先日、Thrasher Japan Magazineが新しく発売された。この号は復刻で内容も濃い。今回紹介させてもらうのは、そこで掲載させてもらった1枚。
写真を撮ったのは井関くん。僕が信頼しているフォトグラファーのひとりだ。この写真を撮った日は、実は違うスポットで違うことをしようとしていた。
都内某所。大きな橋のたもとにバンクインがあると井関くんに教えてもらい、写真を撮りに行った。行ったところは大きなバンクインで、細い路面の場所だった。
やるかどうか迷いつつ、とりあえずスポットシークがてら周囲をウロウロしていたら、そのバンクインスポットからほんの200mほど離れた場所に違うスポットを見つけた。簡単に説明するとバンクの上にレールがついているというスポットだが、いささか条件が悪い。バンクは小さく路面はボコボコで、青信号になった瞬間にしかトライが出来ない。
しかし一目見た瞬間このスポットに興奮した。僕の変態的直感がすぐさま反応したのだ 。
バンクインスポットに連れて来てくれた井関くんに悪いと思いながら、「違うスポットを見つけました。申し訳ないんですが、こっちでやりたいです」と伝えたところ、快くOKの返事をくれた。連れて来てもらった場所はいいスポットだったにもかかわらず、僕のわがままに付き合ってくれる井関くんはさすがだ。そして勝手な見解だが、井関くんもこのスポットに反応したと思っている。
早速、互いに撮影の用意をした。井関くんはストロボを立て、カメラを構える。僕はいつもどおり身体を温める。そして準備が済み、スポットに向かってプッシュした。最初の方はバンクの感覚をつかむため数回テールを叩いた。レールが高かったが、バンクをうまく使えば上まで届く。周囲の様子を見る限り、キックアウトされることはなさそうだ。
しかしながら、このスポットは青信号のときに2回だけしかトライ出来ない。そして井関くんにはこの日用事があり、17時にはここを出なければならなかった。
今は15時。あと2時間出来る。集中力を保つのが大切だと悟った。
それから何度も何度もトライしたがなかなかメイク出来ない。抜ける瞬間に前のトラックがレールの継ぎ目に当たってしまう。やり始めて何回か惜しいのはあったが、完璧に着地が出来ない。
そして2時間ほど経ったころ、井関くんに声をかけられた。
「そろそろ用事の時間だからもうやめよう」。
やはりメイク出来ないと相当なストレスになる。長時間付き合ってくれたフォトグラファーに申し訳ない気持ちで一杯になる。もう井関くんは機材を片付け始めていたが「これで最後にする」と言い、集中し、テールを叩いた。
奇跡的に最後のトライで綺麗にメイク出来た。僕はもちろん 井関くんからも喜びの声が上がった。この時最高の気分だったのを今でも覚えている。
実はこの後にまた2回撮影しに行った。1回はちょっとした事情で撮り直し、もう1回は映像を撮りに。
その2回とも特に難なく撮影できた。スポットに慣れてきていた証拠だ。
ストリートスケートの難しいところ、そしていいところは、スケートボードのために作られていない場所でどれだけ対応し表現していけるかだと思う。
ストリートは本当に難しい 。だからこそ魅力を感じてならない。