Interview by VHSMAG Photo by Joji Shimamoto(courtesy of DC Japan) Special thanks: DC Japan
VHSMAG(以下V): まずは来日した理由から。
エヴァン・スミス (以下E):DCからリリースされたオレのシグネチャーモデルのプロモーションツアーで来日している。この後はオーストラリアに行く予定。ショップを回ってサイン会やデモをしたり、ストリートスケートをしたりして東京ライフを満喫している感じだね。2日目にトレードショーで行ったデモも素晴らしかった。スケートとパーティ三昧。最高のツアーだよ。
V: シグネチャーモデルのリリースでかなり忙しいでしょう?
E: そうだね。でもプロモーションのためなら何だってやるよ。ツアーを重ねてシューズのマーケティングもして、できるだけ売りたいからね。
V: 初めてシグネチャーモデルの話を聞いたときはどんな感じだったの?
E: 夢のようだったよ。ガキの頃はスケートでシグネチャーモデルをリリースするなんて想像すらできなかったからね。自分のシューズが実際に形になったのは自分の人生だけでなく、家族や彼女にとっても本当に特別な出来事だった。しかも、それがDCからのリリース。素晴らしいね。
V: シグネチャーモデルを形にするまでのプロセスは?
E: まずはミーティングを行って好きなシューズの写真をみんなで確認し合った。そしていろいろ話し合った結果、スケートができるPF Flyerみたいなシューズのローカットとハイカットを作ることになった。クラシックとモダンのスタイルを融合させた感じだね。’70年代にタイムスリップしたようなシューズに最新テクノロジーを搭載させるのがオレのアイデアだった。
V: 当初はシグネチャーシューズにレザーやスエードを使いたくなかったってどこかで読んだけど?
E: そうなんだ。まず誤解のないように説明すると、DCのSuper Suedeは悪い企業から動物の革を購入しているわけではなく、食肉として処理された牛の革を使っているから命をむやみに無駄にしているわけでもない。食肉処理された牛の革を使用して耐久性のあるスエード素材を開発しているんだ。ただ、オレは自分個人の倫理的観念として、これに完全に納得しているわけではない。どうにかして動物の命を奪うことなく良質なスエード素材を開発することができないか……とよく考えている。
結局ラバー製品やシューズを作るとそれなりに環境を傷つけてしまうものなんだ。でも、徐々に小さなことを変えていくだけで、少しでも環境に優しいシューズ製造を行うことができると思う。これからリリースする新しいシューズは、どうにかしてそういった点を改善できるようにしたいから、今はSuper Suedeに代わるヴィーガンレザー(※環境に配慮したPUレザー)を探しているところ。最終的に今回のシューズにはSuper Suedeを使用することになったんだけど、ラバーとキャンバスを組み合わせて使用するスエードの量を最低限に抑えることにした。ただ、さっきも言ったようにSuper Suedeは素晴らしいテクノロジー。Super Suedeがダメだって言っているんじゃない。耐久性に優れているしスケートに適した最高の素材だと思う。でもそれ以外に同じくらい素晴らしい素材があるというのなら、それに越したことはないと思うね。
V: なるほど。そういう経緯も経て無事にシューズが形になってCMも公開されたよね。あれはエヴァンがディレクションをしたんでしょ?
E: その通り。Elementのチームマネージャーと一緒にCMのアイデアを考えたんだ。何か変わったことをしたかったんだよ。これまでにDCが行ってきたユニークな表現方法を復活させたかったんだ。例えば『The DC Video』に収録されたロブ・デューデック、ビッグ・ブラックとAVEの寸劇みたいなもの。その後のDCはずっとシリアスな路線が続いていたからね。
CMに出演したウェス(・クレマー)、CJとT・ファンクはみんな楽しいことが好きだし、性格も明るい。たしかにストリートの撮影ではシリアスになるけど、基本的にいつも笑っている。だからユーモアを大切にしたかったんだ。いいアイデアを思いついて、撮影・照明クルーと一緒にウェスのローカルショップであるPacific Driveで形にできたのは最高だった。
V: CMの最後にT・ファンクが「あのシューズは独自の魂(※ソウル=ソール)を持っている」とImpact-Iのソールの素晴らしさをダジャレで示唆しているけど、従来のソールとの違いは?
E: Impact-IはDCの革新的なテクノロジーが詰まったソールだよ。従来のソールはVansのワッフルソールのように格子のようなパターンを配していることが多いけど、Impact-Iには円錐形の穴が空いているんだ。この穴が空いていることによって着地するときの衝撃を散らすことができるというわけ。バルカナイズソールのまったく新しい試みだね。
DC SHOES: The Evan Smith Signature Shoe with IMPACT-I Technology
V: なるほど。シグネチャーモデルのCMの後にはThrasherでもオンラインパートを公開したよね?
E: あれはクリス・レイとDCのチームマネージャー、そしてElementのチームメイトと一緒にフッテージを撮影したもの。ここ2年の間に出たツアーで撮影したフッテージをまとめたんだよ。
V: あのようなパートを作るときに心がけることは?
E: なるべく同じトリックを使わないようにしているね。だからトリックとロケーションがあまり被らないようにフッテージを振り分けるようにしている。あのパートはここ2年間のツアーで撮影したと言ったけど、DCのツアーだけでなく、Elementのツアーもあったし、仲間だけで個人的な撮影ツアーに出かけたこともあった。エンディングのクレジットを見ればわかるけど、何人ものフィルマーの名前がリストアップされている。みんなツアー先で出会った最高の仲間たちだよ。
Thrasher: Evan Smith’s “Time Trap” Part
V: これまでにCMのディレクションをしたり自分のパートのBGMを手がけたり。かなりクリエイティブだよね。これはライブハウスで育ったことが関係しているのかな?
E: 間違いないね。フロリダ州オーランドを離れてペンシルバニア州ピッツバーグに移ったのが15歳の頃だった。それ以降、クレイジーなアーティストたちに囲まれて育ったんだ。ペインター、ミュージシャン、ビジュアルアーティスト、メンタルアーティスト、パフォーマンスアーティストなど。自宅のライブハウスでさまざまなことを日常的に見ていた。詩の朗読会、コメディショー、舞台劇や結婚式なんかも行われていた。このようにいろんな経験をすることでクリエイティビティを養うことができたんだと思う。そして、それをDCをはじめとするスポンサーに役立てることができてうれしく思っている。どれも最高のカンパニーだからね。素晴らしいチャンスを与えてくれるし……。デザインでもマーケティングでも、オレのアイデアが彼らの役に立てば最高だね。
V: まだそのライブハウスに住んでいるの?
E: もちろん。
V: ピッツバーグを離れない理由は? スケートでカリフォルニアに行く必要があるときも多いでしょう?
E: 今は東と西海岸を行き来する生活をしているね。オーストラリア出身の彼女が最近女優の仕事でビザを取得して映画の出演も決まったから、彼女だけLAに引っ越すことになったんだ。だから今まで以上に東と西を行き来する機会が増えそうだよ。気候のいいLAで彼女と過ごす時間が増えるのは楽しみだね。スケートインダストリーの中心にも近いし。
V: では最後に今後予定しているプロジェクトは?
E: 変わらずいろんなアイテムをリリースしていく予定だよ。新しいシューズやそのCMのアイデアも考えないとね。今年はパートのリリースが続く予定。VXのみの映像を集めたパートが出る予定だし、Elementのフルレングスビデオもリリースされる。仲間と敢行したアメリカ大陸横断ツアーのビデオを作って、そのときに撮影した写真をまとめてElementと一緒に写真集も制作する予定。いろんなアイデアを考えながら進んでいく感じだよ。
フロリダ州オーランド出身、ペンシルバニア州ピッツバーグ在住。クリエイティブかつテクニカルなトリックからハンマーまで何でも対応できるオールラウンダー。DCやElementの看板ライダーとして精力的に活動中。
www.dcshoes.jp/