「変わらないということは、変わってゆくことよりも難しい」と、高倉 健さんがウィスキーだかなんだかのCMで、かなり前に語っていました。
そう考えるとスケートボードは、いい意味でもそうでない意味でも流行り廃りも多く、様々な流れの変化によって形をなしています。ファッションもスタイルも、メタモルフォーゼを繰り返しています。そういえば超がつくほどのB-Boyが、気が付くとアメカジになっていたり、「ラスタファーライ!」って叫んでいた人が、おもいっきり裏原系になっていたりと、変化が多いです。
そんな中で一貫してスタイルを変えない(変えられない?)強者スケーターがいます。その御方は、アルマーニを纏ってファストプラントをかます唯一無二の存在、ジェレミー・クラインさんです。
ファーストコンタクトは’90年代初頭にリリースされたWorld Industriesの『Rubbish Heap』というビデオ。パートのBGMが当時流行っていたファミコン(欧米でいうNintendo)!? 極東のスケボー少年だった当時の僕は、衝撃のあまり子機を学校に持って行ってしまった程です。そんなジェレミーさんは、大のアニメヲタクで、クールジャパンを誰よりも早く取り入れていた元祖A-Boy系のクールスケーターさんです。パートの随所に散りばめられたアニメのスキットや、自ら立ち上げたHook-Upsというブランドの世界観には、彼のアニメへの熱意と日本文化への真摯な想いが反映されています。
そんなジェレミーさんを、実は一度だけ見かけたことがあります。記憶が定かではないのですが、確か’90年代後半だったような気がします。カリフォルニアのコスタメサという場所に、Yaohan(現在はMitsuwa)という現地の日本人向けのスーパーマーケットがあります。スーパーの一角にKinokuniya(本屋)が併設されているのですが、そこでジェレミーさんを発見。ジェ、ジェレミー・クラインがYaohanで立ち読み!? OMG….。興味津々の僕は、ジェレミーさんに存在を悟られないように、FBIスタイルで観察すると、な、なんと、1週間以上遅れて入荷される(当時はね。いまはもっと早いだろうけど)“週刊少年ジャンプ”を立ち読みしているではありませんか!?!? OMFG….。
さすがにコンテンツまでは確認できませんでしたが、おそらくウィークリーでYaohanに通っているのではないかとその時確信したのです。ジェレミーさんは、読み終えたジャンプを棚へ慣れた手つきで戻すと、軽快な動きでパーキングへと赴き、ピピッっという音とともに(キーレスエントリーね)黒のLexusに乗り込みと、颯爽とメインロードへと消えていったのです。か、かっこ良すぎる…。
ファッションやスタイルや趣向は、時代の流れとともに変化し、柔軟にアジャストしていかなければならないことが求められる中で、ジェレミーさんは一度たりもブレることなく我が道を突っ走り、おそらく今後も変わることなく、己のスタイルを貫き通すことでしょう。か、かっこう良すぎるよ、アンタ…。
–KE