クリス・マーコビッチ、リッキー・オヨラ、ボビー・プーリオ、マイク・ヴァレリー、ヘンリー・サンチェスの共通点は? 唯一無二のスケートスタイルを形成した素晴しいスケーターであることはもちろん、その短気というか正直さゆえに実力以上に経済的に大成(?)しなかったオピニオンリーダー。もちろんスケーターとしての彼らの残した功績(レガシー)は計り知れないし、パーソナルな部分について外野がとやかく言うことでもないのですが。とはいえドキュメンタリー映像やインタビュー記事なんかをかい摘んでみると、少なくともリッキー・オヨラとヘンリー・サンチェスはプロスケーターとしてのキャリアをもっと上手くハンドリングして追求すべきだったと後悔の念を抱いております。度重なるスポンサーの移籍や自ら運営するブランドが短命だったり低空飛行なのも共通しているように思えます。誤解のないようにつけ加えておきますが、自分は先に挙げた5名の大ファン。好きゆえに「もっと富を築けたのでは…」と。少なくとも大手シューズブランドからレジェンド枠でサポートされたりしながら、ヘルシーにスケートしている姿をもっと拝みたかった(マイクVは滑りまくってはいるけど)。
英語圏で生活したことがない人、つまりこれを読んでいる多くの日本人スケーターからすると、ニュアンス的に先にあげた5名のスケートコミュニティ内での立ち位置がシックリきていないかと思います。複雑で長い話を鬼短縮して一言でまとめると、滑りはエゲつなくかっこいいけど協調性が特にないスケーター(そもそも協調性がないからスケーターなんだけど)。とはいえ、仕事としてペイが発生する以上、パートナーや周りと上手く付き合っていくことも求められます。そんな彼らですが、信者と言っても大袈裟ではない熱狂的なファンがいる一方で、スケートコミュニティ内(ビジネスサイド)で少々煙たがられている類いに入ると言ってもさしつかえないでしょう。意思表示をしっかりするというのは欧米人の基本ではありますが、ビジネスだなんだって絡んでくるとパブリックイメージが大切になってきます。会社やブランドを運営している側からするとマイナスイメージというか、敵は作りたくないというのが本音。毒舌や主体性が強すぎたりすることから生まれる誤解や衝突を繰り返しているうちに、扱い難いというレッテルを業界内で貼られ、やがてスポンサーやらなんやらのビジネスチャンスを失ってしまうというのもひとつの事実のようです(どの業界でも同じだろうけど)。とはいえ業界や常識に迎合することなく、スケーターとしての生き様(個人のアイデンティティ)をブレることなく体現するスケーター(問題児?)に惹かれるのも確かです。まあ、この手の話は答えがないというか長くなりそうなのでまたの機会に。
今回は5名の中から、テクニカルなトリックを数多く編み出した’90年代を代表するハイテクスケーター、ヘンリー・塚本ではなくヘンリー・サンチェスの動画をいくつかセレクトしてあるのでご覧ください。そういえばかなり前のことですが、中野のクリこと栗林 悟がSFのPier 7にて、ヘンリーのライン撮りに被ってあやうく鉄拳を喰らうところだったとか。信じるか信じないかはアナタ次第です。
─KE
Pack of Lies
Credo
Sight Unseen