

Aくんはそんな展開にビックリしつつも、こんなチャンスそう無いと、

Aくん「行きたいです!」

としっかりとそう答えました。

 

こうしてプロスケーターの撮影に初めて同行する事になったAくん。

初めて彼らの本気の滑りを目の当たりにしたAくんは衝撃を受けます。彼らのその姿はパークで見た

それとは比べものにならない位熱を帯びて居たからです。

 

そんな状況にただ呆然として居るAくんに撮影中のプロがこう言いました。

プロ「Aくんも入りなよ!」

 

今日という日はAくんにとっては緊張の連続、それでもAくんはその誘いに素直に答えます。

Aくん「はい!やります!」

 

Aくんは緊張する自分を必死で抑え自分の出来る限りの技をトライします。

(カン!ガシャーン!!)

自分にとって一番難しい技、いきなり出来るはずもなく失敗。恥ずかしい気持ちでうつむいたまま

立ち上がると、

 

カメラマン「今の良いじゃん!メイク!メイク!」

カメラマンが板を拾い上げるとそうAくんを鼓舞します。

 

アプローチ場所に戻るとプロも、

プロ「Aくんやるな!どっちが先にメイク出来るか勝負だ!」

 

結局、Aくんはメイク出来ませんでしたがその日の経験はAくんにとって大きなものになりました。

 

撮影が終わり帰り際、プロがこう誘います。

プロ「Aくん暇なときはいつでも連絡して!また撮影行こうよ!それと来週大会あるけどAくんも出ない?」

Aくんに断る理由などありません。その場で連絡先を交換すると大会に出る約束をし、その日は帰宅しました。

 

Aくんは帰宅するとすぐにBくんに久しぶりに連絡を入れました。

Aくん「Bくん久しぶり!今日プロと撮影したよ!それで来週大会に誘われたんだけどBくんも行かない?」

Bくん「あーAか、大会?俺らが出ても勝てる訳ねーじゃん。それにプロと撮影したって言うけどスポンサー

がついた訳?」

Aくん「いや、スポンサーはついて無いけど、、やっぱりプロは凄かったよ!」

Bくん「ほら!ついてないじゃん!いちいちそんな事で連絡してくんなよ!じゃあな!」

必要以上に冷たく当たるBくん。AくんとBくんの間には知らないうちに大きな溝が出来てしまっていました。

 

それからAくんは精力的にプロと撮影に出掛けるようになります。大会にも出場し、少しづつ結果も出始めます。

 

そんな日々が続いたある日、Aくんにスポンサーがついたと言う噂がBくんの元に流れて来ました。

ローカル「おい!B!聞いたかAが先週の大会で優勝してスポンサーがついたらしいぞ!しかも今プロと一緒

に撮影してて、来月Aの動画がスポンサーのサイトで公開されるんだってよ!」

 

それを聞いたBくんは焦りを隠す事が出来ません。羨ましい気持ちとプライドがごちゃまぜになった彼はそれで

も素直になれず、思わずこう言いました。

Bくん「なんだよ!どうせプロやスポンサーに媚びうってんだろ!」

彼の心ない言葉に少しづつローカルも彼との距離を置くようになっていきました。

 

Aくんが活躍すればする程、Bくんの心には孤独感だけが広がっていくのです。

Bくん「ちきしょう!なんでAだけ!」

 

それからAくんは確実にキャリアを積み数年後には、プロスケーターとしてトッププロと肩を並べるようになり

ました。

 

そんなある日、またBくんのパークにあるニュースが流れます。

ローカル「おい!Aが遂にベストオブスケーターに選ばれたぞ!これ見ろ!今月の雑誌に特集組まれてるぞ!」

盛り上がるローカルにBくんはもう見向きもしません。

すると、ある一人のローカルがその雑誌を手にBくんに近づいて来ました。

 

ローカル「B!ここ読んで見ろよ!」

Bくんは鬱陶しそうな表情を浮かべながらも恐る恐る言われた部分に目をやります。

そこにはこう書かれてありました。

 

Aくん「感謝したい人は同じローカルパークで育ち一緒にスケートのスキルを競い合ったBくんです。彼が居な

ければ僕はスケートもやっていなかったし、こんなにもスケートを好きになる事は無かったと思います。僕が

ここまでこれたのは彼のお陰です!本当に感謝しています。」

 

そう、Aくんが夢中になるものが見つけられずふらふらして居た時、スケートを勧め、パークに誘ってくれた

のはBくんなのでした。

 

そしてそのインタビューの最後はこう締めくくられていました。

 

Aくん「まだみんなは知らないと思うけど僕の育ったパークにはBくんという才能溢れるスケーターが居ます!

近いうち彼はきっとみんなを驚かせてくれると思います!僕自身彼とプロとして活動するのを楽しみにしてい

ます。」

 

それを読んだBくんは涙が止まらなくなりました。今まで突っ張っていた気持ちが一気に溢れ出しみんながいる

にもかかわらず大声で泣きました。

 

それを見たローカルはびっくりしつつも優しくBくんの周りに集まりこう声を掛けました。

ローカル「B!俺らもAと同じ気持ちだぜ!」

 

その日Bくんは気が済むまで思いっきり泣きました。

そして家に帰る途中、BくんはAくんに短いメールを送ります。

Bくん「俺もプロになりたい。」

その日以降、Bくんはスポンサーが欲しいと口にする事はなくなり、彼の口癖は 「俺もAみたいなみんなが憧れ

るプロになる!」に代わりました。そしてAくん同様、今までの時間を取り戻すようにBくんはたくさんの場所

に滑りに行き、大会に参加し、撮影をするようになりました。

 

 

それから数年後、日本には世界に誇るプロスケーターが2人活躍しています。

そう彼らの名はプロスケーターAくんとプロスケーターBくんです。

 

おしまい。

 

 

作:岡田晋

 

 

*このお話はフィクションです。ただ僕自身の経験や見て来た事、感じた事を1つのお話にまとめた物です。

目標を持って頑張っている人たちの何かヒントになれば幸いです。        2104年12月9日

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