ビデオ『Non-Fiction』は、スケートヒストリーを語る上で欠かすことのできない不朽の名作。ハフ、TG、ゴンズ、シャーフなど、レジェンドと呼ばれる猛者たちの存在感が大き過ぎるためか、ベン・リバーセッジという素晴しい伏兵についてはほとんど語られることがありません。
ベン・リバーセッジと聞くと、コーチジャケット、ハーフキャブ、チノパン(元アナウンサーじゃないぞ)、猫背を勝手に連想しちゃいます。地味だけどジワジワくる系スケーターのひとりです。そんな彼とは一度だけお会いしたことがあります。それは1996年の『Non-Fiction』発売から数年後にあたる1999年頃(そのときはInfamous所属だったはず)に、Vansマターで来日したとき。今となってはどんな会話をしたかは思い出せませんが、想像した通りもの静かなジェントルマンだったことを記憶しております。今回は、そんなベンさんにまつわるマニアックな話をひとつ。
現在はadidasのシューズデザイナーとしてご活躍されているスコット・ジョンストン(以下SJ)がかつて所属していたMad Circleというデッキブランドから『Let The Horns Blow』(’94年)というビデオが発売されているのですが、その中のSJパートにベンさんがワンクリップだけ登場します。SFの有名スポットであるHubba Hideoutにて、ハーフキャブ・ノーズスライド(グレーTにチノパン)を決めているのが、実はSJではなくてベン・リバーセッジなんです。その証拠に、エンダーでSJがノーリー・テールスライド(ネイビーTにデニム)をHubbaで決めているのですが、背景を比べると同じ日に撮影されたことがわかります。当時はHubbaで誰が何をメイクしたかって話にセンシティブな時代だったので、ハーフキャブ・ノーズスライドを決めたのが影武者(ベン・リバーセッジ)なんじゃないかと当時アメリカのスケートコミュニティでちょっとした話題になっていたのを覚えております。
ベンさんがいまどこで何をやっているかは不明ですが、よもやまさか海の向こうで変なアジア人が自分についての記事を書いているなんて、夢にも思ってないってことは確かです、メ〜ン!
─KE
『Non-Ficition』のベン・リバーセッジが地味かっこいい。幸薄めが伏兵のつとめ。
『Let The Horns Blow』のSJパート内の1:24のハーフキャブ・ノーズスライドに注目。