Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
TAKUYA NAKAJIMA

2002年よりFESNの専属フィルマーとして活動後、
現在は都内の医療機関にて理学療法士として勤める
傍ら、某デジタル系会社に勤務するMr.魚眼レンズ。

第15回:IT WAS A GOOD DAY

 発電機や手持ちのライトを使って撮影していて、気がつくと照明が必要ないくらいに空がぼんやりと明るくなってきていた。帰り道、寝ぼけ顔のスーツ姿のサラリーマンとすれ違いながら、何を食って寝ようかと考える。結局、いつもの立ち食い蕎麦。眠気と戦いながら電車でこっくり、ふたつ降りる駅を乗り過ごす。ピース。
 とても個人的な意見になってしまうが、こんな日常の連続が続けば充実したスケートライフではないだろうか。今回は僕が考える充実したスケートライフを過ごすためのエトセトラを紹介したいと思う。
 まず、発電機やライトを使って一晩中スケートができるスポットを選択する必要がある。スケートの騒音をかき消してくれる都会の喧噪、もしくは過疎化が進んだシャッター商店街(僕の地元は後者の方に当てはまる)。そして空が明るくなるのを忘れるぐらい集中して撮影できるスポット。これが一番難しい。個人的には夜に渋谷からスタートして原宿、新宿のラインが気に入っている。前に書いた第9回のコラムが、ストリートではさまざまなハプニングが起こるので細心の注意が必要。誰もいない場所でしっぽりスケートもいいが、人に見られながら黄色い声援を浴びスケートするのも悪くない。
 同年代の若者が多い街ではプッシュの音も心地良いサウンドトラックになるが、オフィス街ではそうとはいかない。残業続きで帰れないサラリーマンには、スケートの音はただの神経をいらだたせる騒音にしか聞こえないはずだ。だから終電も過ぎた丑三つ時にオフィス街へ向かうルーティーンを選択する。十分な撮影ができれば、朝方にすれ違うサラリーマンに心の中で「いってらっしゃい」と言い、何も撮影できなければ悔しさを胸に秘め「ご苦労さん」と言う。がっつりラーメンでも食べたい気持ちを抑えて、いつもの立ち食い蕎麦が空腹を満たしてくれるし、リーズナブルな価格が懐にも優しい。都会の中心から外に向かう電車は必ずと言っていいほど座れるが、これがブービートラップ。満腹は思考を停滞させ眠りに落ちてしまう。結局乗り過ごした駅から戻る電車は超満員。汗の匂いが染み付いたTシャツと汚れたウィールを怪訝そうに見つめるOL 。背負ったカメラバックに咳払いをされながら朝の洗礼を受ける。シャワーを浴びて撮影した映像をチェックしながら反省会。パートに何が足りないかメモに書いたトリックとスポットの項目を再確認。最後は布団に入りお気に入りのスケートビデオを見ながら眠りにつく。この時注意しなくてならないのが、朝のニュース番組の占いはチェックしないこと。だれも一番悪い運勢のまま、眠りにつきたくはないでしょうから。

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