それは確かスケートボードにすら出会う前、団地育ちの僕は階下の家が引っ越すのでお手伝いをしていて、そのときの引っ越し屋の兄ちゃんが勧めて来たのです。今思えばその兄ちゃんも大胆な行動に出たなと思います。おもしろ半分にタバコを勧めるなんて。
そのときから吸っているワケではありありませんが、やはりかっこつけたいがために早い段階でタバコを始めることになりました。不良だったワケではなかったので見た目は普通の男子、オシャレといえばオクトパスアーミーのバックパックにバッシュもどきのわけわかんないハイカットの白い靴というダッさい格好。中分けのカリアゲ。タスポなんて存在しない時代なので自動販売機で容易く手に入るマイルドセブンを友達何人かで一緒に買って、公園で吸ってゲロを吐きました。かっこつけは忍耐です。
こうして僕は順調にタバコ人生を歩んでいくワケですが、しばらくすると禁煙を考えだしていました。一番の理由はやはりお金。当時は今のタバコの値段の半分くらいだったと思いますが、それでもタバコを買うか菓子パンを買うかでしばらく悩み込んでしまうほどその出費は痛かったのです。そして「さあ、いざ禁煙」となると、自分に対する甘さが浮き彫りになります。まぁ甘い。
「これを吸ったら…」
「今月いっぱいで…」
「誕生日を機にきっぱりやめよう…」
と禁煙スタートにすらたどり着けない状態が続きました。
なんやかんやで禁煙にトライし続け、しばらく吸わなかったのですが、ちょっとした誘惑で吸ったが最後、また逆戻り…。こんなことをずっと繰り返しました。たまたま上手くいって、最高で5年間まったく吸わない時期もありました。おかげでいろんな禁煙方法を考え出すことができました。前置きが相当長くなりましたが、今回は僕が試した禁煙方法をいくつか紹介します。
1. タバコを1箱買い、1本火をつけ吸い終わったら残りの19本をぞうきんのように箱ごと絞り、ゴミ箱にポイ法
これは「これを全部吸ったらやめるぞ!」の逆の発想で、「もうこれ全部捨ててでもやめちゃうかんね!」という自分の意識を高める方法です。1本だけ吸うのは、そうすることによって自分のタバコだという一種の愛着のようなものを湧かせるためです。その後吸いたくなって吸おうとするときに思い出します。「ここで吸ってしまったら、あのとき犠牲にした愛しい19本のタバコたちは何だったんだ!? 捨ててまでやめたというのにこんなに簡単に吸っちまっていいのか?」という意識が働くワケです。結構いい方法だと思います。
2. 5~10本くらいをものすごい勢いで吸いまくる法
これを話すと「やったことある」って人が結構いました。これは要するに「タバコ大嫌い!」という状態に持っていくワケです。さすがにそこまで連続で吸うと吐き気や目眩がしてきます。吐き気がして「もうだめだーっ!」という瞬間に、とどめを刺すようにもう1本吸ったりすると良いでしょう。この方法の場合、ギブアップして残りを捨てたとしても「嫌いなものを捨てた」という状態ですから、1番目の方法のようにはなりません。できるだけ吸いきってしまいましょう。
3. 新品のタバコとライターをつねにバッグに入れておくストイック法
もう一種のゲームの様なものです。「封を開けたら負け」というルールで遊ぶのです。誰かと戦うのではなく、つねに自分との戦い(ゲーム)です。買ったら負け、というルールでもいいのですが、持っている方がレベルは高いでしょう。慣れてくるとこれほど強いものはありません。ないから吸わない、じゃなくてあるのに吸わないのです。完全に吸わなくても平気になったら「もうやめたから…」と言って、誰かにあげるのがクールです。
「まったくやめる気はないし、そんなこと思ったこともない」という人もいます。そのタイプは最高です。一番強いです。現在の僕は、基本的には吸いませんが、酒を飲んだりしていると吸ったりします。「1本くれよ」のちょっと迷惑なスタイルです。1週間吸わないこともあれば、何日か連続で吸うこともあります。長い時を経てタバコとの付き合いをコントロールできるようになりました…。と思っていましたが、いろんな禁煙法をもってしても未だに完全にやめられていない。タバコについてこんなにも無駄に考えたりしていると…実はタバコにコントロールされているのは僕の方かもしれません。