Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
HIROKI MURAOKA

現在もっとも乗れている日本人スケーターのひとり。スケートのスキルに加え、ペインターとしても非凡な才能を持つ。

第10回 : ビデオパート

 僕がスケートボードを始めて、1番最初に衝撃を受けたのは、プロスケーターたちのビデオパートでした。スキル、スタイル、スポットセレクト、リスク、クリテエイティビティ…。スケーターのスタイルは千差万別で、この乗物にはいろいろな表現方法があって多くの可能性を秘めていることをブラウン管を通して学んできました。当時の僕は「ヤベー 、かっちょいい」と食い入るようにモニターを見つめ、VHSテープを再生しては巻き戻しての繰り返し。スケボーを始めたころに見たビデオで印象に残っているのは、F.E.S.N『Subway』、Sant『Full Effect』、Choice『Precious Time』、『Freedom』、『Mouse』、『eastern exposure 3』、411VMの最初の方といった感じで、今では名作と言われるものも多く、9歳の僕にはすべてが新鮮に映り「オレもいつかこうなりたい」と強く思ってがむしゃらにスケボーしていました。

 中高生になると自分もビデオパートを作りたいという思いが強くなり、友人の六平太(ロッペイタ という奇跡の本名)くんと一緒に撮影をはじめ、ビデオパートを作るため大阪まで足を運んだのを覚えています。その後に出た、Expressionの作品『 Battle Field』にフレンズで2カット出してもらったのが、僕の初めてのメジャーなメディア露出です。当時地元の仲間と撮影した映像は、今となっては懐かしい思い出になっています。その後上京し、『Night Prowler』、Color Communications 『created in japan』、先日公開されたばかりのVHSMAG 内のGRAVISプレゼンツ『Ride On』といった作品が世に出て行った訳なんです。ビデオパートの撮影は、そう容易な作業ではありません。まず、パートを作るのには大変な労力を使います。スポット、移動、機材、時間、怪我…までとても数えきれません。撮影でストレスになることもしばしば。しかも、撮って行くごとにスキル的に進化していかなければならない。それでいて自分のスタイルを崩してはならないのです。そのように考えると、ジェイソン・アダムスやガイ・マリアーノには頭が上がりません(他にも国内外でたくさんいるのですが、例として)。

 それほど大変なのにも関わらず、ずっとやり続けているのにはそれなりの理由がある。それはやはり、自分がいいと思えるビデオパートを見た瞬間のワクワク感がたまらないのです。それを自分自身の作品でも味わいたいし、見てくれた人がひとりでも「オレもやりて~!!」と僕の様に思い、ワクワク感を感じて撮影してくれたら自分のやっていることにも自信が持てるし、最高の喜びにも繋がります。まだ自分のパートで心底満足できていないので(まだやれる! という自信があるので)今後も撮影を続けて行こうと思っております。それで自分が「もうこれ以上できないな」と満足したら、もう撮影しなくなるかもしれないですが(生きてるうちにできるかわかりませんが)。

 今これを読んでいるスケーターのみなさんも、思い切って撮影しましょう! どんなやり方でもアリなんです。サイモン・ウッドストックやジョー・バルデスといったスタイルが受け入れられているように。

 みなさんと、映像を通してお会いできるのを楽しみにしています。

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