WE ARE BLOOD

 TWS『Feedback』や『Modus Operandi』、Lakai『Fully Flared』やGirl / Chocolate『Pretty Sweet』を手がけたことで知られる映像作家、タイ・エヴァンスが指揮を執る映画『We Are Blood』。なんとすべてスーパー高解像度の4K(4000×2000px前後の画面解像度)で撮影されたというスケートの歴史において前代未聞の作品です。
 ストーリーはスケートボードが発祥したグラウンドゼロ、LAを出発してラスベガス、バルセロナ、NY、中国、ブラジル、ドバイなど、さまざまな街や国を巡るという内容。P・ロッドが案内役を務め、それぞれの土地のスケートスポットで撮影された極上のフッテージとともに、スケートボードの本質やスケーターのメンタリティを伝えるというものです。スケーターはなぜ旅をするのか、なぜ何度も繰り返しトリックに挑み続けるのか。スケートボードが形成するコミュニティとその特別な帰属感。スケートボードのあらゆる要素が本作には詰まっています。
 この作品の魅力は、ただ単に本作のメインスポンサーであるMountain Dewに関係のあるスケーターだけでなく、アンソニー・パッパラードのようなスケーターも起用しているところです。コンテストで優勝を重ねて大企業をスポンサーに持ち、スケートで巨額の富を得たP・ロッド。そして、対照的にスポンサーをすべて切られながらも情熱だけで活動を続けるパッパラード。本作に出演するスケーターの幅の広さに、タイ・エヴァンスのディレクションが見え隠れしています。ちなみに、40歳の誕生日を2週間後に控えながらもハンドレールに突っ込むジェイミー・トーマスの姿も収録されています。
 本作を観ると、スケートを“メインストリーム”や“アンダーグラウンド”、またはスケートビデオを“HD”や“VX”などと区別したりカテゴライズしたりすることがナンセンスに思えてしまいます。4Kを駆使するタイ・エヴァンスがいて、VXを多用するGX1000がいて、VHSにこだわるPalaceがいる。コンテストで賞金を稼ぐP・ロッドがいて、スポットシークを生きがいとするパッパラードがいて、年齢の壁を押し広げるジェイミー・トーマスがいる。そこにあるのはスタイルの違いだけであり、スケートボードの持つ本質は何も変わらないはずです。表面的なスケートのジャンルや映像の手法の形に固執したり翻弄されるのではなく、もう少し深い部分に目を向けたくたる。『We Are Blood』はそんな作品です。

–MK

 


『We Are Blood』のトレーラーをチェック。本作はiTunesで購入可能。

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