Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
YOSHIHIRO “DESHI” OHMOTO

弟子の愛称で慕わられ、carharttのグローバルライダーとして活躍する大本芳大。 旅とドトールと読書をこよなく愛する吟遊詩人。 “我以外はすべて師匠なり”が座右の銘。

第12回 : ひと息

 大手コーヒーショップチェーン店に、ドトールがある。もう何年も利用させてもらっている。現在僕が住んでいる家の近くには、ドトールが2軒もあり、ひとつは最寄り駅に、もうひとつはガソリンスタンドと一体型の店舗で、なんと24時間営業なのだ。立地条件は最高。スケート前に、スケート後に、仕事前に、仕事後に。1日に、3回利用する日もよくある。24時間営業の方には、深夜寝る前に行くこともある。かなりうざい客だ。しかも、僕はその店舗を勝手に「デシの間」と読んでいる。

 そんなドトールでのホッとひと息は、僕の1日にとって、句読点のような役割なのだ。だから、しばらく行けない日々が続いてしまうと、かなり辛くなる。

 昨年、Skate Atom全国47都道府県ツアーで東北を周っているころ、僕は仙台で腰を強打した。痛くて眠れないほどの激痛がしばらく続いた。さらに、東北の一足早い秋の寒さが、僕の身体に直撃し、まともに動けなくなっていた。とはいえ、ツアーはまだ始まったばかり。どうしよう。あと40県ほども残っているのに…。強烈なプレッシャーまでもが直撃し、心まで不安定になりつつあった。

 そんな状態のとき、旅を共にしていた、フィルマーの長岡ひとしが「ねぇ、ヨシ(彼は僕のことをヨシと呼ぶ)。今日は撮影いいから、たまにはドトールに行ってくれば? ヨシはドトール行かないと、すぐソワソワし出すからなぁ~」。

 正解。よくご存知で。大ちゃん(南 大道)も「今日は休みましょうよ。うちらがスポット探しときますから、明日にしましょ? さっきドトールありましたよ」。

 うん、知ってる。さっきあったね。しっかりと気になってたよ。ありがとう。おめぇら最高だぜ。

 青森に着いた日、僕はふたりに甘え、ドトール八戸店でひとり心を落ち着かせた。そして、その日以降、心も身体も驚くほどに回復し、旅は順調に進んで行った。

 日本全国どこのドトールも、僕を裏切ることはない。やはり、僕の生活に、ドトールは欠かすことはできないのだ。

 ただ、以前あるスケーターからこんなことを言われたことがある。

 「デシくんて、そんなしょっちゅうドトール行って、何してるんですか?」

 いきなりの質問に戸惑ったが、少々カッコつけ気味に、こう答えておいた。

 「自問自答だよ…」。

 彼はキョトンとしていた。そして無表情のまま、さらに質問してきた。

 「自問自答ってなんスカ? で、それ意味あんスカ? しかもドトールじゃなきゃだめなんスカ?」

 「………」。

 今度は僕がキョトンとしてしまった。はたして意味などあるのだろうか。そして彼が言うように、ドトールでないとだめなのか? 言葉が出なかった。うるさいぞ、キミ。別にいいじゃないか、人がどこで何しようと。あと、そのスカスカ言うのやめなさい。ちきしょー悔しいぜ。

 今後も、誰かにそのようなことを聞かれたら、

 「いいかい。すべてのことに、意味があるともいえるし、ないともいえる。この世は幻だからね。だからオレは、好きなところで、好きなことしてるだけだよ」。

っと、ごまかすことにしよう。

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