Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
HIROKI MURAOKA

現在もっとも乗れている日本人スケーターのひとり。スケートのスキルに加え、ペインターとしても非凡な才能を持つ。

第14回:LAと経験値と実感

 少し前のことだが、雑誌の企画でLAへのツアーに行ってきた。長年スケートボードを続けてきたが、スケートの本場であるLAに行くのは初めてだった。ツアーの話をもらった時は嬉しくて、できることなら1日でも長く滞在したいと思っていた。が、そうはうまくいかないもの。仕事の都合で5日間しか休みが取れなかったので、トンボ帰りの旅にならざるを得なかった。

 東京からLAまでは飛行機で約10時間ほど。ホテルのチェックインや移動などを考えると、実際にスケートの撮影ができるのは2日間ほど。今回のLAツアーの目的は「SLIDERで10ページ以上の記事を作る」ため。ということは、僕は池田幸太とふたりで2日間で10ページ分の撮影を終えなければならない。オフショットを間に差し込むとしても、最低でもひとり3~4カット程度のライディング写真が必要になる。このノルマを2日間で達成するというのは自分にとって大きなプレッシャーとなった。

 LAに着いて最初に思ったことは気候のこと。つねに暖かくて乾燥している。陽が当たるところで滑っていると汗をかくのだが、日陰に入ると涼しい。しかも晴れが多いというスケートに最適な土地なのだ。
 LAXに到着後、車に乗り込みホテルに向かう移動中の景色が、自分がLAに居るということを実感させてくれた。街中の至るところにある消火栓、ペンキで塗られたカーブなどが、これまで自分が観た数々のスケートビデオなどの映像と合致し、時差ボケを忘れるほど僕を興奮させてくれた。
 そんな興奮冷めやらぬ初日は移動や時差で疲れているということもあり、滑らずゆっくり過ごした。

 そして次の日は撮影。なんとフォトグラファーはアンソニー・アコスタ。トップクラスの猛者たちを撮影している一流のフォトグラファーと一緒に動けるなんてまたとないチャンス。有名フォトグラファーだけあり、どのような人物かと最初は緊張していたが、彼の印象はとても良かった。大物ぶらない気さくな人で、気負って緊張していた自分をリラックスさせてくれ、撮影の段取り、アングルの完璧さ、何をとっても抜け目が無かった。いろいろなスポットに連れて行ってもらい、撮影は順調に進み、撮影1日目は無事に終了した。

 そして撮影2日目。待ち合わせ場所のパークに行くと、普通にニック・トラパッソが滑っているではないか。移動して次のスポットで滑っていると、いきなりグレッグ・ハントとアンソニー・ヴァン・イングレンが現れた。ビデオで見ていた人たちが目の前で普通に滑っているのだ。そして挨拶を交わし、一緒の場所でスケートができた。これはとても良い経験となった。その日の撮影も無事に終了し、LAでのミッションは終わった。この撮影の様子などはSLIDER Vol. 12に掲載されているので、ぜひ読んでもらえると嬉しい。

 短期間しかLAを体験していないにも関わらず、自分が得られたものは大きかった。
 「百聞は一見に如かず」という言葉がある通り、その場所を知りたければ行くのが一番の近道なのだ。そして現地の人と一緒に動くこと。実際に体感しないと分からないことの方が多いのだから、もし気になったら行った方がいい。
 ウダウダしているだけでも時間は過ぎて行く。「人生は一度きりなのだから」。そう自分に言い聞かせ、これからも身体を動かしていこうと思う。

残念ながらこの後すぐに真っ暗になってしまい、メイクすることの出来なかったBs 180フリップの写真。アコスタはあり得ないぐらいカッコよく写してくれる。

残念ながらこの後すぐに真っ暗になってしまい、メイクすることの出来なかったBs 180フリップの写真。
アコスタはあり得ないぐらいカッコよく写してくれる。

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