Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
DAISUKE MIYAJIMA

M×M×Mの敏腕スタッフにして自称映像作家のジマこと宮島大介。
伝家の宝刀Fs 180フリップをなくした今、どこへ向かっていけば
いいのか迷走中。本能の閃きをたよりに書き綴る出口なしコラム。

第21回:フラッシュバックサイドテールスライド

 先日パソコンを整理していたら1枚の写真が出てきました。今から約16年前、LAに住んでいた時に撮ってもらった1枚だったのですが、その写真を見たらいろんなことがフラッシュバックしました。写真というのはその瞬間しか写っていないのに、その前後だったりそれに付随するメモリー、時には匂いや感覚までを一瞬で呼び起こす力があるというのは有名な話ですかね?

 ある朝、いきなり僕の寝ているカウチの上の方から、耳を右から左に突き抜けるかと思うくらい甲高い「ジマ! おはよう」という声で起こされました。半年ほど居候させてもらっていた僕の寝床はつねにリビングにある汚いカウチだったため、起きると誰かがいてビールを飲んでたり、知らない人が僕のことなどまったく気にせずにスケートビデオ観ているということがしょっちゅうありました。しかし今頭の上から降ってきている声は日本語だし「誰だろう」と思って顔を上げると、代官山にある某有名スケートショップのF社長でした。

 社長は全身真っ黒に日焼けしていて、ベージュのカーゴショーツに、スケートで激しく転んだかのような茶色い汚れが背中についている無地の白いTEEという出で立ち。目ん玉が飛び出るんじゃないかっていうくらいの眼力で僕を見ていました。いったいなぜ、どのような経緯でここに来たのかはよく覚えていないのですが、SFからレンタカーを借りてここLAまでやってきて今晩はここに泊めてもらう……のだとか。なので、どっかにスケート行って撮影でもしようということになり、その家の家主らと早速スケートに出かけました。

 ’90年代後半からGirlやChocolateのビデオでは定番の小学校スポットのLockwoodに行くことになり、憧れのピクニックテーブルで写真が残せるかも、というチャンスに僕は内心ドキドキワクワクしていたのを覚えています。

 いつものようにフェンスを乗り越えて日曜日の学校に侵入し、びみょ~~~うにバンクになっている坂のような場所の上にピクニックテーブルを設置し、そこで何かやることにしました。スケーターがテーブルをあっちこっちに動かすことに見かねたであろう小学校側は、そこにあるすべてのピクニックテーブルに鎖をかけてそこから動かせないようにしてあります。だがそこはやはりつねにスケーターが勝利するもので、なぜか1個か2個は少しだけ動かせるものがあるのです。それをバンクの上の丁度いい位置に持って行き、適当なトリックで少しの間慣らして自分の中では上出来なバックテールをメイクしました。写真を撮っていた社長もうれしそうに、これまた耳を突き抜くような甲高い声で「いえ~い、かっかっかっか!」とお決まりの笑い方をしてたのは覚えているんですが、結構長いことトライしたのかサクッとメイクしたのかは正直覚えていないので、この際都合良くサクッとメイクした記憶に塗り替えちゃう(笑)。

 その夜、家でビールを飲みながら社長に「またSFまで戻るんですか?」と尋ねると、逆に「そのままサンディエゴまで下って行ってそこでレンタカーを返してそのまま日本に帰るんだ」と言っていました。そんなことができるのか!? とかなりビックリした記憶も蘇ってきました。1枚の写真でここまでの記憶が瞬時に蘇るって、写真ってすげぇ~。「一瞬は無限だな~」なんて深いのか無駄なのかよくわからないことを考えてしまいました。

 ちなみにこの写真は当時社長が定期的に出していたZIPANGというフリーペーパー(フリーだったかな?)に掲載されたのですが、本を見てビックリ、見開きで使ってもらってる。キターーー!! が、しかしよく見ると見開きのページのど真ん中に僕がいるので、顔やら身体やらが思いっきりページの継ぎ目に入っちゃってて何とも残念な感じでした。それを察していたのかは分かりませんが、ものすごい年月が過ぎてから写真のデータがメールで送られてくるというありがたいことまでしてくれて感謝感謝。社長ありがとうございます。

 あ、もうひとつ思い出しました。その時社長と一緒にいた間ずーっと、社長の汚い白TEEとカーゴショーツは一度も変わることなく、次の日の朝起きた時にはもう社長の姿はありませんでした。

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