少し前にこのコーナーで『スモーク』という映画を紹介しましたが、今回はそのスピンオフともいえる『ブルー・イン・ザ・フェイス』について。舞台となるのは前作同様、NYC・ブルックリンのタバコ屋。特に大した事件も起きなければ、感動的な場面もなし。ただただ、タバコ屋に集う地元民の会話が永遠と続くという内容。
ストーリーらしいストーリーもないにも関わらず、人種も宗教もルーツも違うバラバラの地元民たちが繰り広げる会話に惹きつけられてしまいます。登場するのは前作に引き続いてハーヴェイ・カイテルにはじまり、The Velvet Undergroundのルー・リード、映画監督のジム・ジャームッシュ、マドンナ、マイケル・J・フォックス、ミラ・ソルヴィーノなど超豪華。この面々がキャストというだけでも観る価値があるという作品です。
脚本を手掛けたのは『スモーク』と同じく作家のポール・オースター……といっても、ガッチリとした脚本ではなく各シーンについてのノート程度のものだったという噂。そのため、キャストは即興的に会話劇を続けるはめになり、“ブルー・イン・ザ・フェイス”、つまり“顔が真っ青になる”というタイトルになったということです。しかも撮影期間は5日というのだからビックリ。クオリティが高すぎます。
言葉で説明しても本作の魅力は伝わらないと思うので、とりあえず興味が湧いた人は是非観てください。近くにこんな街、こんなタバコ屋があればいいのに……観終わった後に心地いい余韻が残る。そんな優しい映画です。
–MK