アンダーレイテッド、つまり過小評価されスケート史から忘れられつつあるスケーターがどの時代にもいます。そのひとりが’90年代初頭に活動したアリ・ミルズ。
実はこの人は世界で初めてノーリーフリップを実践したストリートスケーターと言われています。’80年代にフリップトリックのほとんどをロドニー・ミューレンが編み出したとされているため、世界で初めてこのトリックをメイクしたのはミューレンかもしれません。ただ本人の記憶が曖昧というのと、アリが初めてこのトリックをメイクした記憶がはっきりとしているため、記録として彼が世界初とされています。
アリが初めてノーリーフリップをメイクしたのは’80年代終わり、メリーランド南部で開催されたコンテストでのこと。当時はNew Dealに所属しており、チームメイトのクリス・ホールと会場の隅でフラットトリックをしていたところ、ノーリーからフリップトリックをやってみることになったとか。そこでアリはフリップ、クリスはヒールをトライ。当時はノーリーからのフリップトリックなんて前代未聞。そんな時代に、遊びの中で同じ日に、このふたりによってノーリーフリップとノーリーヒールが誕生したと言われています。
そして、ノーリーフリップを初めて動画で記録したのが’90年リリースのNew Deal『Useless Wooden Toy』。地面でバウンスしながらデッキが見事回転しております。ちなみに翌年リリースされた『Quiet Storm』という作品でも同トリックを進化させてバンクで披露。『Useless Wooden Toy』のアリ・ミルズのパートは、世界初のノーリーフリップだけでなく、ノブ付きのレールでのボードスライド、フラットでのフロントフリップやFs 360ポップショービットなど、おそらく当時のNBDと思われるトリックも連発。
誰がどのトリックを世界で初めてメイクしたか。これにはトリックがめまぐるしく進化した’80年代終わりから’90年代初頭にかけて、各地でさまざまな試みが行われていたため諸説あるということを最後に付け加えさせていただきます。なにはともあれ、アリ・ミルズを知らない、この人のパートを観たことがないというスケーターは今すぐチェックしてください。
–MK
New Deal『Useless Wooden Toy』のアリ・ミルズ。ノーリーフリップ、ノブ付きレール、フロントフロップ、フロント360シャヴなどNBDが満載。
世界で初めて記録されたと言われるノーリーフリップ。
世界で2番目にノーリーフリップを披露したのもアリ・ミルズ。