Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
HIROKI MURAOKA

現在もっとも乗れている日本人スケーターのひとり。スケートのスキルに加え、ペインターとしても非凡な才能を持つ。

第1回 : 村岡洋樹の場合

Photo by WADAPP, Courtesy of Boardkill

Photo by WADAPP, Courtesy of Boardkill

 Boardkill Issue 18のMixnutsというコーナーに掲載された僕のオーリー写真、写真を撮ったのは和田 崇。みんなにはWadappと呼ばれている。
 作品を残す際、すべてのものに多少なりとも物語があるはずだ、無論この写真にも物語がある。

 とても寒い冬のある日、和田さんから1本の電話があった。和田さんは興奮した声で「世田谷某所の噴水の水が抜けている。今なら撮影できるから水が入ってしまう前にやろう」と言ってきた。これはまたとないチャンスだと思い、ふたつ返事で「やりましょう」と返した。

 早速その電話の翌日、僕たちふたりは現場にいた。時間は深夜1時前、終電での待ち合わせだった。
 このスポットはセキュリティがとても厳しい、そんなことはふたりとも分かっていた。だからこそこの時間を選び、撮影を決行することにしたのだ。それに加え僕たちふたりは前回の撮影の際、都内某所で捕まり痛い目にあっている。少し神経質になっていた。そしてふたりは落ち合うと同時に撮影の準備を始めた。和田さんはストロボを立て、アングルを決める。自分は少し離れた場所で体を温める。

 互いの準備が整いテールを叩く時がきた。Bank To Bankのようになっていて、幅は板を縦にして3~4枚程度。そんなに難しいスポットではない。しかし、短時間で決められないとすぐにセキュリティが来る。
 恐怖心を捨てギャップに向かった。最初のトライはすぐに板を離した。その時に絶対乗れると確信した。そして2回目のトライではスリップしてしまい転けてしまった。3回目のトライ。思い切り乗りにいった。少しぎこちなかったが、地面を捉えることができ、無事にメイク。時間がなかったので、すぐにもう1~2回トライした。このトライで綺麗にメイクし、そそくさとその場を立ち去った。

 少し離れてストロボなどを片付けていると、ふたりの警備員が来た。ギリギリだった。全部で5トライ程度、撮影時間は10分程。もしも、あと数トライやりメイクできなければこの写真は残らなかっただろう。
 ストリートで1枚の写真を残すというのはそう容易ではない。そう考えると、Webマガジンしかりスケートマガジンというのは、とても価値のあるものではないだろうかと思う。

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