Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
TAKUYA NAKAJIMA

2002年よりFESNの専属フィルマーとして活動後、
現在は都内の医療機関にて理学療法士として勤める
傍ら、某デジタル系会社に勤務するMr.魚眼レンズ。

第6回 : ドラボン 沖縄での撮影秘話

 前回に続き今回も、ドラボンこと宮城 豪くんの沖縄での撮影秘話についてお話したいと思います。沖縄の撮影では、まず彼がスポットやトリックを提案します。彼は入念にいくつものスポットを用意して、たくさんのトリックをイメージしています。たくさんスポットを知っているスケーターは他にもいますが、彼のように複数のトリックをイメージしてくるスケーターは少ない気がします。彼との撮影で難しい点を単純に言うと、メイクまでに時間が掛かる上にビデオカメラを回さないとモチベーションが上がってこないという点です。確かにフィルマーはビデオカメラを回すのが仕事ですが、メイクに3日間かかるトリックをずっと撮影するわけにはいきません。

 その夜は、沖縄のメインストリートである国際通りで撮影したいと言うので、人が少なくなった時間帯を狙って繁華街へ向かいました。ちょうど工事中の道路と歩道の段差でスラッピーのBs 50-50をしてからポーリーをして、またBs 50-50をすると言うのです。まず目についたのは、ポーリーするポールが鉄ではなく、赤いポリウレタン性だったこととです。僕が彼に再三、ポリウレタン性のポールでポーリーをする難しさを説明しましたが、彼は前に一度メイクしたことがあると言って聞きいれません。彼はすぐにメイクできるので、始めからビデオカメラを準備して欲しそうな目をしていましたが、ひとまずトライを見守ることにしました。入念にストレッチをして、いざトライすると、まずスラッピーのBs 50-50すらできませんでした。思ったより縁石が高かったようです。こんな風にイメージが先行してしまい、最後のメイクまで辿り着かないこともしばしばあります。

 しかし、彼の丸レールの安定感は抜群です。一度ハマってしまえば、かなりの距離をグラインドすることができます。スポットは限定されるかもしれませんが、丸レールのロンググラインドはスケートのトリックとしてはとても華があるので、見ている側にインパクトを与えることができます。さらに彼のデッキテープはみなさんご存知の通り、デッキテープではなく布を貼っています。なのでオーリーが高くあがりません。そのため、上質なレールを見つけてもアプローチすることができないのです。彼のすごいところはそこであきらめないことです。どうにかしてそのレールにアプローチすることを考えます。しまいにはスケートトリックの概念を打ち破るかのごとく、レールの上からトリックを始めたりします。決して人と違うことや劣っていることは弱みじゃない、考え方ひとつで自分の武器や強みにできるということを彼は証明してくれました。

 最近のスケートビデオを見る限りでは、オリジナリティあふれるトリックがたくさん生まれています。そんな中、彼はどんなトリックを生み出してくるのか今後の彼の動向が楽しみです。先日の情報では、沖縄でスケートのビデオ撮影を主体とした生活を送っていると言っていたので、今後彼の新しいスケートの動画が見えるかもしれません。

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