キャデラックに積んだアタッシュケースにはドラッグがぎっしり。狂気あふれる男たちがハイウェイをかっ飛ばし目指すのはラスベガス。イカれたふたりのロードトリップの目的はバイクレースの取材なんですが、ドラッグ漬けで取材もままならない…。
フリージャーナリストのラウル・デュークとサモア人弁護士のドクター・ゴンゾーの無茶苦茶っぷりを描いた映画『ラスベガスをやっつけろ』。原作はハンター・S・トンプソンのノンフィクションがベースというのだから驚きです。これといったストーリーもとくになく、さまざまなドラッグでぶっ飛びまくってトラブルを起こす様子を描いたクレイジーな作品。テリー・ギリアム監督によるトリップの様子や主人公ふたりの演技、薬物で混濁した記憶を断片的に表現する演出が見どころ。
本作の舞台は1970年代初頭。ヒッピームーブメントの挫折やドラッグ、ベトナム戦争にカルトなどという当時のダークサイドをもとにした「アメリカンドリームの失墜」がこの映画のコンセプト。ですが個人的にはそんなこと関係なし。退廃的で刹那的なふたりの幻覚、勘ぐりや奇行、心理描写が最大のポイント。ひとりがイっちゃってるときはもう片方が比較的まとも…なんてバランスも絶妙で、人間としては完全に破綻しているふたりはとてもシリアスで滑稽。
日々の凝り固まった常識的な脳みそを柔らかくほぐすのにピッタリ。まぁよくこんな狂った映画が実現したなぁって作品なんですが、それでも定期的に観たくなってしまうのはさすが。
この映画で薬物中毒者のろくでもない疑似体験をしてみてはいかがですか。
–TM