Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
HIROKI MURAOKA

現在もっとも乗れている日本人スケーターのひとり。スケートのスキルに加え、ペインターとしても非凡な才能を持つ。

第13回 : 失敗談

 何事にも挑戦には成功があれば失敗もある。ちなみに今、僕の足にはギプスが装着されている。これもひとつの失敗。もちろんスケートの撮影も毎回上手くいくことはない。

 これまで失敗だらけの人生だが、その中から撮影での痛い思い出をひとつ。場所はと言うと池袋。西口を出て左の方に向かうとメトロポリタンに辿り着く、みんながメトポリと呼ぶこの場所にはいくつかスポットがある。その中に大理石のゴツゴツとした、まるでレゴブロックを組み合わせたような階段がある。

 ここを初めて見た時から何かやりたいと思っていた。いろいろと考えた末に、細いところをマニュアルして下までの落差と幅を跳ぶというのがベストだと思い、早速撮影しに行くことにした。ビデオを撮ってくれるのは勝己さん。ちょうど『Nightprowler』の撮影中で「あれやりたいんですよね~」と伝えると「それいいじゃん! やろうよ」と言ってくれたのですぐに実現した。

 撮影現場には神奈川県から数人スケーターが来ていた。ウルくんやホンちゃんが来ていたのを覚えている。とりあえず数回細いところをマニュアルして板を離し、少し慣れて来たところで下まで跳ぶことにした。そのころには謎のギャルの観客もいて、ちょっとした見世物になっていた。そんなことより撮影に集中しないと怪我をする。少し気を張りスポットに向かってプッシュした。マニュアルからテールを踏み落下すると結構な重力で、着地とともに潰されてしまった。しかしこの時に絶対できると確信し、後は重力に耐えるだけでメイクできると自分に言い聞かせた。思い切って乗りに行き、着地で踏ん張った。一瞬だったが、メイクした瞬間に歓声が上がり、とてもうれしかった記憶がある。

 実はこの話には続きがあるのだ。その後のこと、僕は某スケート誌で特集をやることになっていた。そこで思いついたのがこのスポットで、シークエンスを撮るということ。井関くんにスポットを紹介すると「撮ろうよ!」と言ってくれたので撮影することになった。問題は昼間だと人が大勢いてスケボーどころではないということと、シークエンスでの撮影の場合、夜だとストロボの光で目が眩んで集中できないということだった。であれば、トライできるのは必然的に朝ということになる。しかも早朝、人があふれかえる前に仕留めようという話になった。

 朝5時くらいには用意して家を出てメトポリに向かった。井関くんと合流し、撮影準備を始める。そして井関くんからOKの合図がくると、まだ完全に起きていない身体に鞭を打ちテールを叩いた。数回下まで行ったので、思い切って乗りに行くことにした。少しスピードをあげ、マニュアルをしてテールを踏んで落下しようと思った瞬間、カカト側にあった段差に足が引っかかってしまった。そこからはスローモーションだ。自分の身体がコントロール不能になり空中に投げ出され、そのまま地面にダイブした。両手のひらはボロボロになり身体のあちこちが痛かった。流石に撮影は中止になり、帰宅することになった。

 まだ朝の6:30頃 激痛の中飲んだコーヒーは今までの人生で一番苦いものとなった。しかもそこから仕事だ。ここから僕は教訓を得た。なるべく写真とビデオは一緒に撮るべきだということを。

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