Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
HIROYUKI WAKABAYASHI

Possessed SHOE. CO 代表。1969年生まれ。
極上のスケートセッションをこよなく愛す自称Skate Rat。
SKATEBOARDING IS PUNK ROCK!

第2回:ロストスポット

 おじさんスケーターの私には、スケートスポットと聞くとバンクやR状になった地形や建築物、ペンキで塗装された縁石などを連想します。その人それぞれの考えがあると思いますが、私が考えるにはスケートスポットは大きく分けて3つに分類されるのではないかと考えます。

 ひとつめは、それまで誰もスケートスポットとして考えなかった地形や建築物です。スケーター自身が想像力とテクニックでその場所で選んだトリックをメイクして、みんなにスケートスポットとしてその場所を認識させるエクストリームなスケートスポット。主にビデオ撮影や写真撮影などの記録を残す目的でこの種のスケートスポットは使われることが多いのではないかと思います。もちろん、写真や映像とは関係なく自分自身の満足のためだけにこのようなスケートスポットを攻略すべく攻めるスケーターもたくさんいます。

 ふたつめは私営、公営のスケートパーク。スケートボードのために作られた場所なのでキックアウトの心配が無く、心置きなく安心してスケートボードに没頭できる場所です。誰にでもオープンな間口の広い公営施設や私営施設も以前と比べるとかなり増えました。中にはオーナーの趣味でこだわって建設し、とても専門的で一見敷居の高い私営の施設も存在します。

 3つめはひとつめのようなスケートスポットと同様にスケートボード用に作られた物ではないが、スケーターが見ればスケートボードに適した地形や建築物と一目で分かるようなスケートスポット。バンクやR状で「ぜひスケートボードして下さい」と言わんばかりの建築物を見つけると本当に嬉しいものです。この種の建築物は以前は決して多くはありませんが街中に点在していました。建築物の劣化や街の開発に伴い、惜しくも無くなったものも多数あります。最近はあまりこの種のスケートスポットが新たに出現することは無いと思われます。またスケートパークも以前はほぼ100%私営施設しか存在しなかったので、いろんな意味で個性的な場所がありました。海外のメディアでも時々、伝説のスケートスポットがクローズアップされることがありますが、国内(自分は東京在住なので都内と近郊限定ですが)の思い出のロストスポットを紹介したくて今回コラムを書きました。

美竹公園(旧宮益坂公園)
 ここができた時は「こんな場所にスケートパークができるなんて時代も変わったな!」と驚きました。渋谷駅前の宮下公園スケートパークから明治通りをはさみ向かいにある公園が宮益坂公園です。今は全面改築されてスケートスポットはありませんが、改築前は公園入り口の壁は斜め壁バンク、公園内に高さも充分(記憶がおぼろげですが1mくらい?)なコンクリート製のプリン型オブジェがあり、公園を囲う壁はR状になっていたり、コンクリート製の滑り台は対面型になっていて、ボトムが砂場になっていたので砂をどかせばちょっとした対面型のコンクリートバンクとして滑ることができました。ここはスケートボード用に作られたワケではないけれど、完璧にスケートボードに適した公園でした。

八重洲口バンク
 東京駅八重洲口の駅建物を出ると、すぐ前にタイトなRに垂直な壁部分が長いタイル製のバンクがそびえ立っていました。Rがかなりタイトで垂直の壁は5m位の高さだったと思います。すごい場所にすごい物があったものです。プールライディングというよりウォールライド的なスケートスポットでした。クリスチャン・ホソイが来日時に壁垂直部分上部に設置されていた看板にフロントサイドでテールを当て込んだ話を聞いた時には驚いたものです。

右翼バンク
 記憶が定かではありませんが、場所は新小岩駅周辺の住宅街の外れにある線路脇だったと思います。JRの貨物コンテナに荷物を搬入するために建設されたと思われる幅3m程で高さ1.3mくらい? のコンクリート製で緩くRのついたバンクがありました。線路向こうに右翼団体の事務所があり、タイミングが悪いと団体員の人たちに拘束され事務所に連行されてしまうというスリルがあり、とても魅力のあるスポットでした。

アキラットパーク
 綾瀬IC近くの高速道路下に作られていたDIYパークで、1980年代後半頃の当時を知る人にはかなり伝説的な存在でした。ミニランプ、クオーター、テーブルトップのレール付きバンク to バンク、R to ウォールなど、当時国内にはなかなかないセクションを自分たちで作ってしまった、驚きの国内DIYパークの先駆け的パークでした。T19の尾澤 彰が中心となりパークを建造したためにこの名前が付きました。最初に滑りに行った時の衝撃は忘れられません。

船橋BSスポーツセンター
 千葉県船橋市のBSスポーツセンターというボーリングなどのアミューズメント施設ビルの駐車場に、コンクリート製のコンパクトなパークがありました。簡単に説明するとスタート台から奥に設置されているクオーターを攻めるセクションなのですが、リンクの動画を観てもらえれば分かる通り、スケートボードを理解している人が作ったとは思えない無理な作りがかなり個性的で魅力的なパークでした。メインのクオーターR部分の真ん中で膨らんでいる箇所があったりしてセクションに入る度にスリルを感じることのできるパークでした。

 なかなか文章では伝わりにくいと思いますが、いろいろと楽しいスポットがありました。現在はスケートパークも増えてさまざまなセクションを滑ることができます。その気になれば個々の欲求を満たすことができるような場所を選んで滑ることが可能です。普段接点の無いティーンネイジャーたちと接することができる、間口の広い公営パークで滑るのも刺激になり楽しくて好きです。でも自分は敷居の高いこだわりのある私営施設や、決してスケートボード用に建設されていないがスケートボードに適したスケートスポットで滑ることに昔も今も魅力を感じます。
 基本的に許可を取って建設されたスケートボード用施設以外のスケートスポットで滑ることは、禁止されていれば違法行為になってしまいます。人通りが無い道路でスケートボードに乗っているときに警察官に遭遇すると、必ず言っていいほど「危ないから(スケートボードから)降りて!」と注意を受けます。しかし道路交通法上では公道でスケートボードすることは禁止とはされていません。道路交通法に関しては、ぜひみなさん自身で調べて確認して欲しいのですが、法律上ニュアンスはグレーでその時々の状況にもよると思いますが、決して屁理屈ではなく「立ち入り禁止」、「スケートボード禁止」以外の場所で滑ることは違法ではありません。もちろん他人に迷惑になる行為は、自分が同じことをされたら嫌なのでしないように心がけていますが、自称スケーターとしてスケートボードを楽しむのであれば、ルールを守って最大限に楽しみたいものです。

 


船橋BSスポーツセンターでのジェシー、ヨッピー、ディックマンのセッション。

 

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宮益坂公園を囲むR状の壁前で当時BAND活動していたメンバーと。1989年にリリースしたFLEXの裏ジャケット用写真撮影の時に撮ったもの。

 

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1980年代後半千葉県浦安市駅前にある西友スーパーの屋上にあったミニランプ。

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