「Switch God(スイッチゴッド)」という言葉はスケートコミュニティ内で活動しているスケーターであれば頻繁に耳にするワードのひとつ。言うまでもなく「スイッチスタンスの神」という意味を持ち、日本だとスイッチマスターとかスイッチキングと言うのが一般的だけど、欧米では大抵スイッチゴッドで定着しています。
いまでこそ当たり前というかデフォルトとなっているスイッチスタンスですが、’90年代の残党スケーターの自分から言わせると、スイッチスタンスが流行り始めた’90年代前半にはぶっちゃけ厄介というか「面倒くせェ〜」と思っていました。ただでさえ技がありすぎて練習するのが大変なのに、さらに逆スタンスでやらなきゃならないって無理っしょ! なんて落ちこぼれスケーターの心配を尻目に、世間ではドンドン進化してスイッチスタンスが定着していくわけです。自分的にはなぜかあまりシックリこなかったというか、スイッチをやりたいというモチベーションも湧いてきませんでした。結局いまにいたるまで最小限のスイッチしかやらなかった(やれなかった)ので、あれこれ言う資格もないのだけど…。
とはいえ、’90年代からスケートボードの進化の過程を見続けた者として、今回はスイッチの産みの親が誰かってことだけは何の役にも立たないでしょうけど断言しておきたいと思います。’90年代前半に主にWorld Industries系列のブランドに所属していた若いテクニカルなスケーターらによってスイッチトリックが編み出されたのでありますが、意外にもスイッチという概念を完全にスケートコミュニティに定着させたパイオニアは、当時REALに所属してたサルマン・アガー。確か’93年にリリースされたREALのファーストビデオ『The REAL Video』で堂々のトリを飾ったのですが、そのラストパートにふんだんに取り込まれたスイッチ(&ノーリー)のオンパレードに、思わずVHSテープを何度も巻き戻してしまったというのは自分だけではないでしょう。ちなみにサルマンさんですが、その年のSOTYにも輝いております。
ということで、リアルスイッチゴッド(駄洒落じゃないぞ)のパートを観ていただいた上で、最新号のSLIDERのDickies特集をチェックしていただくといろいろ繋がってきます(2017年9月30日発売)。蛇足ではありますが、サルマン・アガーを見るたびに『地獄の黙示録』のカーツ大佐を思い出してしまいます。あのシーンが甦る…「恐怖だ、恐怖だ」(カーツ大佐)。
─KE